産地訪問

味も歯ごたえも特上のながいもは地域の宝。未来を見据え若手の育成にも本気で取り組む。

野菜
JA十和田おいらせの七戸のながいも

ながいもの産地として知られる青森県内でトップクラスの生産量を誇るJA十和田おいらせ管内。そのシャキッとした歯ごたえと甘みのある味わいは全国の食通を唸らせています。ながいもへの取り組みについて、JA十和田おいらせでながいも専門部会長を務める寺澤和夫さん、同JA指導やさい部指導課の縄田尚伸係長、七戸支店営農経済課の佐々木卓也さんにお話を伺いました。

 

【目次】

ながいもを、青森から全国に最初に届けた町
健康な土づくりを通じて全国的なブランドに
ながいもづくりの伝統と専門知識を若手に継承
土壌診断を活用し、健康な土づくり
ながいもの生育の良さが違う、ユニフォーム粒剤

 


ながいもを、青森から全国に最初に届けた町


│JA十和田おいらせ管内におけるながいもの作付面積、部会員数、栽培の歴史についてお聞かせください。

縄田係長:

「JA出荷における令和4年度の作付面積は約280ha、生産者数は435名にのぼります。この地域では昭和30年代後半に現ながいも専門部会長を勤められている寺澤さんのお父様がりんご部会の仲間とながいもづくりを始め、青森県内で初めて全国出荷を実現しました。この地域は昼夜の寒暖差が大きく、また、作土が深く水はけのいい黒ボク土の土壌ということもあり、非常に味の良いながいもがとれます。そのシャキシャキとした歯ごたえと豊かな甘みは、煮ても焼いても生のままでも美味しく召し上がっていただけます」。

佐々木さん:

「そんな七戸のながいもの中でもとくに高品質なものを“特上品”とし、オンラインショップでも販売しています。全体の数%しかとれないため品切れになってしまうことも多々ありますが『これぞ七戸のながいも!』という味わいを一人でも多くの方に堪能していただきたいですね」。

生産量だけでなく、七戸のながいもは食味の良さもトップクラスと胸を張る縄田係長と佐々木さん。町の特産品として大切に受け継いできた自信とプライドが伺えます。

【左から縄田係長、寺澤部会長、佐々木さん】

左から縄田係長、寺澤部会長、佐々木さん


 

健康な土づくりを通じて全国的なブランドに


│オンラインショップのほか、ながいもの販売促進のために取り組んでいることはありますか?

縄田係長:

「この地域は十和田湖から注ぐきれいな水と健康な土づくりにより、野菜本来の旨みがぎっしり詰まったミネラル豊富な野菜が育ちます。当JAでは、これらの野菜をTOM VEGE=トムベジ(T:十和田 O:おいらせ M:ミネラル VEGE:野菜)と名付け、糖度と硝酸の基準値を満たしたものだけを“十和田おいらせミネラル野菜TOM VEGE”としてブランド化しています。野菜が苦手なお子さんにも安心して美味しく食べてもらえる高付加価値野菜として、品目の拡大とブランドの確立を目指しているところです」。

佐々木さん:

「ここ2〜3年はコロナ禍の影響により見送っているのですが、それ以前は毎年、青森県知事と当JAの担当者がながいもをはじめとする青森県の特産品を携え、東京のアンテナショップなどで販売会を開催していました。青森県内のスーパーマーケットなどでも定期的にイベントを行い、県内外へ積極的にPRしています」。

JA十和田おいらせでは、1998年に全国に先駆けて“高性能土壌分析・診断システム”を活用した土づくりを開始し、良食味・高品質な野菜生産指導の体制を確立しました。さらに、2007年には“青森県日本一健康な土づくり農業実践事業”により堆肥分析装置を導入。2010年には土壌分析・診断システムを更新するなど、健康な土づくりを徹底しています。


ながいもづくりの伝統と専門知識を若手に継承


│ながいもづくりにおける課題をどのようにお考えですか。

寺澤部会長:

「一番の課題は、やはり生産者の減少ではないでしょうか。同時に、農業の機械化が進み昔ながらの伝統的な技術が失われつつあることも懸念しています。たとえば、今の若い生産者はながいも掘り用のスコップを上手に扱うことができない。私の父などは、1日にスコップ一本で150mは掘ったものです。そこで私は2015年に、組合員とその家族が、楽しみながらながいも掘りの技術を学ぶのを目的とした“ながいも早掘り決定戦”というイベントの開催をJAに提案しました。今では多い年で100名ほどが参加する春の恒例行事になっています」。

縄田係長:

「寺澤部会長発案の“ながいも早掘り決定戦”はマスコミからも注目され、青森のテレビ局から取材を受けたこともあります。技術の継承や地域の活性化だけでなく、ながいもをPRするうえでも非常に有意義なイベントといえるでしょう」。

佐々木さん:

「生産者の方々を応援するという意味では、直売所の運営にも力を入れていることろです。2020年には東北最大級の売場面積を誇るファーマーズマーケット“かだぁ〜れ”をオープンさせ、生産者の所得増と生産量拡大に貢献しています」。

【寺澤部会長の発案により始まった「ながいも早堀り決定戦」。優勝者には金のスコップが贈られる。】

寺澤部会長の発案により始まった「ながいも早堀り決定戦」。優勝者には金のスコップが贈られる。

農業技術の継承と若手の育成に心血をそそぐ寺澤部会長。そんな寺澤部会長が先頭に立って取り組んでいるのが“ながいも若手育成塾”。ながいもづくりの専門知識を学ぶ研修イベントで、2012年からスタートしました。スコップの使い方や農機の操作方法などを、実際のながいも圃場で手ほどきしているとのこと。こうした取り組みからも、ながいもづくりへの本気度が伺えます。

土壌診断を活用し、健康な土づくり


│より高品質なながいもをつくるために、工夫されていることはありますか。

寺澤部会長:

「畑をゆっくり休ませることですね。絶対に連作をしない。私は間に緑肥の栽培を挟み、最低でも2年は休ませるようにしています。あとは、バランスのいい土づくりですね。JAの方針に合わせて、私も収穫後の土壌診断は欠かしません」。

│問題になっている病害虫についてはいかがですか。

寺澤部会長:

「害虫では植え付けの時期のアブラムシ、病気では8月によく出る葉渋病や炭疽病が厄介ですね。ナガイモコガはアクタラ粒剤5を10aあたり6kg散布し、葉渋病と炭疽病にはアミスター20フロアブルの2000倍液を10aあたり200ℓ散布しています。また、どうしても連作せざるを得ない圃場で気をつけなければいけないのが根腐病です。

連作した際に気をつけなければいけないという根腐病。寺澤部会長曰く「3年目には急増する」という根腐病に従来は土壌くん蒸剤で対処していたものの、圃場を被覆するための労力や材料にかかるコスト、そして土壌への安全性が憂慮されていたそう。そこで、2021年にJA十和田おいらせからの勧めで試験したのがユニフォーム粒剤でした。

【特上品、A品、B品、C品を手早く選別するながいもの選果場】

特上品、A品、B品、C品を手早く選別するながいもの選果場

ながいもの生育の良さが違う、ユニフォーム粒剤


│ユニフォーム粒剤はどのように試験されましたか。

寺澤部会長:

「2021年は約20aの圃場で、溝掘同時処理と溝掘後処理の2パターンの作条土壌混和を試し、使用量も10aあたり18kgと36kgとで試験しました。私の圃場は連作を避けているせいかもともと根腐病は少ないのですが、ユニフォーム粒剤を散布した圃場のながいもは一目瞭然で生育がよかったですね。処理方法の違いについては、溝掘後処理の方がよかった印象です。使用量については、連作を避けた圃場であれば18kgでも問題ないかなと。2022年は試験圃場を30aに拡大したので、トレンチャーによる同時処理も試してみました。

縄田係長:

「当JA管内ではながいもを100mほど掘り、その圃場のABC品率を測定しているのですが、ユニフォーム粒剤を使用した圃場はA品率が高いというデータが得られました。試験を重ね、その有効性を活用できるようにしたいですね」。

【寺澤部会長によるユニフォーム粒剤処理風景】

寺澤部会長によるユニフォーム粒剤処理風景

ユニフォーム粒剤について『連作を避けられない圃場にこそおすすめしたい』と断言する寺澤部会長。さらに『圃場を被覆する手間が省けることから生産者の労力低減につながるのでは』という期待も付け加えてくださいました。

 

【ユニフォーム粒剤を使った「ながいも」の根腐病に対する防除スケジュール】

ユニフォーム粒剤を使った「ながいも」の根腐病に対する防除スケジュール

この地に受け継がれてきたやまいもの未来を見据え、若手の育成に想いを馳せる寺澤部会長。スコップを握るその手が、ひときわ力強く見えました。

 

JA十和田おいらせのながいも専門部会長を務める寺澤和夫さん


 

 

 

 

 

JA十和田おいらせのながいも専門部会長を務める寺澤和夫さん
ながいも(園試系6号)4haのほか、にんにく40a、
いんげんまめ40a、シャインマスカット10aを作付。

※掲載内容は取材当時のものです。