病害虫・雑草コラム

散布適期の幅広さと水稲への高い安全性を 兼ね備える「ピリフタリド」。

水稲

2002年に農薬登録されて以来、水稲用除草剤アピロシリーズの主成分の一つとしておなじみの有効成分ピリフタリド。

今回なぜ新たに直播水稲専用の初期剤として採用されたのか。
弊社アグリビジネス営業本部 技術顧問の森島靖雄と、研究開発本部 除草剤マネジャーの池田慎介が解説します。
 

【目次】

ノビエ3葉期まで使用可能な初・中期一発除草剤として開発

土壌吸着と水への溶解性をバランス良く併せ持つ

「湛水直播用」初期除草剤市場でさらなる貢献を目指す、アピロファースト1キロ粒剤

リゾケアXLのパートナーとして湛水直播水稲をもっと身近に、もっと確実に

 

ノビエ3葉期まで使用可能な初・中期一発除草剤として開発


 有効成分ピリフタリドは、ノビエをはじめとするイネ科雑草に対し、発生前から3葉期までの高い除草効果と、移植水稲への優れた安全性を持つ化合物として選抜されました。主に雑草の根部から吸収され、植物固有の酵素であるALS(アセト乳酸合成酵素)を阻害することでタンパク合成を妨げ、雑草を枯死させる特徴を持ちます。ALSは植物しか持たない酵素のため人畜・環境への毒性が低く、これらの総合的な評価を受け1996年から水稲除草剤としての本格的な開発が始まりました。

 ピリフタリドはノビエに遅効的に作用します。発芽には影響しないためノビエは正常に出芽しますが、出芽後に主に根部からピリフタリドが吸収され、ALS活性阻害を開始します。吸収後もノビエは一時的に生長を続けるため、雑草の芽生えに対する即効的な作用は目に見えませんが、ノビエが出芽したそばから確実に枯らしていくのがピリフタリドの特徴です。

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 開発当時、市場では水稲除草剤はノビエ2葉期から2.5葉期までが主流で、3葉期に処理できる剤には新しさがありました。一方で弊社には初期剤として、自社原体のプレチラクロールを含有したソルネット1キロ粒剤エリジャン乳剤がありましたが、当時は自社開発した初・中期一発除草剤として使用できるような商品はありませんでした。こうした背景もあり、ノビエ3葉期までの混合剤としてピリフタリドなどを主成分とする製品を開発し、2002年12月に初・中期一発除草剤(アピロシリーズ混合剤)として農薬登録されました。

 

 

土壌吸着と水への溶解性をバランス良く併せ持つ


 ピリフタリドは水への溶解度が小さく、かつ土壌粒子や有機物に対する高い土壌吸着性を併せ持ち、そのバランスが良いという特性があります。この特性によって、水稲除草剤として土性・土質、気温、水田の減水深などの外的要因の変動を受けにくい安定した除草効果と、残効性を発揮できます。

 ピリフタリドは、ノビエの根圏が集中する土壌表面に安定した薬剤処理層を形成。それによって水変動の影響を受けにくく、有効成分が流亡しにくくなります。そして土壌粒子や有機物に吸着した有効成分が適度に水に溶け出し、ノビエの根部から吸収されて除草効果をもたらします。

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【アグリビジネス営業本部技術顧問 森島靖雄】

 このときピリフタリドの分子が土壌粒子や有機物に吸着されたままでは、雑草の根部から吸収されにくく、十分な除草効果は得られません。一方で水への溶解性が強すぎると、有効成分が水田外に流れてしまうため、土壌吸着と水溶解性のバランスが重要になるのです。

 さらにピリフタリドは、吸着と脱着を繰り返す特性もあります。水が抜けた後に再び水を入れると、土壌に吸着されていた有効成分が溶け出して根部から吸収され、除草効果を発揮するのです。

 土壌吸着と水溶解性のバランスの良さ、そして吸着・脱着を繰り返すことでピリフタリドは安定した効果を発揮できると考えられています。

有効成分ピリフタリドが水変動に強い理由

 

「湛水直播用」初期除草剤市場でさらなる貢献を目指す、アピロファースト1キロ粒剤


 シンジェンタジャパンでは、直播水稲をより確実に効率的に行える水稲湛水直播向けソリューション「リゾケアXL」(以下、リゾケアXL)を開発・上市し、普及拡大に取り組んでいます。そして、リゾケアXLをはじめとした湛水直播栽培に適した新規除草剤としてアピロファースト1キロ粒剤(以下、アピロファースト)を開発、2022年12月に登録されました。湛水直播の初期剤という新たなコンセプトでデザインされた薬剤です。

 ピリフタリドは、直播水稲に対する安全性とノビエ活性の高さからアピロファーストに採用されました。
一方で、ノビエ以外の雑草をカバーすることも重要でした。いくつかの成分を検討した結果、幅広い殺草スペクトラムを有し、特にイヌホタルイ、コナギ、アゼナ類といった水田の主要雑草(SU抵抗性雑草含む)に優れた除草効果があるベンゾビシクロンの有効性に着目し、原体メーカーの(株)エス・ディー・エス バイオテック様との共同で混合剤の開発に着手しました。

 開発にあたり、最優先したのが水稲への安全性の確保です。直播水稲は雑草と稲の競合が激しく、稲の播種から出芽までの間に雑草が先に発生・生育することから、移植水稲以上に初期の雑草管理が重要になります。そこでめざしたのが、水稲への高い安全性を最重要とし初期の主要雑草にフォーカスした除草剤の開発でした。播種同時および播種直後から薬害を出さず、かつノビエ1.5葉期までをカバーし、その後は稲1葉期以降に適用のある多くの除草剤との体系使用により、より効果的な雑草管理を実現できるコンセプトです。稲の苗立ちに高い安全性を確保すると同時に、初・中期一発除草剤散布時期までの残効性が期待できるように、ピリフタリドの薬量を決定しています。

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【研究開発本部 除草剤マネジャーの池田慎介】

 

リゾケアXLのパートナーとして湛水直播水稲をもっと身近に、もっと確実に


 アピロファーストは、湛水直播水稲をもっと身近に、もっと確実にしたいという思いで開発されました。これまでは移植水稲の除草剤として活躍してきたピリフタリド。その良さを直播水稲という新しいステージで最大限生かしました。播種同時で使える利便性や稲への安全性などを兼ね備えています。リゾケアXLの初期除草の要となる薬剤と確信していますので、今後もさらに広がっていくことを願っています。

 

アピロファースト1キロ粒剤製品写真

 

 

シンジェンタジャパン(株)アグリビジネス営業本部 技術顧問の森島靖雄(左)と、研究開発本部 除草剤マネジャーの 池田慎介(右)

 

 

 

 

 

 

 

シンジェンタジャパン株式会社

アグリビジネス営業本部 技術顧問の森島靖雄(左)、研究開発本部 除草剤マネジャーの池田慎介(右)

 

 

 

関連製品:

アピロファースト1キロ粒剤

ソルネット1キロ粒剤

エリジャン乳剤

リゾケアXL(リゾケアHPに遷移します)

 

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