農業は複雑で、予測の難しい事業です
農業は決して容易ではありません。気候の変化、規制への対応、経済的な圧力、労働力の課題、環境への配慮、技術の進化などが重なり、現代の農業をより難しいものにしています。
土壌侵食、生物多様性の損失、資源管理、消費者の嗜好の変化、深刻な気象現象も重要な課題です。さらに、病害虫や病気も収穫を脅かします。
現代農業には多様な解決策がありますが、すべての農地は地形、土壌、期待できる収量が異なるため、成果が常に保証されるわけではありません。
生産者が直面する主な農業課題
気候変動、土壌侵食、生物多様性の損失への対応
気候の変化は、作物の生育適性、収量、農作業、労働環境、食料安全保障に大きな影響を及ぼします。風や水による土壌侵食は、森林伐採、過度な耕起、過剰な開発によっても生じます。土壌の肥沃度を低下させ、生産性に影響し、水源を汚染するおそれもある世界的な課題です。
また、土地利用の変化、汚染、気候変動による生物多様性の損失は、農業を支える自然環境に影響を及ぼします。
異常気象への備え
先を見据える生産者には、現代の農業で収益性を維持するため、投入資材を成果へと転換する効率、すなわち生産性を高めることが求められます。
高い成果を上げる農業経営には、間接コストを抑えること、市場を理解すること、変化とイノベーションに取り組む姿勢といった共通点があります。
新しい技術の導入と習得
効率性、生産性、持続可能性を高めるため、生産者は新しい農業技術を導入し、学びながら活用しています。精密農業、土壌管理のためのデジタルツール、リモートセンシング、ロボットによるマッピング、持続可能性に関わる技術などが、その例です。
世界的な経済的圧力への対応
紛争、インフレ圧力、規制の変化、生活費の上昇など、世界的な不確実性の中で、生産者は経済的な課題への対応力を高める必要があります。こうした出来事は農業資材のコストや食料価格に影響し、強靭な農業セクターの重要性を改めて示しています。
生産コストの上昇下で収益性を維持する
経済的な圧力が高まる中で、農業の収益性を維持することは容易ではありません。生産コストの上昇により、コスト管理と効率を重視した取組が、これまで以上に重要になっています。
農村で暮らし、次世代の生産者となる若者を増やす
若者は農業の未来を担う存在です。しかし、多くの若者が農村部での生活ではなく、都市部での生活を選んでいます。孤立への不安、地域での交流機会、就農時の資金面の障壁、天候に左右される長時間の身体的労働、農業への理解不足、研修や相談相手へのアクセスの限られた状況など、さまざまな要因が関わっています。
気候変動が現代農業に及ぼす影響
気候変動は、世界の食料を生産する生産者の力に、さまざまな形で影響を及ぼします。変動の大きい気象や、洪水・干ばつなどの極端な現象が増えることで、作期の変化や作物生産性の低下といった農業上の課題が生じます。
予測しにくい天候は、水の利用可能性を制限し、雑草、害虫、菌類の発生を助長する場合があります。また、食料供給網を混乱させ、食料安全保障にも影響を及ぼします。
同時に、土壌侵食は農業に利用できる土地を減少させ、生物多様性の損失は作物の受粉に影響します。生産者は、水の保全と農業投入資材の削減にも取り組む必要があります。
こうした変化に適応するなかで、生産者には、気候スマートな実践を取り入れ、農業由来の温室効果ガス排出を抑える、より持続可能な戦略が求められています。
消費者ニーズと期待がフードバリューチェーンを変える
生産者は、より多く、より高品質な食料への需要に応える必要があります。近年は、「十分な食料」を生産することから、「より良い食料」を生産することへと、関心が広がっています。これは、より健康的で持続可能な食品を求める消費者ニーズによって後押しされています。
今日の社会では、生産者には環境への影響を抑え、作物の栄養価を高め、作物や環境に残る化学物質をさらに低減することが期待されています。
新しい技術への適応
スマート灌漑システムやリモートセンシングなどの現代技術は、農業の課題への対応を支えています。一方で、資金力のある大規模農家ほど、これらの技術を採用しやすい傾向があります。農業技術への投資を望む小規模生産者にとっては、利用機会、費用、研修が課題となります。デジタル格差によって、小規模生産者が農業のデジタル経済における新しい取組を実行しにくい場合もあります。
AIの影響は、すでに農業に現れています。利用できる環境があれば、AIはデータに基づく有用な知見、作物管理の改善、資源の最適な活用、市場情報へのアクセスを通じて、小規模生産者を支援する可能性があります。
病害虫・病気による圧力
国連食糧農業機関(FAO)は、世界の作物生産の20~40%が毎年病害虫によって失われていると推計しています。また、植物の病気による世界経済への損失は、年間約2,200億米ドルに上るとされています。
予防的な取組により、病害虫・病気による影響を大きく抑えることができます。一方で、合成農薬や除草剤の過度な使用は、抵抗性を持つ病害虫や病気の発生につながるおそれがあります。
現代農業の課題にどう応えるか
再生農業(Regenerative Agriculture)
再生農業は、持続可能なイノベーションと従来の知恵を融合する農業です。その名のとおり、土壌と地球の生態系の再生に焦点を当てています。
再生農業は、土壌を改善し、生産性を高め、長期的には質の高い食料の生産につながります。また、気候変動への対応と、失われた生物多様性の回復を支えます。不耕起・省耕起、間作、バイオロジカル製品や化学的資材の精密な投入など、さまざまな方法があります。
バイオロジカル(Biologicals)
バイオロジカルは、自然の力を活用して作物を保護し、健全な生育を促す革新的な農業技術です。生産者の選択肢を広げ、食料生産を支えるとともに、環境ストレスが増すなかで作物を守り、そのレジリエンスを高めます。
バイオロジカルの作物保護製品は、自然由来の成分、またはその副産物から作られます。シンジェンタは、変化する病害虫・病気の脅威への対応、非生物的ストレスへの対処、土壌の健全性と養分利用効率の向上を生産者とともに進めています。
土壌の健全性(Soil Health)
土壌は、微生物、植物、その他の生物が、炭素、窒素、水とともに複雑に関わり合う、絶えず変化する生態系です。
土壌は環境の持続可能性に不可欠であり、大気と水の質、生物多様性、植物の健全性に関わります。また、土壌は炭素隔離に重要な役割を果たすため、農業における気候変動への対応にも寄与します。
精密農業(Precision Agriculture)
精密農業は、技術を活用して圃場内のばらつきを把握し、作物を管理する農業アプローチです。GPS、センサー、データ分析などを利用し、水、肥料、農薬などの投入資材を最適化することで、効率的で持続可能な資源利用を実現します。
精密農業は、収量を高め、無駄を減らし、環境への影響を抑えます。より生産性が高く、環境に配慮した農業の実践につながります。
生産者への支援
小規模生産者が病害虫、病気、異常気象から作物を守れるよう支援することは、農業の生産性、収益性、持続可能性を高めることにつながります。