ダイズ紫斑病の発生原因と防除対策

病害虫・雑草コラム

だいず栽培では虫害防除を主体とした防除が行なわれているのが実態ですが、そんな状況下で「ダイズ紫斑(しはん)病」はしっかりと防除対策が取られている重要な病害です。ダイズ紫斑病の発生原因と防除対策をご紹介します。

だいず栽培における病害:ダイズ紫斑(しはん)病


だいずは小麦・大麦と並んで水田の主要な転作作物となっていて、その栽培面積も少しずつ増加し2002年には約15万haに達しています。

排水が悪い水田から転換した畑では茎疫病や黒根腐病などの土壌病害が問題になっている場所もありますが、だいず栽培ではウイルス病を伝搬するアブラムシ、サヤタマバエ、シロイチモジマダラメイガ、イチモンジカメムシなど虫による被害が大きく、虫害防除を主体とした防除が行なわれているのが実態です。このような状況の下で毎年きちんと防除されている病害があります。それがダイズ紫斑(しはん)病です。

ダイズ紫斑病の病徴は豆粒に現れる紫色の斑紋


紫斑病の典型的な病徴は収穫された豆粒に現れる紫色の斑紋です。商品となる収穫物の品質に直接関係している病害といえます。だいず生産では収穫物の検査が厳格に行なわれ、それに対応した出荷時の選別も厳しく行なわれるため、市販のだいずに紫斑粒(写真1)が混じっていることはほとんどありませんが、朝市などで売られている豆では紫斑粒が高率に混入しているのを見かけることがあります。

【写真1:紫斑粒】

紫斑粒

紫斑病はサーコスポラキクチイという糸状菌によって引き起こされる病気です。圃場に放置された罹病茎葉も翌年の伝染源となりますが、その主要な第一次伝染源は罹病種子であり種子伝染病の代表的な病気とされています。

圃場で伝染が繰り返されるダイズ紫斑病


紫斑病に感染した紫斑粒を播種すると発芽が不良になるばかりでなく、発芽してきた子葉に赤紫色の病斑を形成します(写真2)。この病斑の上に分生胞子(写真3)が形成され、それが伝染源となって次々と茎葉に病斑が形成され、圃場での伝染が繰りかえされます。しかし、葉での病斑はあまり特徴がなく他の病気による病徴と識別することは難しいとされています。

【写真2:紫斑粒の播種によって子葉に出現した病徴

紫斑粒の播種によって子葉に出現した病徴

【写真3:紫斑病菌の分生胞子】

紫斑病菌の分生胞子

品質に影響するだいず種子への感染は開花の約40日後から始まり、70-75日後の莢が黄色くなる頃にもっとも罹りやすいことが明らかにされています。また、収穫時期が遅れるほど感染率が高まり、収穫後長い間放置すると紫斑粒が増加することも知られています。したがって、収穫後は乾燥・脱穀を速やかに行なうことが大切です。種子での発病には気象条件も影響し、結実期の平均気温が18℃前後で雨が多い年には紫斑病が多発生となることも明らかにされています。

ダイズ紫斑病の防除は薬剤散布が効果的


品種によって紫斑病の発病には違いがあり、エンレイ、シロセンナリなどの品種では比較的発病が少ないとされています。しかし、これらの品種の抵抗性は免疫的なものではなく、多少の差はあるもののどの品種でも紫斑粒の発生がみられるので、紫斑病の防除は薬剤に頼らざるを得ません。

播種時の薬剤の種子粉衣と莢が伸長する時期に薬剤散布することによって紫斑病を防除することができます。本病の防除には長い間チオファネートメチル剤のようなベンズイミダゾ-ル系剤が使われてきました。しかし、近年、多くの県でこれらの剤に対する耐性菌の発生が報告されるようになり、防除効果の低下が問題となっています。

シンジェンタからはアミスター20フロアブルプランダム乳剤25が地上散布と無人ヘリコプター散布での紫斑病防除剤として登録されています。両剤は大豆の紫斑病に対して高い防除効果を示します。

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問

吉野 嶺一

2021年10月改訂

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