うめの黒星病-病害の発生原因と効果的な防除方法

病害虫・雑草コラム

うめの主要な病害である黒星病は糸状菌によって起こります。防除を怠ると黒い斑点が沢山でき、果実の商品価値が著しく低下します。病原菌の生育適温は18〜24℃とされ、春先に高温で雨が多い年に発病が多くなることが知られています。今回はうめの黒星病の発生原因と防除方法をご紹介します。

昔から私たちの生活に欠かせないうめ(梅)


奈良時代に中国から薬用として伝来したとされるうめは当初は花が大変愛され、万葉集にはうめの花を詠んだ歌が多くあります。鎌倉、江戸と時代が進むにつれて調味料、食用、薬用、飲料など果実の利用も進み、鑑賞用や染料としての利用も合わせて一般に広く親しまれるようになり、現在では私達の生活に欠かせない存在になっています。

【写真1:果実の病徴 ©全国農村教育協会】

果実の病徴

【写真2:枝の病斑 ©全国農村教育協会】

枝の病斑

黒星病は糸状菌によって起こる病害


うめの栽培でも様々な病気が発生しますが、その中で主要な病害は黒星病とかいよう病です。
かいよう病は細菌による病害ですが、黒星病はクラドスポリウム カルポフィラムという糸状菌によって起こる病害で、防除を怠るとうめの実が1.5cm程度の大きさになった頃に最初は暗緑色、後に2〜3mmの黒い斑点が沢山でき、果実の商品価値が著しく低下します。葉では比較的小さな丸い暗褐色―黒褐色の病斑ができ、やがて中心部が抜け落ちて穴があきます。

黒星病は高温で雨が多くなる春先に注意


果樹などの永年作物では、枝の病斑部や芽で越冬した病原体が翌年の発病の伝染源になるという特徴があります。黒星病の場合にも罹病した枝が伝染源になります。緑の枝では赤褐色、褐色になった枝では濃褐色楕円形の病斑ができ、時には輪紋を生じ、越冬期には病斑の中心部が銀灰色になることもあります。病原菌の生育適温は18〜24℃とされ、春になり温度が上昇すると病斑部に淡褐色で長楕円形の分生胞子が形成されるようになり、これが雨滴とともに飛散して葉や果実に新たな感染を起こします。したがって、春先に高温で雨が多い年に発病が多くなることが知られています。

薬剤散布と剪定作業が黒星病の防除のカギ


本病の防除は主に薬剤散布によって行いますが、伝染源を取り除く冬の剪定作業も非常に大切な防除対策の一つです。薬剤防除には開花前の早い時期の石灰硫黄合剤の散布と新葉が展開し新たな感染が始まる時期のその他の殺菌剤の散布があり、感染初期に樹全体に薬剤がよく付着するよう十分な量を散布することで高い防除効果を上げることができます。

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問

吉野 嶺一

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