営農指導の強化活動をスタート。ブランドたまねぎを支え、淡路島の生産者の方々からより信頼されるJAへ。
1200haのたまねぎをはじめ、レタス、はくさい、キャベツなどの野菜栽培が行われているJAあわじ島。7年前からはたまねぎの根葉付での鉄コンテナ荷受けを開始し、労働力不足をサポートする取り組みも開始。昨年からは、「営農指導の強化」をテーマにしたプロジェクトをスタートさせました。
「営農指導の強化」の具体的な取り組みについて、同JAの営農部 営農課 原口雄介係長、賀集支所営農係の古住彰梧さん、榎列支所営農係の武田和也さんにお話を伺いました。
営農相談員と組合員のつながりの深さこそが、大きなメリットに
｜まず、営農指導を強化する取り組みを始めた理由をお聞かせください。
原口係長:
「数年前、現在よりも営農指導担当者の人数が減っていた時期があって、若手担当者の知識不足やサポート不足が叫ばれていたことがありました。昨年6月に就任した当JAの新組合長が“安定と挑戦”を打ち出したのをきっかけに、営農指導の強化・若手営農相談員の育成を図ることになったんです。
組合員の皆さんにいい作物をつくっていただければ、それが手取り収入に反映され、その収入が貯金や共済などの信用事業にもつながっていく。“農業者の所得増大”というJAの理念をあらためて見つめ直すために、組合員の皆さんとのコミュニケーションをより深めていこうというのが目的で、営農相談員はその最前線という位置づけです」
【お話いただいたJAあわじ島 武田和也さん（左）と古住彰梧さん(右)】
若手の営農担当者が集まり、実習圃場でたまねぎとキャベツを栽培
｜具体的にはどのような取り組みをされていますか。
古住さん:
「当JAの営農担当者は総勢26名。そのほとんどが20代で、若手中心のメンバー構成です。昨年11月からは、そのうちの若手メンバー8人が参加し、10aの実習圃場を運営しています。組合員の方々と話していると、『自分で作物をつくっているJAの人の話は説得力がある』という声をよく聞きます。
メンバーの中には非農家も多く、栽培ごよみなどの教科書だけでは得ることのできない実践的な体験を、自分たちで積むことで営農指導の知識ベースの底上げを図ることができると考えています。最初の耕うんや畝立ては共同でやりますが、その後の管理は農薬や肥料などの試験も兼ねて、個人個人がそれぞれ行います」
賀集支所の古住さんは、実習圃場のチームリーダーでもあります。営農担当者自らが、たまねぎとキャベツを栽培することで、実践的な知識や経験の習得をめざしていらっしゃるのだそうです。
【実習圃場での管理作業風景。営農担当者一人ひとりが一生産者として作業に取り組む】
実際に圃場で得た経験と知識の積み重ねが、自信と積極性を産む
｜実習圃場の取り組みにより、メンバーの中でどのような変化がありましたか。
古住さん:
「営農担当者が集まって、各エリアの生育や病害虫の状況等を報告しあう担当者会の開催を以前よりも頻繁に行っているのですが、その中で実習圃場を担当する若手の発言が増えてきました。また、農薬や肥料などの試験については、今まで本所からの指示に従っていたものを、若いメンバー自らがテーマや実施場所を提案し、提案した本人がそのテーマの責任者として最後まで責任をもって遂行するように変わったんです」
武田さん:
「例えば“この手入れを怠るとこんな雑草が増える”とか、営農の知識が少しずつ充実してきたような気がします。除草剤の散布の仕方や散布機の使い方など、教科書で読んだことの答え合わせが実践できた感じですね」
榎列支所の武田さんは、実習圃場のサブリーダー。組合員の方からは『文字だけでは分からないちょっとした管理のテクニックを教えてもらえた』『経験をもとにアドバイスしてくれ、心に響いた』という反響をいただくこともあるそうで、営農担当者の方々の励みにもなっているご様子。
相手に興味を持ってもらえるように話すのが大事
｜生産者・後輩相談員とのコミュニケーションの中で、コツはありますか。
古住さん：
「どうすれば自分の話に興味を持ってもらえるかを考えます。農作業の一つひとつには必ず理由があるので、その農作業の“答え”だけではなくて、その答えの“理由”を最初に話して相手に興味を持ってもらう。例えば、ここでトラクターの爪の回転数を2速にするのは、こんな理由があるからと2速にする意味を説明する。そうすることで、相手が話題に乗ってきやすくなります」
古住さんがおっしゃる興味をもってもらえるコツを支えているのも、営農指導の強化と実際に経験を積むことをいとわない若手営農相談員の努力の結果なのかもしれません。
【収穫に向けて生育する淡路島のたまねぎの圃場（左）】
【JAあわじ島のキャラクター「たまねぎサンちゃん」と「レタス サラちゃん」のたまねぎ型ベンチ（右）】
１００年以上にわたり水稲の裏作で栽培される、伝統の『淡路島たまねぎ』
｜『淡路島たまねぎ』の特長、栽培のこだわりについて教えてください。
原口係長：
「秋に定植し、冬を超えて春に収穫される淡路島たまねぎは、約7ヵ月の栽培期間でじっくりと時間をかけ、しっかりと栄養分を貯えることで、甘みがあるたまねぎに。昔から酪農が盛んなこともあり、たまねぎの定植前には堆肥をすき込むようにしています」
淡路島のたまねぎは水稲との二毛作で、たまねぎの収穫後にはすぐに水稲作が始まるのだそう。二毛作にすることで、たまねぎの連作障害が発生しにくくなるそうで、１００年以上続く伝統の栽培方法とのことです。また、中生品種以降のたまねぎは、たまねぎ小屋で風乾貯蔵することで甘みや色つやが増すのだとか。現在でも、昔ながらの吊りたまねぎで貯蔵するたまねぎ小屋もあり、淡路島の風物詩となっているようです。
【甘みが強い淡路島たまねぎ。風乾貯蔵のためのたまねぎ小屋が島内のあちこちに】
べと病の予防・治療効果でオロンディスウルトラSCに期待
｜『淡路島たまねぎ』の病害虫防除においての課題について教えてください
原口係長：
「高品質な淡路島たまねぎは、甘みが強く、首が締まっていて光沢のあるたまねぎ。早生、中生、貯蔵性が高い晩生と4月から翌年3月まで長期間にわたって全国に出荷しています。高品質なたまねぎ栽培に欠かせない病害虫防除ですが、一番の課題はべと病や灰色腐敗病などの問題病害対策です」
同JA管内では、アミスター20フロアブル、リドミルゴールドMZ、レーバスフロアブル、セイビアーフロアブル20を防除暦に採用いただいています。こうした薬剤の採用理由について原口係長に伺いました。
原口係長：
「アミスター20フロアブルは、べと病と灰色腐敗病の同時防除ができることや、収穫前日まで使える使いやすさがポイントです。レーバスフロアブルはべと病の予防効果が高く、はくさいのべと病にも効果が高いので安心して使えますね。早生品種ではべと病が出始める時期の予防として、3月下旬にリドミルゴールドMZを指導していますが、べと病防除では一番信頼している薬剤の一つです」
さらに、今年2022年の5月に試験をしていただいたオロンディスウルトラSCについても、次のように高く評価してくださいました。
原口係長：
「オロンディスウルトラSCは、べと病の予防効果・治療効果を兼ね備えている剤です。今年べと病発生が止まらなかった時期にローテーションの中で使用して、高い効果が得られたので、令和5年産たまねぎ防除ごよみに採用するつもりです」
【オロンディスウルトラSCなどを使用した「たまねぎ」のべと病などに対する防除スケジュール】
基本と経験が伴なうプロ集団で、信頼されるJAへ
｜今後のビジョンや目標をお聞かせください。
古住さん・武田さん：
「なかなか単年では成果は分かりずらいですが、営農担当者の個人間の知識レベルのバラつきをなくすことが目標です。営農担当者全員がプロの集団となるように、基本を大切にしつつレベルの底上げを図っていきたいですね。うまくいっている組合員様はやはり基本を大切にされているので、基本の大切さを改めて広めていければと思います」
原口係長：
「たまねぎは、GGAPの団体認証を取得したので、部会員数を増やして販売力の向上につなげたい。また、現在取り組んでいるYouTubeでの営農情報発信も、さらに力を入れていきたいと思います」
実践の知識とノウハウを身につけて、より生産者の方々から信頼されるJAへ。取材中も産地にかける強い想いと、若い力がひしひしと感じられました。そんなJAあわじ島の活躍に今後も期待せずにはいられません。
兵庫県総面積の７%におよぶ淡路島。その3分の1を占める南あわじ市を管内とするJAあわじ島
特産のたまねぎをはじめ、レタス、はくさい、キャベツなどの野菜の栽培が盛ん
JAあわじ島 榎列支所営農係の武田和也さん（左）と賀集支所営農係の古住彰梧さん(右)
※掲載内容は取材当時のものです。
