最先端のドローン防除で省力化を実現。 歴史あるかんきつの産地を守り、次世代につなぐ。
瀬戸内海に浮かぶ大崎上島、大崎下島、豊島からなるJA広島ゆたか管内。瀬戸内海気候の下、200年以上前からかんきつ栽培が行われてきた管内では、他産地にさきがけドローンによる農薬散布を本格的に導入。かんきつの栽培とドローン散布への取組みについてお話を伺いました。
目次
地域独特の「ゲシ積み」により、甘みが凝縮した温州みかんを栽培
ミカンサビダニやチャノホコリダニへのアグリメックの効果を実感
生産者の労力軽減をめざし、ドローン散布を本格導入
ドローン散布と地上散布を組み合わせ、産地の維持に取り組む
地域独特の「ゲシ積み」により、甘みが凝縮した温州みかんを栽培
JA広島ゆたか管内は、年間平均気温15.5度というかんきつ栽培に適した温暖な気候に恵まれています。かんきつ全体の栽培面積は340haで、温州みかんが約4割、レモン、しらぬい、ポンカンなどの中晩柑が約6割を占めています。
管内にある大崎下島でみかん栽培がはじまったのは、文政元年(1818年)のこと。地域のみかん栽培の原点「青江早生(あおえわせ)」を大分県から導入し、また、日本初のレモン栽培に取り組むなど、かんきつ栽培をリードする産地として発展してきました。平地の多い大崎上島に対して、大崎下島は急傾斜地の段々畑が特徴。
日当りの良い傾斜地で作られる温州みかんは、石積(いしづみ)みかんとしてブランド化され、県内のデパートなどで高い人気を誇ります。石積みの段々畑は、急傾斜地をみかん栽培に適した耕地にするために、開墾時に山肌から掘り出された岩や石がそのまま利用されており、「ゲシ積み」と呼ばれているそうです。水はけが良く、湿度を適度に保持することで、甘みが凝縮されたみかんが育ち、管内の皆さんの原風景にもなっています。
「生産者の方々は梅雨明け頃に、園地全体にマルチをていねいに敷き、糖度の高いみかんを育ててきました。収穫後に厳しい選別をし、糖度12度以上、酸度1%以下のバランスのとれたものだけを石積みかんとして出荷しています」と話すのは、JA広島ゆたかに駐在するJA広島果実連業務部指導課技師の秋光伸彦さん。
ミカンサビダニやチャノホコリダニへのアグリメックの効果を実感
温暖な気候を活かした栽培が続けられている管内ですが、近年、夏が暑く、降雨が少ないことで果実の肥大が鈍り、日に焼けてしまうなどの影響が出ているのだとか。乾燥により、ミカンサビダニやチャノホコリダニが発生しやすくなることも心配です。その対策の一つとして、2年間の試験を経て、2021年から防除暦にアグリメックを採用していただきました。
「温州みかんの落弁期、中晩柑の満開期の5月中下旬と、7月中下旬に散布しています。ミカンサビダニやチャノホコリダニの被害が拡大すると品質が低下してしまいますので、早めの対策として初期密度を下げるのが目的です。採用して以来、ミカンサビダニやチャノホコリダニが発生したという報告はされていませんので、ホッとしています。また、アザミウマ類も同時防除できるのも大きなメリット。チャノキイロアザミウマへの残効が長いので助かりますね」と秋光さんは評価してくださいました。
生産者の労力軽減をめざし、ドローン散布を本格導入
管内の大きな課題は生産者の高齢化対策。平均年齢は70代後半で、ご夫婦の2人だけで栽培し、後継者がいないという方も多いそうです。そんな中、産地を維持するための省力化の一つとして、2023年から本格的にドローンによる農薬散布に取り組んでいらっしゃいます。
アップダウンの激しい急傾斜地での農薬散布は、平地とは違った難しさがあります。ドローン散布を請け負う大信産業(株)の小池大介さんにお話を伺いました。
「傾斜地は奥行きがあり、目視でドローンを操作すると錯覚を起してしまうため、手動操作で正確に飛ばすことが難しいんです。あらかじめ測量用のドローンで空中から園地を撮影し、防除する場所をマッピングした地図から3Dマップを作成。その上をドローンがどのように飛ぶかの航行ルートを作って、自動操舵で散布します。GPSが届かないような場所もあるため、それも地図の作成段階で確認しながら、場合によっては基地局を建てることもあります」。
事前の準備が必要ですが、手作業では散布完了までに1~2日かかっていたところが、ドローン散布では15分程度で完了するため省力化に大きく貢献していると言えそうです。2023年には大崎上島と大崎下島を合わせて11軒だったドローン散布導入戸数が、翌年には25軒にまで増えたことでも、生産者の皆さんが負担軽減を実感されていることが窺えます。
ドローン散布と地上散布を組み合わせ、産地の維持に取り組む
ドローン散布は、夏の猛暑下における急傾斜地での防除作業効率化のため、7月中下旬と8月中旬の2回行われています。このうち、7月中下旬の散布ではアグリメックを使用いただきました。
「希釈しやすく、溶けやすい使い勝手のいい剤ですね。ドローンでの散布ムラを心配する生産者の方もいますが、アグリメックは浸達性に優れており、ていねいに散布する地上散布と変わらない効果を実感している方々が多いようです」と秋光さん。
水田でのドローン散布は各地で行われていますが、かんきつの園地で導入している産地は、JA広島ゆたか以外はほとんどありません。そのため、他産地からドローン散布の視察に訪れることもあるそうです。今後も夏期のドローン散布を広げ、産地を維持していきたい──と秋光さんはおっしゃいます。
「すべての防除をドローン散布に変えることは難しいので、今後も7月、8月の実施になることは変わらないでしょう。ただ、技術が進歩しドローン散布に適用できる登録農薬が増えれば、夏期以外の防除にも使えます。生産者の予算面も考慮しながら、ドローン散布と地上散布を上手に組み合わせ、労力軽減に取り組んでいきます」。
最先端の技術を取り入れ、歴史あるかんきつの産地を守り、さらなる発展をめざすJA広島ゆたかの取組みは続きます。
JA広島果実連業務部指導課技師 JA広島ゆたか駐在 営農販売課 秋光伸彦さん(左)と
大信産業(株)小池大介さん