アスパラガス圃場に深刻な被害をもたらす茎枯病。対策には収穫打ち切り前のユニフォーム粒剤散布が有効
北海道のアスパラガス栽培で深刻な被害をもたらしている茎枯病。一度感染した圃場では翌年も翌々年も感染が広がり、圃場が全滅することもある病害です。茎枯病がどんな病害なのか、北海道でのアスパラガス栽培の状況と併せ、その防除について、「アスパラガスの安定生産」を主な研究テーマとし、栽培技術はもちろん病理研究や育種も手がける酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 農場生態学研究室の園田高広教授にうかがいました。
【目次】
一度感染した圃場は翌年にも感染が広がり、圃場全滅の原因にもなる
収穫打ち切り1週間前と次の芽が動き出すタイミングでのユニフォーム粒剤散布が効果を発揮
露地が90%を占める北海道のアスパラガス栽培
北海道のアスパラガス栽培は、90%が露地で行われています。一方、九州では施設栽培が100%。また東北では30~40%が施設栽培で、残りが露地栽培です。
九州では昭和50年代に栽培が始まり、当初は露地栽培でしたが、数年で茎枯病によって全滅してしまい、雨よけ栽培などの施設栽培に切り換えたという歴史があります。
北海道では、アスパラガスは土地利用型作物の位置付けです。アスパラガスの収穫期は5月上旬から6月下旬で、他の作物の収穫がない時期の収入源となっています。収穫後は、養成期として株を圃場に残し、茎葉から光合成産物が転流し、根に蓄積されていきます。冬には休眠した株の上に雪が積もり、雪解け後枯れて潰れた茎を圃場外へ処分し、春採りが始まるのが一般的な作型です。
冷涼な気候の北海道はアスパラガス栽培に適していましたが、近年は気候が変化し、夏の気温が高く、雨の多い年が増えました。夏に例年の倍以上の降水量を記録する年もあります。それによって病害が発生しやすくなり、栽培が難しくなっています。
アスパラガスの主要病害
アスパラガスの主要病害には、茎枯病のほか、斑点病、褐斑病、疫病などがあります。
斑点病は茎葉病害といわれ、葉が枯れてしまう病害です。寒冷地で見られ、北海道では露地栽培で多く発生します。褐斑病はどちらかというと高温多湿で発生するため、北海道では施設栽培、東北では露地栽培でもよく見られます。疫病は土壌病害で、地際から数10㎝の高さまでの比較的低い位置に病斑を形成します。若茎に発生すると、穂首が曲がり萎凋症状を引き起こします。
雨の跳ね上がりで土壌の菌が葉に付着し感染する茎枯病
露地栽培に深刻な被害をもたらしているのが、茎枯病です。茎葉病害の1つで、雨の跳ね上がりで土壌の菌が若茎の先端に付着し、感染していきます。感染すると茎に淡褐色の病斑ができ、菌が内部にも侵入して導管を伝わって地下茎に感染し、茎を含めて株全体が枯死する病害です。生長した堅い茎には感染し難く、主に萌芽したばかりの若茎に感染していきます。
アスパラガスは収穫後、茎を立て(立茎)ますが、この間に雨が降り、跳ね上がった雨粒に菌が混じっていると感染してしまいます。ただ、すぐに茎枯病と判断できるような病斑は作られません。徐々に病斑が発生し、判断できる頃には、菌はもう茎の内部に入ってしまっているのです。
また、アスパラガスは頂芽優勢という特性が強く、立茎が完了するまでは次の茎はほとんど伸びません。生育が収まると次の茎が発生しますが、その時期に雨が降ると再び跳ね上がりによって茎枯病に感染してしまいます。立茎の時期に雨が多いと大発生するなど、夏の雨の降り方によっても茎枯病の発生状況は異なります。
一度感染した圃場は翌年にも感染が広がり、圃場全滅の原因にもなる
北海道では6月下旬から7月上旬ぐらいに立茎が始まり、7月下旬から8月上旬で立茎が完了します。この立茎のときと、立茎が終わってから次の若茎が動き始める時期が最も茎枯病の菌に感染しやすくなります。しかし、この時期はちょうど収穫作業を終え圃場に行かない時期でもあるため、防除が後回しになってしまうことが多いのです。
また、茎枯病の菌は冬に枯れた残渣の病斑上で越冬し、翌年の感染源となりどんどん増えていきます。翌年に持ち越さないためには、11月末頃までに茎を刈って残渣を場外で処分することが効果的ですが、北海道では11月に雪が降ってしまい、秋の作業が予定通りに進まないこともあります。さらに近年は秋の気温が下がらず、なかなか茎が枯れないということも見られ、生産者は残渣の処分までは手が回らないのが実情です。
雨よけ栽培やハウスなどの施設栽培に移行することで防げる病害ですが、北海道では雪対策も考慮した施設を建設しなければなりません。栽培面積も広いため、コスト面の負担が大きく、全てを施設栽培に移行することは現実的ではありません。
こうした北海道特有の事情に加え、露地栽培では株を畑に残したまま越冬させます。そのため一度感染した圃場では翌年以降も感染が広がっていき、数年で圃場全体が全滅してしまうこともあります。茎枯病による被害で作物を切り換えてしまう生産者もおり、アスパラガスの栽培面積は減少傾向にあるのが現状です。
収穫打ち切り1週間前と次の芽が動き出すタイミングでのユニフォーム粒剤散布が効果を発揮
茎枯病を防ぐには薬剤防除を適切に行うことが重要で、効果が期待できるのがユニフォーム粒剤です。理想は収穫打ち切り(6月下旬~7月上旬頃)の1週間前にユニフォーム粒剤を散布し、可能であれば次の芽が動き出す7月末~8月上中旬頃に2回目のユニフォーム粒剤を散布することをおすすめします。
立茎後の圃場は茎が倒伏している圃場が多く中に入ることが困難なこともあり、徹底的な防除は難しいかもしれません。その場合は最低でも立茎の1週間前にユニフォーム粒剤を散布してほしいと思います。茎枯病は、病気が発生する前に適切な薬剤を予防的に散布しなければ防ぐことができないほど、やっかいな病害なのです。
酪農学園大学 園田高広(そのだ たかひろ)教授
福島県出身。「アスパラガスの安定生産」を主な研究テーマとし、栽培技術・病理研究のほか育種も手がけ、これまでに6種が品種登録されている。
福島県の農業試験場や福島県庁の職員を経て、2011年から酪農学園大学に赴任。
現在は農食環境学群 循環農学類 農場生態学研究室で教授を務める。
※掲載内容は取材当時のものです。
※記事に登場する人物の、製品に関するコメントは個人の感想です。
北海道のアスパラガス栽培でのユニフォーム粒剤の上手な使い方(春採り作型・露地栽培の場合)
※本剤の使用回数は3回までです。本剤の連用はさけ、作用性の異なる他の薬剤と組み合わせて輪番で使用してください。
※病害の発生状況や栽培方法は地域ごとに異なります。実際の栽培や農薬使用については、地域の指導機関などにご相談ください。
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