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鉄コーティング種子による湛水直播水稲の除草技術:「表面播種」のメリットと注意点

病害虫・雑草コラム

直播栽培の7割近くを占める湛水直播栽培。「その中でも主流である鉄コーティング種子を使用した『表面播種』は、雑草管理はもちろん、薬害には特段の注意が必要です」と財団法人 日本植物調節剤研究協会 研究所 千葉支所の濱村謙史朗支所長。では、どのような点に気をつければいいのでしょうか。お話をお伺いしました。

まず直播栽培の歴史を簡単に教えてください。


日本初の水稲直播栽培は、明治26年に北海道で始まった湛水直播で、昭和11年には18万haまで拡大、当時の北海道における作付面積の8割以上を占めていました。
昭和初期の大冷害を背景に、育苗期に冷害の影響を受けにくい移植栽培に取って代わられますが、太平洋戦争時では労働力不足から、田植え作業が省力できる直播栽培が再び広がりました。
その後、田植え機や育苗設備が普及したことから、減少の一途をたどりましたが、ここ10年は右肩上がりで増え続けています。

【国内の水稲直播栽培面積の推移】

国内の水稲直播栽培面積の推移

 

直播栽培のメリットを教えていただけますか。


育苗が不要なので省力化が実現できるほか、移植栽培と組み合わせて作業時期を分散させることで、経営規模拡大が図れることが最大のメリットではないでしょうか。

直播栽培は「湛水直播」と「乾田直播」に分かれますが、「湛水直播」が主流。それは、除草体系が比較的移植栽培と似ていて取り組みやすいからではないでしょうか。
しかし、苗を本田で育てるのと言い換えられる湛水直播は、出芽や苗立ち安定化のための播種後の水管理が重要になります。

【地域別直播栽培の面積】

地域別直播栽培の面積

 

湛水直播には2タイプの播種方法があるそうですね。


「土中播種」と「表面播種」という2つの播種方法に分けることができます。「土中播種」は土壌中に種籾を播くため、一般的にはカルパーという酸素発生剤を種籾に粉衣する技術「カルパーコーティング」が普及しています。苗立ちが安定しやすく失敗が少ないことや、除草剤の薬害を受けにくいというメリットがありますが、カルパー剤を粉衣した後の保存期間が10日程度しかないというデメリットもあります。

一方、「表面播種」は種籾に鉄粉を粉衣する技術が普及しており「鉄コーティング」と呼ばれます。種籾が土壌中に埋没すると発芽が不良となるので、種籾は土壌表面に播かれます。カルパーと比べて低コストであり、粉衣後も長期間保存できるので農閑期に粉衣調整作業を行なうことができます。

こうした理由から、表面播種は急速に普及していますが、除草剤の使い方に注意しないと薬害を生じてしまうということは、意外と知られていないかも知れません。

「表面播種」の除草では、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。


「土中播種」の場合は土の中に種子があるので、稲の幼芽や幼根が土壌表面の除草剤処理層に触れず、問題は少ないのですが、「表面播種」の場合は稲の種子が土壌表層にあるため、幼芽・幼根が除草剤の処理層に接触して薬害が生じやすくなります。

除草剤のラベルには、播種法別で表記されていないので、「表面播種」での使い方においては注意が必要になります。そのポイントは2つ。ひとつは「除草剤の選び方」、もうひとつは「除草剤の使用時期」です。

【表面播種と土中播種の籾位置の違い】

表面播種と土中播種の籾位置の違い

 

濱村謙史朗支所長
東京農業大学、千葉大学-大学院を卒業後、日本植物調節剤研究協会で水稲の雑草防除、除草剤の研究について従事。
現在は各地で直播栽培の雑草防除についての講演も行っている。

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