地域連携と先端技術が育む高品質な小麦。 産地の誇りにかけて徹底した防除を推進。
北はオホーツク海に面し、世界自然遺産に登録された「知床」を東南に望む斜里町。日照時間は全国平均より長く、良質な作物が実る地として知られています。今回は、生産者、普及センター、JAが一丸となって取り組む小麦の栽培と防除について、農業歴30年の北村さんとJAしれとこ斜里の田村課長にお話を伺いました。
良質な小麦を安定して栽培するための取組みについてご紹介ください。
田村課長:
JAしれとこ斜里管内では品質の向上、収量の安定化に向けて、生産者、普及センター、農協が連携し、様々な取り組みを実施しています。
まずは、秋播き小麦を播種する前に開催する「播種前講習会」。前年の生産量や管理状況、近年の気象状況などを総合的に判断し、播種方法や播種後の管理について生産者の方々と話し合う場を設けています。
また、春の雪解け後には「青空教室」を開催し、実際に畑の小麦を見ながら追肥量や防除方法などについて認識を共有しています。
さらには、人工衛星の画像を適期収穫に役立てる「衛星リモートセンシング」を導入。最後の刈り取り時期を見誤ることがないよう圃場ごとに生育マップを作成し、最適な時期に収穫できるよう活用しています。こうした小麦づくりに関わる人の密なコミュニケーションと最先端技術の活用により、当JA管内における令和3年度の栽培面積は秋播き小麦が2430ha、春播き小麦が355haとなっています。
【収穫期を迎えた小麦】
小麦の栽培においては、どのような病害虫が問題になっていますか。
北村さん:
赤さび病による被害はそれほど深刻ではないのですが、葉が枯れてしまう葉枯症状には例年悩まされています。この葉枯症状はニバーレ菌という赤かび病菌の一種が引き起こすため、赤かび病をしっかり防除することが大切になります。
赤かび病は湿度の高い環境を好みますので、6〜7月に長雨が続いた令和2年度は被害の目立つ年でした。いちばん困るのは止葉が枯れてしまうことで、止葉期にニバーレ菌が蔓延してしまうと実の充実度が落ちて収量を落としてしまうばかりか、規格外品にもなりかねません。
この防除を徹底するため、地域の生産者の多くは6月前半の開花始めから6月末にかけてニバーレ菌にも効果のある赤かび病を対象とした殺菌剤を散布し、止葉の防除も徹底していました。
しかし、雨の多い年はなかなか抑えるのが難しいというのが実情です。
【黄金色に美しく実った小麦。品質はもちろん見た目の美しさにもこだわり、仕上げ防除を徹底している】
赤かび病防除を徹底するため、新規系統剤のミラビスフロアブルをご使用いただいたそうですね。
北村さん:
赤かび病対策の新しい薬剤が出たということで、JAからの勧めもあり、私が経営する13haの小麦圃場すべてにミラビスフロアブルの1500倍液をブームスプレイヤーで散布しました。雨の多い年は赤かび病が多発しやすく、新規系統の殺菌剤によってさらに防除を徹底することが目的です。
田村課長:
これまで6月前半と6月末の殺菌剤は同系統でしたので、異なる系統のミラビスフロアブルをその間に使用することで、より防除を徹底することができます。また、耐雨性も強いようですので、赤かび病の発生が懸念される雨の多い年での効果にも期待しています。さらに、ミラビスフロアブルは美穂効果もあるということで、生産者からの注目度も高いですね。
北村さん:
生産者としては、やはりきれいな麦を育てたいですからね。私の圃場でも麦をきれいに仕上げるため、父親の代からチルト乳剤が欠かせません。これからもこれらの殺菌剤を上手に活用しながら、高品質で見た目も素晴らしい小麦づくりに励んでいきたいですね。
【ミラビスフロアブルとチルト乳剤 秋播き小麦の防除スケジュール】
北村さんは、小麦づくりの一方で、にんじん部会の副部会長を務められているそうですね。
北村さん:
この地域はにんじんの産地でもあり、晩抽天翔、天翔五寸などの品種が全国に出荷されています。また、斜里のにんじんで作った「にんじんジュース」は2010年に『知床しゃりブランド』に認定され、オンラインショップでも人気商品となっています。お試しいただけたら幸いです!
管内生産者 北村公さん(左)・JAしれとこ斜里 経済部資材課 田村仁課長(右)
※掲載内容は取材当時のものです。