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かんきつの害虫トレンドと防除対策

病害虫・雑草コラム

かんきつのチャノキイロアザミウマは、「飛来最盛期が防除適期」と語るのは、静岡県農林技術研究所 果樹研究センター 果樹環境適応技術科の土田祐大さん。チャノキイロアザミウマはもちろん、ダニ類、チョウ目、天敵などについても詳しくお話を伺いました。

静岡県のかんきつの現場では、どのようなことが課題になっていますか。


静岡県では、2000年に約8000haあったかんきつの栽培面積が現在は約5800haと減少傾向にあるものの、一部地域では基盤整備による平坦地での栽培と担い手による面積集約化が進んでいます。このような背景から、作業の省力化や低コスト化は大きな課題です。まだ研究段階ですが、私どもではこうした課題に対して多様な取り組みを行っています。

【静岡県農林技術研究所 果樹研究センター 果樹環境適応技術科 土田祐大さん】

 

静岡県農林技術研究所 果樹研究センター 果樹環境適応技術科 土田祐大さん

例えば、「垣根型樹形における効率的管理手法」の開発では、慣行の「開心自然形」とくらべて幅を取らず、栽植本数を多くすることができ栽植後初収穫までの期間も短いため、未収益期間を短縮化し早期の収益安定化が期待できます。また、樹形がコンパクトなため、収穫時に農業支援ロボット等が園地に入りやすく労働力を省力化できるのもメリットです。

【静岡県農林技術研究所 果樹研究センター】

静岡県農林技術研究所 果樹研究センター

【静岡県農林技術研究所 果樹研究センター 試験圃場】

 

静岡県農林技術研究所 果樹研究センター 試験圃場

 

静岡県の近年の害虫発生は、どのような傾向が見られますか。


チャノキイロアザミウマやミカンハダニは、かんきつの基幹防除対象の最重要害虫ですが、以前と比較すると減少傾向にあります。一方、カイガラムシ類やミカンサビダニは一部地域で以前からの問題害虫でしたが、近年では静岡県全体に広がってきたようです。

■静岡県のチャノキイロアザミウマ、カイガラムシ類、ミカンハダニの発生状況の推移はこちら
http://www.agri-exp.pref.shizuoka.jp/boujo/boujohp/jyunkai/kankitunenkan.pdf
(静岡県病害虫防除所ウェブサイト 病害虫発生状況グラフ)

チャノキイロアザミウマの発生傾向と防除のポイントについて教えてください。


チャノキイロアザミウマは、防風垣として県内で広く植栽されている「イヌマキ」の新芽で増殖しますが、春~夏にイヌマキを剪定してしまうと夏~秋に新芽が発生して増殖し、飛来量が増加します。冬はかんきつの貯蔵に忙しい時期ですが、この時期にとイヌマキの剪定をしておくことで夏の発生密度を抑えることができます。

また、チャノキイロアザミウマは、飛来最盛期が防除適期です。防除適期を外すと防除効果が上がらず、被害が増えてしまいます。一部の地域では、薬剤抵抗性によるチャノキイロアザミウマの被害が取りざたされていますが、薬剤抵抗性よりむしろ飛来最盛期の防除を逸することによる被害の方が実情かもしれません。

チャノキイロアザミウマは年によって飛来最盛期が異なる傾向にあるので、病害虫防除所等の発生予察情報をもとに防除適期を見極め、薬剤散布するようにしてください。

■最新の発生予察情報はこちらをご覧ください(静岡県病害虫防除所ウェブサイト)
http://www.agri-exp.pref.shizuoka.jp/boujo/boujohp/BJyosatsujohoTOP.htm

【チャノキイロアザミウマ】

チャノキイロアザミウマ

 

【垣根型の樹は台木を高接ぎして仕立てる】

垣根型の樹は台木を高接ぎして仕立てる

 

【防風垣としてよく使われている「イヌマキ」】

防風垣としてよく使われている「イヌマキ」

 

独自に開発された、新しいチャノキイロアザミウマ対策があるそうですね。


当センターで開発した方法をご紹介します。チャノキイロアザミウマは太陽光を認識して飛翔するので、太陽光を乱反射させるマルチを園地に被覆するとチャノキイロアザミウマがかんきつの樹にたどり着くことができず、寄生率が減少することが分かっています。

【太陽光を乱反射させるマルチ】

太陽光を乱反射させるマルチ

 

その場合、樹冠占有面積率60%程度の疎植園での導入が効果的と言われています。これと同様のメカニズムで、天然物由来の炭酸カルシウム微粉末を25~50倍に希釈してかんきつの葉や果実に散布すると、樹全体が白色になり、チャノキイロアザミウマはかんきつの樹を認識できなくなるので、被害を抑えることができます。

チャノキイロアザミウマを対象とした薬剤防除は、通常6~8月にかけて3~4回程度行われますが、炭酸カルシウム微粉末を6月上旬と7月下旬に1回ずつ散布すれば、8月まで効果が持続するので、2回の薬剤散布回数の減少が期待できます。また、天敵に影響がないことも確認済みです。

ダニ類やチョウ目についてはいかがでしょうか。


まずダニ類ですが、1990年代はミカンハダニに対して年4~5回の防除をしていました。しかし、ミカンハダニの土着天敵であるミヤコカブリダニやダニヒメテントウ類が夏に発生し、ミカンハダニを捕食してくれることが明らかになりました。これら土着天敵を活用する防除体系を構築したことで、現在は春と秋の年2回の防除が主体となっています。

【ミカンハダニ】

ミカンハダニ

 

一方、ミカンハダニが突発的に増える園地もあります。これは、前述したような天敵に影響のある薬剤を、天敵の働く夏に散布していることが原因と考えられるので、散布する薬剤と時期に注意する必要があります。チョウ目については、他の害虫と同時防除できるような防除体系が各地で組まれているためあまり問題にはなりませんが、ハマキムシ類の被害が報告される地域もあります。

秋に成虫が生んだ卵がふ化して果実に食入し、出荷後に発見されるケースが多いようです。秋の防除はダニ剤がメインですが、被害状況によってはそこにチョウ目対象の薬剤も組み込む必要があるかもしれません。

ミカンハダニの天敵を上手に利用するポイントはありますか?


冬にマシン油を散布し、春のミカンハダニの密度を低くしておくことが最も重要です。ダニヒメテントウは春先の発生・定着が早く、定着後すぐにミカンハダニの捕食を始めるので特に手を加える必要はありません。

しかし、ミヤコカブリダニは樹上で越冬せず、地域や圃場、年によって発生量が異なるので、安定して発生・定着するように工夫する必要があります。草生栽培に用いられるナギナタガヤを秋に播種すると冬に繁茂し、ミヤコカブリダニが越冬する生息場所となるので、春先から安定して発生・定着することが分かっています。

【ミヤコカブリダニの生息場所となるナギナタガヤは、冬に繁茂し夏前に枯れた状態に】

ミヤコカブリダニの生息場所となるナギナタガヤは、冬に繁茂し夏前に枯れた状態に

 

かんきつの主要害虫の薬剤防除では、何がポイントになりますか。


6~7月はチャノキイロアザミウマ、チャノホコリダニ、ミカンサビダニといった害虫に加えて、カイガラムシ類の防除も必要となります。この時期の防除では、耐雨性があって天敵への影響が少ない薬剤が望まれます。

また、9月の防除では、ミカンハダニやミカンサビダニのほか、一部地域ではチャノキイロアザミウマやハマキムシ類にも効果の高い薬剤が必要です。アベルメクチン系のアグリメックは、チャノキイロアザミウマ、チャノホコリダニ、ミカンサビダニに防除効果があり、耐雨性にも優れていると聞いているので、6~7月の防除における選択肢のひとつではないでしょうか。

ただし、6~7月の防除に使用する薬剤を選ぶ際は、天敵に影響の少ない薬剤を選ぶ必要があるので、最寄りの指導機関等で影響度をチェックするようにしましょう。

【チャノホコリダニ】

チャノホコリダニ

 

薬剤抵抗性の問題についてはいかがでしょうか。


以前は黒点病防除のためのジチオカーバメート系の薬剤によりミカンサビダニが同時防除されていましたが、近年、県内でミカンサビダニに対する防除効果が低下していることが明らかになっています。また、秋に使用されている一部のダニ剤はミカンハダニに対する防除効果が低下しているので、心当たりのある方は最寄りの指導機関等に相談するようにしましょう。

実用化に向けた研究の取り組みや、最新の病害虫などについてお聞かせください。


現在、共同研究機関とともに、かんきつにおける無人ヘリコプターによる農薬・肥料の散布技術や、ドローンを活用したセンシング技術を開発中です。センシング技術ではドローンの撮影機能を利用して樹ごとの着花を検出して着果量を推定し、収量を予測することを目的としています。これにより、樹ごとの生育の把握や収穫時の作業人数をあらかじめ決定できるなど、高品質な農作物の安定生産や収穫計画の早期化が期待されます。

また、最新の病害虫ということではありませんが、西日本のいくつかの産地でミカンバエの幼虫がみかんの果実内に食入し、出荷後に発見されるケースが増えているようです。静岡では事例がまだ報告されていませんが、今後は注意する必要があるかもしれません。

 

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