小麦の出芽不良、減収を招く難防除害虫「ヤギシロトビムシ」の被害と防除対策

産地訪問

土中において出芽前の小麦の幼芽、幼根を食害するヤギシロトビムシ。その食害により、出芽不良や生育抑制を引き起こし、最終的には減収を招く重要害虫です。JA筑前あさくら夜須支店経済の行武大樹さんと、管内で小麦13ha・大麦8haを作付する生産者井上喜隆さんにその防除対策について伺いました。

【左より、JA筑前あさくらの行武大樹さん、井上喜隆さん、弊社福岡支店 村山 博】

左より、JA筑前あさくらの行武大樹さん、井上喜隆さん、弊社福岡支店 村山 博

まずJA管内での麦の作付け状況について教えてください。


行武さん:
JA筑前あさくら全体の麦作付は約3,500haで、この夜須地区では350名の生産者によって約1,000haの麦(小麦600ha、大麦400ha)が作付されています。カントリーエレベーターの貯蔵容量の関係で、小麦と大麦の比率は6:4と決められているのですが、近年は小麦よりもヤギシロトビムシの被害を受けにくい大麦の作付を増やす方が増え、その比率が変化しつつあり、JAとしても苦慮しているところです。

ヤギシロトビムシ対策として、どのようなことを指導されていますか。


行武さん:
ヤギシロトビムシは、夏は地中の深いところで休眠していますが、気温が低くなると地表近くに移動してくるため、小麦播種時期の11月は被害を受けやすくなります。そこで2019年から管内では、薬剤による防除対策とともに耕種的な対策として「播種深度の見直し」を実施しました。当管内では播種深度8cm以上で播種する人もいて深まき傾向にあり、被害を受けやすかったので、「3cm程度の深さで播種してください」と指導しています。

実際の小麦圃場では、どのような被害がありましたか。


井上さん:
うちの圃場では20年ぐらい前からヤギシロトビムシが発生していて、近年は結構被害が多かったですね。うちの小麦は水稲の後作なので、稲わらを圃場にすき込んでいるんですが、稲わらや堆肥が投入されている圃場は多発する傾向にあるそうです。

過去、食害の被害がひどい年には、20aの圃場の3分の1が出芽せず、大きく減収したこともありました。

【井上喜隆さん】

井上喜隆さん

井上さんは麦作共励会で受賞経験をもつなど、管内でも影響力のある方とお聞きしました。


行武さん:
以前、井上さんは麦作共励会で2度ほど県知事賞を受賞されており、管内で指折りの単収をあげていらっしゃいます。今年は小麦で10aあたり600kgほど収穫されました。

井上さん:
以前は播種前に処理するヤギシロトビムシ対策の殺虫剤を3種類混用していたんですが、それでも被害は抑えられず、近年は減収傾向にありました。なんとかならないものかと本当に困っていたんです。

去年はじめてクルーザーFS30を試されたそうですが、いかがでしたか。


井上さん:
小麦の全圃場13ha分の種子に、ミキサーを使って塗沫処理したんですが、効果はもうバッチリでした。出芽率もグッとアップしましたね。感覚では95%ぐらい出芽したんじゃないでしょうか。
私の小麦播種量はいつも10aあたり5.7kgだったのですが、こんなに出芽率が上がるなら、もっと薄まきでもいいかもしれませんね(笑)。

JA管内でのクルーザーFS30の評価はいかがでしょうか。


行武さん:
以前から使用されているヤギシロトビムシ対策剤は、どの剤も大まかな防除率でいうと50%ぐらいしか効いていないイメージ。でもクルーザーFS30は、100%に近い防除率という感覚ですね。

井上さんもおっしゃったように、クルーザーFS30を使用すれば、通常より薄まきにしても出芽率が良好な分、通常と変わらない単収が得られると思います。今年から、夜須地区の注文書にも採用しており、JAとしても自信をもって推進できる薬剤ですね。

【行武大樹さん】

行武大樹さん

今後のビジョンをお聞かせください。


行武さん:
クルーザーFS30を活用すれば、ヤギシロトビムシの被害は防げるので、小麦面積を増やす方が多くなって管内の小麦・大麦の比率が正常化することを期待しています。

井上さん:
冬に息子がドローンオペレーターの資格を取りに行くことになっているので、来年からドローンを導入して、麦と水稲の防除に活用しようと考えています。今後も作業の省力化を重ね、規模拡大を図っていきたいですね。

※JA筑前あさくら 行武大樹さんのインタビュー動画はこちら

関連製品

クルーザーFS30