年間80品目以上を育苗!良質な苗を栽培し続けるフルオーダー制の育苗センター
神戸市にあるJA兵庫六甲 神戸西営農総合センターは温暖な気候の下、水稲や野菜など年間を通した生産が盛んな地域です。その中でも重要な役割を担うのが同JAの育苗センター。20名のスタッフが年間80品目以上の苗を育苗しています。品質の良い苗を作り続けるための工夫とこだわりを取材しました。
年間を通じて、どのような苗を育苗されているのでしょうか。
4〜6月の水稲の苗から始まり、7月〜9月はキャベツ、ブロッコリー、はくさい、レタスなどの育苗がピークを迎え、秋以降は花き、たまねぎ、みずな、トマトなど1年間止まることなく苗を作り続けています。
品目は水稲以外に野菜が50品目以上、花きは30品目以上あり、品種も含めると数百になります。品目の多さでは日本でも1、2を争う育苗センターなのではないでしょうか。
【出荷前に外気に触れ、馴化させているキャベツの苗】
品目が多い理由を教えてください。
生産者が種を持ち込み、苗を育苗するフルオーダー制を取っているためです。育苗中も生産者からの「こんな苗にしてほしい」という要望を聞きながら栽培しています。カタログなどにある苗を生産者から受注し栽培する育苗センターが多いなか、開設以来この形で運営しています。
1978年の開設当初は水稲の育苗のみでしたが、1980年代以降、花きや野菜の苗も請け負うようになってから依頼が増加しました。最近では直売所に出荷する生産者が増え、品目や品種が多くなる傾向がより高まっています。
育苗センターを大規模改修されたそうですが、どのように変化したのでしょうか。
7〜8月に秋冬キャベツやはくさい、ブロッコリーの育苗が最盛期を迎えますが、依頼が多く、対応しきれなくなっていました。そこで全10棟のうち築20年超えの6棟を取り壊し、4棟を新設し、運搬用レーンでつなぐムービングベンチシステムを導入。これによってセルトレイ1万5000枚分だった管理可能枚数が2万2000枚まで拡大できました。
このシステムはベンチ(ベット状の栽培スペース)を、敷地内に格子状に組まれたレール上に乗せて自由に移動させることができるものです。作業場の区分けや栽培ステージに合わせての移動、品目別のグルーピングなどが容易となり、効率化と省力化が実現できました。苗は、専用温室で発芽させ、発芽後は管理がしやすいように、光を当てる、光は控えめ、水を切る、水は切らさないといったように栽培方法が同じ品目や品種をグルーピングして栽培しています。
【新しく導入されたムービングベンチシステム】
また管内は露地野菜が多いので、ある程度生育させた後、露地に出して外気に触れさせます。温室で育てた苗を露地で定植してもストレスがかからないように外に出して馴化させるのです。夏なら出荷の5日〜1週間前、冬は日中に出す程度ですが、そうすることでより健康な苗を作ることができます。
【改装されたハウスは高軒高を導入し、天井が高くなった】
2021年からミネクトデュオ粒剤を防除暦に採用いただいたそうですね。
ミネクトデュオ粒剤は葉菜類の適用害虫が幅広いため、当センターのように葉菜類で多品目栽培をするには大変使いやすく、効果が期待できる剤です。ハイマダラノメイガ、コナガ、アオムシ、アブラムシ類、アザミウマ類など多くの害虫に悩まされてきましたが、ミネクトデュオ粒剤でこれらの害虫は抑えられる安心感があります。
特に、キャベツやブロッコリーの苗を食害するハイマダラノメイガは重要害虫で、芯に入り込み、定植後の食害に気づいたときは手遅れということも少なくなかったのですが、ミネクトデュオ粒剤によってその被害がなくなり助かっています。また、残効の長さも魅力です。
これまでは育苗期後半や定植時に生産者が灌注処理剤を使用していましたが、は種・覆土後に当センターがあらかじめミネクトデュオ粒剤を処理することで、定植時の防除の必要がなくなり、生産者の皆さんは防除作業を省力化することができました。
【育苗中のキャベツの苗】
質の高い苗を提供することで、その後の栽培管理が楽になるようにお手伝いをすることが私たちの役目。ミネクトデュオ粒剤は生産者の負担を減らすことにつながり、二重に助かる薬剤といえます。
【JA兵庫六甲 育苗センターの秋冬キャベツの防除スケジュール】
JA兵庫六甲 神戸西営農総合センター 米・育苗チームチーフの二田公則さん(左)・営農相談員(育苗担当)の石井宏典さん(右)
※掲載内容は取材当時のものです。