夜温の高さと薬剤への感受性低下が大きな課題に。 新しい防除技術や、害虫との共生に活路を見出す
ハウスみかんにおける近年の課題は夜温の高さ。昼間との寒暖差が生まれにくいことから着色が進まないと言います。それに加え、昔から生産者を悩ませているのがミカンキイロアザミウマとハダニ。薬剤に対する感受性低下という問題に直面し、愛知県蒲郡市では新たな防除技術を模索しています。
目次
夜温の高さに対応するため、着色しやすいハウスみかんの新品種を開発
難防除害虫アザミウマ類対策として、JAが期待を寄せるアグリメック
害虫と上手に共生する時代に
夜温の高さに対応するため、着色しやすいハウスみかんの新品種を開発
ハウスみかんは人工的な加温が必要であることから、昨今の重油価格の高騰が死活問題に。生産者の高齢化もあり各産地が軒並みハウスを畳む中、蒲郡市は現在も指折りの産地として全国に知られています。
そうした社会的背景に追い打ちをかけているのが夜温の高さです。特にハウス内は昼間との寒暖差が生まれにくいため、みかんの着色が進まないのだとか。その課題を払拭するため、愛知県農業総合試験場の常緑果樹研究室とJA蒲郡市の共同研究により新品種開発に着手。その経緯を同研究室主任研究員の江崎さんに伺いました。
「お中元やお盆における消費者の需要に応えるためにも、夏場にはしっかりと着色したみかんを出荷しなければなりません。そこで、2005年から2007年にかけてJA蒲郡市管内の露地みかん園やハウスみかん園を調査した結果、従来の主力品種である宮川早生と形状が異なる10種の系統を見つけ出すことができました。このうち、宮川早生に比べて10日ほど着色が早く、着色性に優れ、収量・品質も遜色のない『C系統』を選抜。蒲郡市内のハウスで栽培試験を重ね、2024年7月に品種登録出願を行いました」。
難防除害虫アザミウマ類対策として、JAが期待を寄せるアグリメック
新品種の開発に加え、CO2発生装置やミスト発生装置などを用いた環境制御にも取り組む常緑果樹研究室。しかし、いまだ対策が難しい“ハウスみかんの大敵”がいるとのこと。それが、ミカンキイロアザミウマやハダニといった害虫です。
「この2種類の害虫は、昔からハウスみかんの難防除害虫として全国の生産者を悩ませています。近年これらの害虫は、従来の薬剤に対する感受性低下が問題に。ハダニに関してはその影響で効果が高い薬剤が少ないことから、スワルスキーカブリダニによる天敵製剤の導入が進んでおり、蒲郡市では7〜8割のハウスが取り入れています。一方、ミカンキイロアザミウマは果実が着色しはじめる5〜7月に発生しやすく、この時期は薬害が出やすいため使用できる剤が限られています。とはいえ、夏場は加害痕からみかんが腐敗してしまうため、なんとか防除しなければなりません」と江崎さん。
また、ハウス、露地ともに問題となるアザミウマ類に関してはヒラズハナアザミウマ、ネギアザミウマなどの発生が確認されているものの、依然として5割以上を占めているのはミカンキイロアザミウマ。ハウスみかんでは、多発生が懸念される5〜7月にかけて7~10日に一度、合計10回程度の薬剤散布を奨励していましたが、これまで主力剤として活用していた殺虫剤への感受性低下が問題になっていたのだそうです。
そんな中、難防除害虫アザミウマ類の防除対策の一環として、2024年にJA蒲郡市管内5haの露地圃場でアグリメックのドローン散布試験を実施していただきました。
「アグリメックの浸達性の高さと、アザミウマ類、ミカンサビダニなど対象害虫への適合性、さらにはドローンへの登録が評価されたようです。アグリメックはアザミウマ類やミカンサビダニなど幅広い害虫の同時防除が可能であり、優れた浸達性・残効性も期待できますので、みかんの栽培に適しているのではないでしょうか。また、コスト面でも安心して使える薬剤かと思いますので、次第にこのような薬剤に置き換わっていくような気がしています。そのほかにもシンジェンタの薬剤で言えば、リーズン顆粒水和剤はみかんの害虫に対する適用範囲が広いこともあり、すでにハウス、露地で活用されています。さらに、ミネクトエクストラSCについてはゴマダラカミキリ成虫にも登録があることから、幅広く使われていく可能性があると考えています」。
害虫と上手に共生する時代に
「かつては『害虫は一匹も取りこぼすな』という考えが浸透していましたが、夏場に密植のハウス内で防除衣を着て行う防除作業は心身ともに負荷が大き過ぎます。その負担を減らすためにも天敵製剤などを使いながら、害虫を完全に抑えるのではなく、発生や被害をコントロールする時代になっているのではないでしょうか。つまり、いかに害虫と上手に共生するかがカギになると思います」と害虫防除における考え方の変化にも言及する江崎さん。
蒲郡市には若い生産者が多く、優良ハウスの環境データ解析など産地のさらなる活性化に向けて、より積極的に取り組んでいるとのこと。
最後に「夜温の問題や薬剤に対する感受性低下など課題は刻々と変化していますが、ともに笑顔で収穫期を迎えられるよう全力で取り組んでいきましょう!」と全国のハウスみかん産地へエールを送ってくださいました。
※掲載内容は取材当日のものです