赤星病は、薬剤散布と地域の協力で防除
赤星病菌は庭や公園などに植栽されるビャクシン類が中間宿主となり、異種寄生を行うという特徴があります。ビャクシン類の除去と早めの薬剤散布が重要な防除策となります。赤星病の発生原因と防除方法について詳しく解説します。
ビャクシン類と異種寄生を行う赤星病
赤星病はなしやりんごに発生する病害です。なしでは品種に関係なく発生しますが、なしとりんごとでは病原菌が異なるため、互いに伝染することはありません。赤星病菌は庭や公園などに植栽されるビャクシン類(カイズカイブキ、ハイビャクシン、ビャクシン(イブキ)、タチビャクシン、タマイブキ)が中間宿主となり、異種寄生を行うという特異な性質を持っています。そのため、なし園の周囲にビャクシン類が植えられているか否かで発生の有無が決まります。すなわち、ビャクシン類が、なし園の近くになければ発生しません。
なしの産地では、ビャクシン類による赤星病の発生やまん延を防ぐために、赤星病防止条例を制定している自治体もあるほどです。条例にはなし園の周囲1~1.5kmの範囲にはビャクシン類を植えないことや、すでに植えてあるビャクシン類は伐採するなどが盛り込まれており、赤星病の発生防止に効果を上げた事例もあります。
【なしの葉(表)に発生した赤星病】
【なしの葉(裏)に発生した赤星病】
4月中・下旬に雨の多い年はなしの赤星病に要注意
なしの赤星病は、4月中旬から下旬にかけての雨が多く、特に風を伴う雨が降るような年に発生が多くみられます。それは、ビャクシン類の葉や枝で越冬し、成熟した赤星病菌の冬胞子が、降雨によって寒天状に膨らみ、発芽し、小生子を飛散させるためです。この小生子がなしの葉や枝に飛び、展葉したばかりの葉に明るい黄色の小斑点を発生させます。これが赤星病の初期症状です。葉の発生密度が高いと、枝や果実にも発生しますが、症状は葉と変わりありません。
病斑は少しずつ増えるのではなく、4月中旬から5月上旬に一斉に発生し、次第に拡大し、色が濃くなり、黒褐色の小さな点が作られます。5月中旬から6月上旬になると病斑の裏側に、淡黄灰色のタワシの毛のような毛状突起を生じ(銹子腔[さぶしこう])、その中から橙黄色をしたサビ胞子が飛散し、ビャクシン類の若い葉に感染し越夏・越冬し、翌年の発生源となるのです。
【なしの葉に大量発生した赤星病】
【異種寄生でビャクシンに宿った赤星病】
【なしの果実に発生した赤星病】
ビャクシン類を除去することが重要な防除策
赤星病は中間宿主となるビャクシン類がなければ繁殖しないため、果樹園の近くにあるビャクシン類を除去することが重要な防除策となります。発生の診断は4月から5月に園内を巡回し、1枚の葉に1~2個の病斑がちらほら見える程度で有れば心配はありませんが、葉全体の2~3割を超すような赤星病が広がっているようなら、周辺にあるビャクシン類の対応策を急がなければなりません。
また、赤星病が常時発生している地域では、果樹園の周囲1km以内の住宅や工場、公共施設などと話し合い、ビャクシン類を伐採し、発生源をなくすことが重要です。
薬剤の散布は早めの対応がポイントに
薬剤の散布は、早めの対応がポイント。果樹園に発生する前の4月上旬から中旬に、20~30倍に希釈した多硫化カルシウム剤、またはメプロニル剤をビャクシン類に2~3回散布することで、小生子の飛散を事前に防止できます。また小生子が飛散する4月中旬から5月上旬に、なしにスコア顆粒水和剤やアンビルフロアブルなどを組み合わせ、2回から3回散布すると効果的です。
最近は赤星病に効果の高いEBI剤が出ており、各地で発生生態を考慮した防除体系も確立されています。さらに、住宅地でのビャクシン類の植栽に留意していることもあり、以前のように大きな被害は見られなくなりましたが、赤星病がなしやりんごの重要な病害であることには変わりはありません。適時に、徹底的な防除を心がけましょう。
・品種別、病害発生部位の違い
<赤星病の発生部位> | 若葉 | 成葉 | 幼果 | 成熟果 |
---|---|---|---|---|
品種:幸水 | ● | - | ● | - |
品種:豊水 | ● | - | ● | - |
●:一般的に発生する Δ:まれに発生する -:殆ど発生しない
シンジェンタジャパン株式会社 技術顧問
髙倉 和男