除草の省力化や、抵抗性雑草対策に。 いま、プリグロックスLが注目を浴びています。

病害虫・雑草コラム
薬液がかかった所だけ枯らす「接触型」の非選択性除草剤です。朝まけば、その日にわかる即日除草!プリグロックスL

 春先や秋冬期といった低温時の高い除草効果や、翌年の雑草密度を低減する省力技術「種子発芽後枯殺効果」など独自の特性を持つプリグロックスL。 
抵抗性雑草が増加するいま、プリグロックスLを活用した上手な雑草管理について弊社技術普及センター長の杉山 稔がご紹介します。 

パラコート成分の誕生は60年以上前に 


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 プリグロックスLの歴史を紐解く前に、まず非選択性除草剤NSH:Non Selective Herbicide)の分類についてお話しします。非選択性除草剤(以下、NSH)は、植物であれば種類を選ばずに何でも枯らしてしまう除草剤のこと。成分によってパラコート系、グリホサート系、グルホシネート系の3系統があり、作用特性によって接触型(パラコート系・グルホシネート系)と浸透移行型(グリホサート系)の2タイプに大別できます。 

 世界で初めて開発・発売されたNSHは、1962年にイギリスで上市されたプリグロックスLの前身であるパラコート系の「グラモキソン」でした。このパラコート成分は、シンジェンタの前身の英国ICI社の研究所で、酸化還元指示薬の開発過程で生まれた失敗作が、除草剤として生まれ変わった偶然の産物だったそうです。 日本では、1964年に上市され広く普及しましたが、誤飲・誤使用の事例が問題になったことから、催吐剤やジクワットという成分を加えるなど製剤改良を行い、1986年に「プリグロックスL」という商品名で販売を開始。2024年には、上市38年目のロングセラー製品として現在に至ります。

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【プリグロックスLのあゆみ】

低温でも効く「光で枯らす」作用機構


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【パラコート系のプリグロックスLは低温時でも効果を発揮する】

 現在、農業の現場では、グリホサート系が圧倒的なシェアを占めているのにもかかわらず、パラコート系のプリグロックスLがいまだに一定のシェアを維持し続けているのには理由があります。 それは、本製品が持つ特性である「光で枯らす」というユニークな特長が、農業現場の皆さまの支持をいただいていることにほかなりません。 

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【植物の光合成系を利用したプリグロックスLの作用機作】

 植物の光合成系を利用し、イオンの力によって雑草を枯死させる作用機構を持つことから、光と酸素さえあれば低温時でも短期間で雑草を枯らすことができるので、秋冬期や春先といった気温が低い環境でも除草効果を発揮することができます。また、植物体への吸収が速いため、散布15分後の降雨でも安定した除草効果を保持します。これらの特長はグリホサート系・グルホシネート系にはない特長といえます。 

具体的なお役立ち例をご紹介しましょう。例えば、春先の気温が低い時期でも雑草が短期間で枯れるので、田んぼの耕起や畑の播種、定植などの作業にすぐに移ることができます。また、果樹園などでは春先に下草を素早く枯らすことで、地温上昇を促進し、果樹の根の動きを活発にして肥料養分の吸収効率を上げる効果があるなど、気温に影響されにくい除草効果は様々な営農場面で効率化をもたらします。

 

種子に付着し作用して 翌年の雑草密度を低減 


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 プリグロックスLには前項でご紹介したほか、グリホサート系・グルホシネート系にはないもう一つの特長があります。「種子発芽後枯殺効果」と呼ばれるもので、近年その作用が明らかになり、現在、農業現場での周知を進めているところです。これは、イネ科雑草の種子を発芽後枯殺する作用。秋冬期散布することで、出穂している種子や土壌に落下した種子に付着して初期生育を阻害し、水稲で翌年のノビエ発生密度が、麦類でメヒシバやスズメノカタビラ発生が低減します。 近年は生産者の規模拡大に伴い、ハイクリブームの普及がすすんでおり、大規模面積での散布も実用的になりつつあります。 

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【メヒシバ】
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【ノビエ(イヌビエ)】

50倍で効果的なスギナ対策を 


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【スギナ】

パラコート系のプリグロックスLは、3系統あるNSHの中でもスギナ対策における経済性に優れた除草剤といえます。グリホサート系では、25倍の希釈倍数で散布する必要があり、枯れるまでの期間も長くかかりますが、プリグロックスLは50倍でスピーディに枯らすことができ、しかも散布コストもグリホサート系の半分以下程度で済むので、スギナ除草には最適なのです。 

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 強害雑草スギナは、「なかなか枯れない」「枯れてもすぐ再生した」という声をよく耳にします。スギナは、地上部の生育が揃うまでは、地下の根や塊茎から地上部に養分を送り続けるため、地上部の生育が未熟な4月ごろに散布してもすぐに再生してしまいます。こうした理由から、スギナは地上部の生育が出揃った5月中旬に除草剤で一網打尽にするのが上手に枯らすポイントといえます。 

 

※地域によって異なります 

 

異なる系統のNSHで抵抗性雑草を抑制 


 根まで枯らすことができるグリホサート系が連用されてきたことで、近年は、グリホサート系が効かない抵抗性雑草のオオアレチノギク、ネズミムギ、オヒシバといった雑草が問題化してきました。パラコート系のプリグロックスLなら、こうした抵抗性雑草にも高い除草効果を発揮します。 

 同じ系統の除草剤ばかり連用していると、雑草の抵抗性比率が高まり最終的には抵抗性だけが残ってしまいます。抵抗性雑草対策として有効なのは、年間で異なる系統の除草剤を組み合わせて使用すること。夏場は雑草を根まで枯らして長く抑草するグリホサート系、春と秋は低温でも効果を発揮するパラコート系のプリグロックスLを使用するなどの体系処理がおすすめです(下記の写真⓵参照)

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【プリグロックスL・タッチダウンiQを5年間体系処理した区画(写真⓵)では、雑草の発生が抑えられている】

 NSH製品はパラコート系(1962年上市)、グリホサート系(1980年上市)、グルホシネート系(1988年上市)の3系統しかありません。今後もグリホサート系などを使い続けていくためにも、同系統の連用は避け、パラコート系やグルホシネート系を組み込んだ体系処理を心がけるようにしましょう。 

薬液がかかった所だけ枯らす「接触型」の非選択性除草剤です。朝まけば、その日にわかる即日除草!
【体系処理は果樹園の下草処理にも効果的】

秋冬期散布のひと手間で、翌年の雑草密度を低減 


 9月を過ぎたころになると除草剤を使わなくなる農業現場が多いかと思いますが、11月ごろに低温でも効くプリグロックスLで秋冬期除草をするというひと手間をかけておくと、翌春の雑草密度が減って雑草管理がラクになります。これは作物や散布場所全般にいえることで、散布労力やコストの低減をもたらし、グリホサート系NSHの抵抗性雑草対策としても有効です。 

薬液がかかった所だけ枯らす「接触型」の非選択性除草剤です。朝まけば、その日にわかる即日除草!プリグロックスL
【プリグロックスを秋に散布した区画では翌春の雑草密度が低減】

 除草は機械刈りで実施されていて、秋冬期に時間を持て余してしまう農業生産法人の現場を見かけることがありますが、農閑期の秋冬期にプリグロックスLの秋冬期除草を組み込んでいただければ、結果的に翌春の除草作業が省力できるので、おすすめです。 

 

プリグロックスL散布時はノズルに注意 


 浸透移行型のグリホサート系用の「少量散布ノズル」をつけたまま、プリグロックスLを散布する場面をよく見かけますが、少量が泡状に吐出されるので雑草への付着液にすき間ができ、かかった所しか枯れない接触型のプリグロックスLの効果が十分に発揮できません。 

プリグロックスLは、大きなサイズのミストが均等に吐出する「多量散布ノズル」を使用して噴霧するようにしましょう。 

薬液がかかった所だけ枯らす「接触型」の非選択性除草剤です。朝まけば、その日にわかる即日除草!プリグロックスL
【プリグロックスLでは多量散布ノズルを使用し、雑草全体にしっかり均等に薬液を付着させることが重要】

 

下記をクリックすると、ノズルの効果的な使い方について詳しく説明した動画をご確認いただけます。

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効果的な散布ノズルの使い方 -プリグロックスLとタッチダウンiQでの使い分け-

 

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