産地訪問

農業と飲食店経営の両立を実現。 湘南育ちのフルーツトマトで、 地域の消費者に食べる喜びを届けたい

野菜
湘南の太陽を浴びて育った佐藤農園のフルーツトマト

サーフィンやリゾート地として関心を集め、若者にも人気のエリア“神奈川県の湘南”。2014年から奥様の実家の農業を継承し、キッチンカーやピザ専門店など幅広い経営を展開していらっしゃるのは、湘南佐藤農園株式会社の代表 佐藤智哉さんです。農業と飲食業を両立させて、安定した経営を続ける秘訣はどこにあるのでしょうか。都市型農業を営む担い手のリアルな声をお届けします。

 

【目次】

無人直売所をメインに販売。栄養のある野菜を地域の消費者の食卓に

キッチンカーやピザ専門店も経営。重要なのは「ストーリー」がそこにあるか

アイメック農法で高品質なトマトを栽培。糖度と収量のバランスがとれたトマトづくりへ

 

 

無人直売所をメインに販売。栄養のある野菜を地域の消費者の食卓に


脱サラして奥様の実家で農業を始めた佐藤さん。自然災害により一時サラリーマンに戻りましたが、2014年、義父の急逝を機に再び就農し、経営面積を以前の3倍となる3.5haまで拡大。現在は、トマト、とうもろこし、えだまめ、キャベツ、ブロッコリーなどを手掛け、社員2名、パート8名、援農ボランティア20名とともに会社を運営していらっしゃいます。

「僕たちがつくった野菜が消費者の皆さんの食卓に上り、『これ美味しいね!』っていう会話でちょっとした幸せが生まれる、そんな場面をイメージしながら野菜づくりをしているんです」と農業への取組みにも明確な姿勢をお持ちです。野菜の販売に関しては無人直売所をメインとして、JA直売所やスーパーにも出荷しています。

「トマトって収穫してから2日ぐらい保冷庫で寝かせると糖度は高まるんですが、栄養価は落ちる。つまり、栄養面では採れたてが一番なわけです。人間が食べ物を食べるのって、栄養を摂取するのが第一の目的だから、栄養価の高い野菜をお届けすることを意識してるんです。新鮮な穫れたての野菜を食べてほしい。そのためには、自分の直売所で販売するのが最も理にかなってるんですよね。

無人直売所の様子。取材当日12時前にはほとんど売り切れていた
【取材当日(2025年7月上旬)、無人直売所では12時前にほとんどの品物が売り切れていた】

 

キッチンカーやピザ専門店も経営。

重要なのは「ストーリー」がそこにあるか


都市型農業の課題は農地の集積にある、と佐藤さん。23aぐらいの農地が飛び地になっていて集積できないので効率が悪いのだそうです。

「反対にメリットはマーケットの人口が多いこと。湘南エリアでも100万人以上、隣の横浜市は350万人以上も暮らしていて、販売がしやすい環境にあるのは大きな強みなんじゃないでしょうか」。

農業に情熱を注ぐ一方で、キッチンカーやピザ専門店も運営。飲食業部門は、農園の売上全体の40%にもおよぶ大黒柱に成長しています。一般的には、6次化に参入したものの経営的に成功しないケースも多いなか、成功に導いた秘訣を佐藤さんに伺いました。

「ポイントは商品にストーリーがあること。例えば、ピザ専門店のピザにもちゃんとストーリーがある。樹熟で割れちゃったフルーツトマトって、生鮮で出荷できないから、多くの農家さんは廃棄しちゃうんです。でも、樹熟で割れたフルーツトマトって甘くて美味いんですよ。だから、うちではピザ専門店で提供するピザソースに加工して活用しています。『湘南の太陽を浴びて育った、樹熟で完熟したフルーツトマトをソースにして、美味しいピザに仕上げました』っていう、ピザの裏側にある物語に消費者が触れることで、美味しさや印象がよりアップするわけです。それと、もう1つは地道にPRし続けること。僕が再就農した2014年から直売所の情報をwebサイト、FacebookInstagramで発信し続けてきました。キッチンカーやピザ専門店についても、SNSで発信することでメディアにも取り上げられるなど、波及効果を生んでいます」。

 

佐藤農園直営のピザ専門店「畑のキッチン」は多くのお客様でにぎわっていた
【佐藤農園直営のピザ専門店「畑のキッチン」は多くのお客様でにぎわっていた。⓵ お店は、小田急江ノ島線善行駅から徒歩30秒の好立地 ⓶ 素材の味を最大限に引き出した「農園マルゲリータ」 ⓷ 自家製トマトジュースも人気の1品 ⓸ お店の入り口にはメディアへの出演歴をディスプレイ】

 

 

アイメック農法で高品質なトマトを栽培。糖度と収量のバランスがとれたトマトづくりへ


佐藤さんは、2015年からトマト栽培に「アイメック農法」を導入。果実に栄養が凝縮した美味しいトマトを手掛けていらっしゃいます。

「アイメック農法は、ナノサイズの穴が開いた医療用フィルムの上で作物を育てるもので、作物がフィルムに根を張り、その下にある養液を吸吸い上げようとすることでストレスがかかり、糖分やアミノ酸が生成される画期的な農法です。一般的にこの農法で育てたトマトの場合、収量は下がる傾向にあるのですが、僕の場合は中玉トマトで10aあたりの収量が全国トップクラスらしいです」。

地元の人に美味しいトマトを毎日食べてもらいたい──そのためには収量も必要。そんな考えのもと、佐藤さんは近年、糖度をやや抑えつつ収量を増やし、“糖度と収量のバランスを考えたトマトづくり”へと舵を切りました。

「トマトってどちらかと言えば副菜じゃないですか。毎日食べてもらうには、主張し過ぎないことも重要だと思います。だから、糖度はあえて平均程度に抑えて、その分、収量がアップするようにしました」。

トマトの収量がアップしたので今後は、トマト以外の野菜の収益比率をもう少し上げていきたいと話す佐藤さん。2025年秋からはスティックセニョール、ベビーリーフ、カリフローレといった野菜にもチャレンジする予定なのだそうです。

アイメック農法で高品質なフルーツトマトを栽培
【アイメック農法で高品質なフルーツトマトを栽培】

 

病害虫対策は予防が大事。お守りとしてアファーム乳剤やマッチ乳剤を使用


「病害虫は、いかに出さないようにするかが大事」と佐藤さん。地域の防除暦を参考に、常にエースで4的存在の薬剤を見つけておいて、ローテーションのなかでそれを上手に活用していくのが佐藤さん流。

「コナジラミやチョウ目害虫対策として、生育期前半にアファーム乳剤マッチ乳剤を使っています。効果が高いので“お守り”的な存在ですね。天候が安定しているときは、灰色かび病対策としてアミスター20フロアブルも使います。それと、雨に強いから、野菜やハウス周りの除草にはタッチダウンiQが便利ですね」。

「トマトなど作物の栽培って、急激な品質向上とか作業省力化は無理。毎年1点ずつスコアを上げていって、技術をブラッシュアップさせていく必要があります。そうすることで地元の人々に食べる喜びを安定して提供し、地域とつながっていく。それが僕の願いなんです」。

直営のピザ専門店でピザをふるまいながら農業への想いを語ってくださった佐藤さん。アツアツのピザをいただくと同時に、湘南で育ったトマトの熱い物語も味わうことができました。

 

 

湘南佐藤農園株式会社 代表 佐藤智哉さん

 

 

 

 

 

 

湘南佐藤農園株式会社 代表 佐藤智哉さん
 

 

 

 

※掲載内容は取材当時のものです。

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