気候変動により世代交代が3回から4回に。 環境と抵抗性に配慮したキンモンホソガ対策
地球温暖化により、2022年頃から問題が顕著になり始めたキンモンホソガ。平均気温の上昇とともに発生が早期化し、従来は3回だった世代交代も4回になっていると考えられています。岩手県においても、りんごづくりの新たな防除体系を試行錯誤されています。その具体的な取組みと今後のビジョンについて伺いました。
【目次】
殺卵効果と抵抗性対策、天敵への影響が少ないミネクトエクストラSCを採用
天敵や環境に配慮し、岩手県の持続可能な農業に貢献していきたい
温暖化により発生時期が早期化し、春秋のキンモンホソガが急増
かつては1枚の葉に4〜5つほどのマイン(食害痕)が見られるなど、りんご栽培において問題害虫とされていたキンモンホソガ。ネオニコチノイド系薬剤が普及してからは目立たなくなってきたものの、近年、再び猛威を振るおうとしています。その背景を、岩手県農業研究センターの病理昆虫研究室で専門研究員として働く吉田さんはこのように話します。
「キンモンホソガはりんごの葉を食害するため、光合成を抑制し品質の低下を招きます。かつては実被害よりも圃場の見た目を気にされる生産者さんも多かったのですが、2022年から発生が急増し、被害も目立つようになってきました。この原因は、温暖化によって発生が早期化したこと。それに伴って防除適期にズレが生じたと考えています」。
岩手県病害虫防除所が発行する「令和6年度植物防疫事業年報」のデータ(下図)を見ても、2021(令和3)年まで穏やかに推移していたキンモンホソガの発生園地率が2022(令和4)年から急増。翌年には第2・第3世代のマイン数が26を超える中発生以上の園地も見られるように。さらに、キンモンホソガの増え方にも特徴があるといいます。
「従来は6月に第1世代が発生して、7月に第2世代、8月に発生した第3世代が9月まで残っていたのですが、2022年以降は9月から新たに第4世代が現れている可能性が指摘されています。この秋の第4世代が多発生して越冬個体が増えることが、翌春の発生数に大きく影響しています」。
殺卵効果と抵抗性対策、天敵への影響が少ないミネクトエクストラSCを採用
こうした現状を受け、岩手県農業研究センターでは岩手県病害虫防除所と連携して第1世代の発生予察を徹底。従来よりも防除適期が早まっていることを生産現場に呼びかけているといいます。
「生産者はキンモンホソガだけを対象に防除しているわけではありませんので、6月上中旬の防除を励行できる方もいればそうでない方もいます。また、6月上旬に防除を行ったことでその後の防除スケジュールに狂いが生じてしまうことも課題の一つです」と表情を曇らせる吉田さん。しかし、これまで6月下旬に指定していた防除を6月上中旬に変更しているJAも多く、これまでの防除暦どおりでは遅いという認識が浸透しつつあることを感じているとのこと。
そんな新たな生態へと変化したキンモンホソガ対策に採用したのが『ミネクトエクストラSC』です。
「生産現場ではしっかり6月上旬に防除する方が増えてきました。一方で、第2世代成虫が発生する7月の半ばあたりの害虫防除には有機リン系薬剤が広く用いられています。有機リン系はキンモンホソガへの効果はそれほど高くないので、そこで防除しきれなかった影響が夏、秋の個体数を増やし、多発生につながっていると推察しています」。
夏場を前に個体数を増やしてしまうことが課題だったというキンモンホソガ防除。防除暦へのミネクトエクストラSC採用の背景をこのように語ります。
「殺卵効果もありますので、第2世代の防除には非常に適した薬剤と考えています。岩手県の評価もキンモンホソガに対しては二重丸と、その効果を高く評価されています。有機リン系薬剤が少なくなった状況で、2025年からミネクスエクストラSCを採用させていただきました」。
天敵や環境に配慮し、岩手県の持続可能な農業に貢献していきたい
さらに、抵抗性の面でもメリットがあるとご評価くださいました。
「岩手県でもハダニの天敵であるカブリダニに配慮した防除体系を選択される生産者が増えており、どうしてもジアミド系薬剤が年間の防除を通じて複数回散布される状況になっています。このため、ジアミド系の単用ですと抵抗性管理の面で課題を感じていますが、ミネクトエクストラSC はIGR系有効成分も加えた2成分剤なので抵抗性が発達しにくくなることが期待できます。天敵にも影響が少なく、さらには殺卵効果もある。そういったところがメリットかと思います」。
ミネクトエクストラSCの普及に向けては、コスト面も追い風になるのではとのこと。「コストについても計算しましたが、かなり普及しやすい価格なのではと考えています」と吉田さん。最後に病理昆虫研究室専門研究員としてのこれからのビジョンを、次のように話してくれました。
「近年の気候変動によって病害虫の発生状態は変わってきています。今後は発生予測や効率的な防除方法の開発など、生産者にとってより使いやすい防除技術の研究を進め、収量や品質のさらなる向上に貢献していきたいと考えています。また、天敵や環境に配慮した持続可能な農業という長期的な目標においても、引き続き力を入れていきたいと思います」。
※写真提供:岩手県農業研究センター
※掲載内容は取材当時のものです。
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