タバココナジラミを「入れない、出さない、増やさない」日本一のトマト産地を守るため、地域一丸となって取り組むトマト黄化葉巻病対策。

産地訪問
タバココナジラミを「入れない、出さない、増やさない」日本一のトマト産地を守るため、地域一丸となって取り組むトマト黄化葉巻病対策。

トマト出荷量日本一を誇るJAやつしろ。温暖で日照時間の長い気象条件に、ミネラル豊富な土壌と、一級河川、球磨川の豊かな水が濃厚な味わいのトマトを育んできました。特徴は長期栽培の作型。8月中旬にハウスに定植後、10月から翌年6月まで収穫が続きます。

そんなトマト栽培の中で最重要課題が、タバココナジラミが媒介するトマト黄化葉巻病対策です。地域をあげて取り組むトマト黄化葉巻病対策をJAやつしろ営農部中央総合営農センター営農指導係の上田誠さんに伺いました。

耐病性品種が約9割。耕種的防除でトマト黄化葉巻病の発生を抑え込む


2018年にもタバココナジラミ防除のお話を聞かせていただきました。前回からどのような変化がありましたか?

上田さん:
「トマト黄化葉巻病対策が最重要課題であることには引き続き変わりません。管内では耐病性品種の導入が進み、現在は全体の9割に届くくらいになりました。トマト黄化葉巻病のウイルスを媒介するタバココナジラミを『入れない、出さない、増やさない』を目指し、耕種的防除に取り組んでいます。」

【JAやつしろ営農部中央総合営農センター営農指導係の上田誠さん】

JAやつしろ営農部中央総合営農センター営農指導係上田誠さん

 

「八代のトマト栽培は8月中旬から定植し、台風などの強風対策で10月までハウスの天井を外しています。この時期はいわば露地栽培状態。タバココナジラミの飛び込みが多くなり、ハウス内にトマト黄化葉巻病が広がる原因となっています。

それを防ぐため、被覆したままでも強風に耐えうる耐候性ハウスを導入する生産者も、増えています。また被覆後も日常的にも開口部や妻面の入り口に防虫ネットを張り、『入れない』工夫をしています。」

耐候性ハウスによって飛び込みは減少するものの、高温多湿になる真夏のハウス内でタバココナジラミの密度が上がってしまうという新たな課題も出ているそうです。

【一棟の長さが100メートルにもなる八代のハウス】

一棟の長さが100メートルにもなる八代のハウス

タバココナジラミの数にも、ウイルスの保有率の高さにも悩まされる


近年のタバココナジラミ・トマト黄化葉巻病の発生状況はいかがでしょうか?

上田さん:
「実は2021年度は例年にないほどトマト黄化葉巻病が大発生してしまいました。収量が落ち込み、生産者の収入も平均して15%から20%の減収という状況でした。要因には飛び込んできたタバココナジラミの数が多く、しかもウイルスの保毒率が高かったことが上げられます。

毎年、熊本県が野外の黄色粘着トラップで捕殺されたコナジラミが持つウイルスの保毒調査をしていますが、2020年度が4%だったのに対し、2021年度は8%と2倍でした。ウイルスを保有しているタバココナジラミの密度がハウス内で高くなり、トマト黄化葉巻病が蔓延してしまったのです。」

【トマトの茎を斜めに誘引し、樹高を低くして栽培するのが特徴】

トマトの茎を斜めに誘引し、樹高を低くして栽培するのが特徴

ハウス内でタバココナジラミを封殺し野外に「出さない」、地域ぐるみで野外でも「増やさない」を徹底


トマト黄化葉巻病の大発生を受けて、どのような対応をとられたのでしょうか?

上田さん:
「2021年度産の終わりにはハウス内で増殖したタバココナジラミを、ハウス外に『出さない』ことに組合全体で力を入れました。毎年、栽培後のトマトを後片づけする前に内部を高温にし、害虫を封殺する蒸し込み処理を行いますが、2021年度産の終わりは例年以上にその作業を念入りに行いました。

またタバココナジラミが野外で増加しないように、6月から8月にかけて地域を挙げて集団で除草作業を行いました。ハウスや圃場の周りはもちろん、熊本県を含む関係機関にも協力いただき、河川敷や線路沿いなどの地域全体の除草にも取り組みました。こうした地域ぐるみの防除により、2022年度は野外での捕殺数は前年の半分に抑えられ、トマト黄化葉巻病の発生も減少しています。」

タバココナジラミの寿命は平均約30日~40日。子孫にウイルスは引き継がせないよう、ハウス内で封殺させ、野外に飛散させないことは、次年度産への伝染を断ち切るためにも不可欠な作業です。加えてウイルスの感染植物源となりうる雑草を除草するなどの取り組みも重要な作業と言えそうです。

【真冬のハウス内でも収穫が続く】

トマト黄化葉巻病対策

ミネクトデュオ粒剤で苗に耐性を付け、タバココナジラミの感染を抑える


その他にタバココナジラミを「増やさない」ために、注力している取組があれば教えてください。

上田さん:
「播種から定植前にかけての初期防除を重視しています。具体的には、多くの生産者がミネクトデュオ粒剤(以下、ミネクトデュオ)を使い防除を行っています。使用のタイミングは生産者によって異なりますが、育苗期後半から定植前に使う人が多いようです。

ミネクトデュオは散布後に灌水してもポットからこぼれ落ちることもなく、根が成分を十分に吸い上げ、トマトの植物体に耐性を付けてから定植することができます。それによって感染が抑えられ、ハウス内のタバココナジラミの密度が下がります。しかも定植後も効果が持続できる優れた剤です。作業面でも散粒器で散布できるのは良いですね。」

管内の生産者の栽培面積は平均80a。10a当たりに定植する苗は約2000株になり、定植時に植える苗は約1万6000株にも上ります。それだけの数の苗でもミネクトデュオなら散粒器で効率良く散布できるので、作業時間が短縮できると評価していただきました。

【タバココナジラミを増やさないために、こまめな葉かきで不要な下葉を取りのぞき、ハウス内の風通しも良くする】

タバココナジラミを増やさないために、こまめな葉かきで不要な下葉を取りのぞき、ハウス内の風通しも良くする

タバココナジラミの密度低下に欠かせないアグリメック、ローテションの要のアファーム乳剤


生育期のタバココナジラミの防除についてお聞かせください。

上田さん:
「管内で使ったことがない生産者はいないといっても過言ではないほど、どの生産者にも支持されている剤がアグリメックです。使うタイミングは定植後、天井被覆後、厳冬期の1月中旬の3回を指導しています。定植後は、露地状態であるため飛び込んできたタバココナジラミの密度を低下させるために、散布します。

天井被覆後は、飛び込んでくるタバココナジラミは減少しますが、ハウス内で増殖し、密度が高くなるため、このタイミングでの散布が重要です。厳冬期は受粉をホルモン処理している時期に使います。

アグリメックは速効性と残効性を兼ね備えているだけではなく、トマトサビダニなど、幅広い害虫を同時防除できますので、薬剤の散布回数やコストの低減にもつながっています。」

他にトマトの栽培上で活用されている剤があれば、教えてください。

上田さん:
「ローテション防除に欠かせない剤として、アファーム乳剤があげられます。アファーム乳剤もタバココナジラミに効果が高いのはもちろん、ハモグリバエ類、オオタバコガなど複数の害虫を同時に防除できる剤としてJAやつしろ管内で長く使われてきました。ほかにもマッチ乳剤チェス顆粒水和剤など、目的と時期に適した薬剤を選定しながら使っています。」

複数の剤を使いながら、「ここぞというときに」生産者が選ぶ剤がアグリメックなのだそう。JAやつしろのタバココナジラミの防除のキーとなる剤として信頼されています。

【八代平野の「八」と「平」から名付けられたJAやつしろのブランドトマト「はちべえ」】

八代平野の「八」と「平」から名付けられたJAやつしろのブランドトマト「はちべえ」

ローテション防除の徹底でトマト黄化葉巻病を抑え、より質の高いトマト栽培を目指す


直近のトマト黄化葉巻病の大発生を踏まえて、今後の方向性・ビジョンをお聞かせください。

上田さん:
「トマト黄化葉巻病が発生した当初から耐病性品種が確立されるまで、タバココナジラミ対策は本当に大変でした。昨日防除しても今日はまた違う株から発生するようないたちごっこで、生産者の精神的な苦痛が本当に大きかったのです。2021年の大発生でその頃の記憶がよみがえり、防除にどこか気持ちの緩みがあったのかもしれないという反省もありました。

近年、アグリメックを始め、効果の高い剤が出ていますが、油断は大敵。ローテション上での隙ができないよう、タバココナジラミを始めとする病害虫防除をしっかりと行い、質の高いトマトを生産していくために、組合全体で努力していきます。」

【ミネクトデュオ粒剤・アグリメック・アファーム乳剤を使ったトマトの防除スケジュール】

ミネクトデュオ粒剤・アグリメック・アファーム乳剤を使ったトマトの防除スケジュール

 

JAやつしろは、生産量全国1位の熊本県のなかでも、トマト栽培をリードする先進地域として常に注目されています。2022年度に行った集団除草作業も、他の地域から高い評価も得ました。そのブランドを守り、ますます発展させていくために、上田さんの歩みは続いていきます。

【JAやつしろの選果場】

JAやつしろの選果場

 

JAやつしろ営農部中央総合営農センター営農指導係上田誠さん

 

 

 

 

 
 

JAやつしろ営農部中央総合営農センター営農指導係の上田誠さん
JAやつしろではトマトを209.7ha、ミニトマトを65.4ha作付。
主力品種は、かれん(トマト黄化葉巻耐病性品種)、桃太郎ホープ。
担当するトマト選果場利用組合には231名の生産者が所属する。

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アグリメック

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