水稲育苗箱用灌注処理剤「ミネクトシリーズ」使用実感レポート(新潟県)

体験レポート
水稲育苗箱用灌注処理剤「ミネクトシリーズ」使用実感レポート(新潟県)

幅広い害虫に活性を示す殺虫成分シアントラニリプロールといもち病への効果が高いイソチアニルを含有した水稲育苗箱用灌注処理剤(殺虫殺菌剤)「ミネクトブラスター顆粒水和剤」、紋枯病に卓効を示すペンフルフェンを加えた「ミネクトフォルスターSC」。その使用実感について、早生品種の収穫があちこちで始まった8月下旬の新潟県を訪問し、営農スタイルが異なる4名の生産者様にお話を伺いました。

新たな投資が不要で助かる。
弁当肥と同時に処理できて効率的ですね。


新潟県上越市 株式会社ふるさと未来
代表取締役 髙橋賢一さん

株式会社ふるさと未来 代表取締役 髙橋賢一さん

8名の従業員を抱える髙橋さんが農業の世界に飛び込んだのは10年ほど前。若い農業者が働きやすい農業生産法人を目指し、 (株)ふるさと未来を立ち上げました。それまで建築資材の商社に勤めていた髙橋さんは、商社で培った生産管理のノウハウを農業にも活用。生産性の向上をコンセプトに水稲約52haのほか、えだまめ、ブロッコリーなどの園芸品目も手がけていらっしゃいます。

農作業、営農収支を“見える化”し、工業生産のような農業を

同社では設立当初、工業生産のPDCAサイクル※の考え方を農業にも導入し、非効率な業務の改善に着手されました。そこで最初に取り組んだのが、作業の省力化です。
「例えば、代かきや田植え作業の効率化。代かきは2回必要というイメージがありますが、ハローのような精度の高い機械を使えば、代かきは1回だけで済みます」と髙橋さんはおっしゃいます。また、高密度播種苗を全面的に導入し、育苗や田植え作業を省力するなど、従来型の作業を見直した結果、労働時間は全国平均の4分の1にあたる10aあたり7時間を実現されたのだそうです。
同社が開発した営農支援システム「未来ファームMINORI」は、最先端ICT技術と農業を融合。工場のような生産管理を可能にしました。例えば、圃場に設置した看板にスマートフォンをタッチするだけで、圃場の名前やその日の作業を表示したり、圃場ごとの収量・くず米率などを計算する機能を装備し、農作業や営農収支を“見える化”。「だから、経験の浅い若手でも、安心して農業に取り組むことができるし、責任もやりがいも生まれる。若者が楽しんで農業に従事できる環境づくりが目標です」と髙橋さんは次世代を見据えます。

株式会社ふるさと未来 代表取締役 髙橋賢一さん

※PDCAサイクル: 継続的な業務改善の手法で、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すこと。

箱粒剤時代の薬害が解消し、密苗でも効率よく使える

農業の業務改善に取り組んできた髙橋さんが直面したのが、2年前から導入した高密度播種苗に播種同時処理していた箱粒剤による薬害でした。
そんな状況の中、苗箱に均一に処理できる灌注処理剤の存在を知り、育苗箱用灌注処理剤「ミネクトブラスター顆粒水和剤(以下、ミネクトブラスター)」を試験採用。その後、2022年に同じく灌注処理剤で紋枯病にも効果のあるミネクトフォルスターSCを全面採用されました。
髙橋さんは手持ちの動噴を使って、田植え4日前に全品種の育苗箱に対してミネクトフォルスターSCを灌注処理。箱粒剤の時のような薬害もなく、播種機の周りにこぼれ落ちるようなムダもないので、灌注処理剤は高密度播種苗に最適、と喜びます。
「2022年はこの地域で紋枯病が多発したんですが、うちは大丈夫でした。発生した圃場でも稲の根本付近で症状が止まっていて、それ以上は進展がなかったんです。いもち病も問題ありませんでした」。


新たな器具は不要、手持ちの散布器具で散布できる

また、髙橋さんが高く評価されたのが“ムダな機械投資が必要ないこと”でした。
播種同時施薬機や、田植え同時処理のアタッチメントのように、新たな機械を購入しなくても手持ちの散布器具で処理できるので、コストが抑えられたのだとか。さらに、「液肥と混用し同時に処理できて効率的」と髙橋さんは微笑みます。

株式会社ふるさと未来 代表取締役 髙橋賢一さん

薬剤を吸わせてそれを植えるから、箱粒剤よりも信頼できる

「箱粒剤ユーザーは、灌注処理に懐疑的な人が多いが、苗の根から薬剤を吸わせる灌注処理の方が信頼できる。薬剤が目に見えるかどうかではなく、防除効果があるかないかが重要、と指摘します。
来年も全面積でミネクトフォルスターSCを使います、と髙橋さん。楽しんで農業に取り組む若者をもっと増やすために──毎日の営農を通じて、地域の活性化にも熱い視線を注がれています。


粒剤よりも均一に処理できる。経済的なメリットも魅力ですね。


新潟県上越市 頸城(くびき)建設株式会社
不動農産部 課長 石田秀和さん

新潟県上越市 建設株式会社 不動農産部 課長 石田秀和さん


頸城建設(株)では、中山間地の耕作放棄地増加に歯止めをかけることを主な目的とした、国家の「農業特区」第1号認定を受け、平成15年に農業に参入されました。本業の土木工事業で活躍する重機とそのノウハウを農業にも転用し、水稲18.5ha(つきあかり、新潟次郎、こしいぶき、コシヒカリなど)を作付していらっしゃいます。今回は同社不動農産部 石田秀和課長にお話を伺いました。

田植え時、除草剤の散布に専念できる

石田さんの課題は、箱処理剤と除草剤の効果をいかに安定させるか。箱処理剤は、以前から田植え前に箱粒剤を散粒器で育苗箱に散布、2年前からは箱粒剤を田植え同時側条施薬機で散布されていました。
同社の圃場は湿田で、田植えのときに完全落水しないと、田植え同時側条施薬機で溝に処理した粒剤が水に浮いてしまい、土壌に落ちずに効果が不安定に。その一方で、同時散布する除草剤の効果安定化のためには多少の湛水状態が必要なので、湛水深をどの程度にするのか、そのせめぎ合いで悩んでおられたのだそうです
そんなとき舞い込んだのが、水稲育苗箱用灌注処理剤「ミネクトフォルスターSC」試験散布の話でした。石田さんは2022年、田植え前日の “新潟次郎” 約1ha分の育苗箱で試験を実施。手持ちの動噴を利用して、ミネクトフォルスターSCを育苗箱200枚に30分程度で処理されたそうです。
「田植え前に箱処理が済んでいたので、田植え時は適度に湛水した状態で除草剤が処理できました。うちにとってはすごくメリットが大きいですね」。

新潟県上越市 建設株式会社 不動農産部 課長 石田秀和さん

薬害もなく、本田での紋枯病もしっかり抑えた

一番の問題病害虫は「紋枯病」とのことですが、その防除効果も上々だったようです。
「うちの圃場では、箱処理をした後は基本的に本田防除はしていません。ミネクトフォルスターSCを処理した圃場は、薬害もなく、紋枯病の発生が抑えられていたし、初期害虫のイネミズゾウムシやイネドロオイムシも問題ありませんでした」。

 

【イネ紋枯病】

イネ紋枯病

|灌注処理剤はムダもなく経済的

箱粒剤の場合、散布ムラやこぼれ落ちるムダが生じてしまいがちですが、ミネクトフォルスターSCなどの灌注処理剤は、苗箱全体にムラなく処理することができます。
「粒剤よりも均一に処理でき、ムラがなく経済的。肥料など資材高騰の折、ありがたいことです」と石田さん。
来年は水稲の全面積にミネクトフォルスターSCを導入する予定なのだとか。次世代の農業者のために──その持続的な稲作経営で、ますます地域に貢献されていくことでしょう。

今までの不便さを解消。
粒剤よりも断然、灌注処理剤を支持します。


新潟県村上市 株式会社貝沼農場
代表取締役 貝沼 純さん

新潟県村上市 株式会社貝沼農場 代表取締役 貝沼 純さん

(株)貝沼農場は平成29年、地域の担い手として貢献するために設立され、50haの水稲を作付する生産法人です。圃場の4割は中山間地にあり、直播水稲や多様な品種を組み合わせながら効率化を図っていらっしゃいます。
「当社は、メインの業務用米のほか、コシヒカリやこしいぶきなどの“岩船産ブランド”も手がけ、卸店・米穀店や外食産業などと直接取引を展開。岩船産米のブランドとともに歩んできました」と話すのは代表の貝沼さん。
主力の業務用米は、多肥栽培の多収米なので、いもち病、紋枯病などがつきやすく、防除の徹底が課題なのだそうです。

課題は、田植え同時で処理する箱粒剤のデメリット

同社が手がける中山間地の水田の多くは、いもち病の常発地帯。殺虫殺菌剤散布機で箱粒剤を田植え同時処理、その後の本田ではドローンで殺菌・殺虫剤を2回散布するのが定番です。
以前から、殺虫殺菌剤散布機で箱粒剤を処理してきた貝沼さんは、その効果や作業性に課題を抱えていらっしゃいました。苗の生育にムラがあると粒剤が均一に処理できず、また、高密度播種苗では、慣行の育苗箱と比べて苗の密度が高いので、散布した粒剤が根元まで落ちないこともあるのだそうです。
「雨が降ったり、湿度が高いと粒の落ち方も不安定になります。また、殺虫殺菌剤散布機って結構重くて、湿田だと田植え機のバランスとるのが大変。さらにパーツが摩耗するから、部品交換やメンテナンスが必要なんです」。

【葉いもち病】

いもち病多発圃場

灌注処理は、事前に薬剤を吸わせておけるので安心

貝沼さんは2022年、業務用米の“大粒ダイヤ”“恋初めし”10ha分の高密度播種苗に対して、田植え前日、弁当肥散布後の灌水時にミネクトフォルスターSCを処理されました。
手持ちの動噴を活用し、「灌水と同じ感覚で均一かつ簡単に灌注処理できました」と頬をゆるめる貝沼さん。育苗箱の播種密度は品種によって変えていることから、殺虫殺菌剤散布機では、箱粒剤の吐出量を品種ごとに変える必要があり、それをしなくていいのは非常に大きなメリット、と喜びます。
また、箱粒剤が切れたまま補充を忘れて田植え作業をしていまい、結果的にその圃場一筆ごと追加防除せざるを得なくなったといったデメリットも心配する必要がありません。
「灌注処理は事前に薬剤を苗に吸わせておけるので安心です。田植え当日は除草剤と苗だけ持って行けばよく、省力的。灌注処理剤は、粒剤のデメリットだったポイントをしっかりカバーして、課題を解消してくれた。一般的には箱処理剤=粒剤というイメージがありますが、私は灌注処理剤を支持します。」
とそのメリットを実感していらっしゃいました。

仙北市のKさんの圃場

いもち病、紋枯病や初期害虫も、効果に満足

防除効果においても、いもち病、紋枯病ともにしっかりと抑え、初期害虫の被害もなかったので、非常に満足いただけたご様子です。
担い手の責任がますます大きくなっていく今後は、高密度播種や灌注処理など新しい技術の活用が必須、と貝沼さん。地域の発展に向けたその取り組みに、エールを送りたいと思います。


箱処理の作業時間は3分の1に。
省力化できた分は、切り花の作業にまわせます。


新潟県新潟市
小林 勝さん

新潟県新潟市 小林 勝さん

息子さん、娘さん、奥様とともに5人の家族経営で水稲27ha、花き18aを作付するのは、新潟市の小林さん。水稲は、こしいぶき、コシヒカリ、新之助など全面積で高密度播種を導入していらっしゃいます。

|育苗ハウスでの箱粒剤散布は不便で大変

小林さんが手がける圃場の問題病害虫は、年によって大発生するイネミズゾウムシやイネドロオイムシなどの害虫と、いもち病。防除体系は、田植え前に箱粒剤を散布、出穂後にいもち病とカメムシ対象の殺虫・殺菌剤を1回散布されています。箱粒剤は育苗ハウスの育苗箱に、散粒器を使って1枚ずつ散布するので、労力がかかって大変、とおっしゃいます。
「ハウスの中央通路の両側に苗箱を並べて散布しています。中央通路に近い場所はラクにまけても、端側はスペースが狭くて散布が大変です」。
そんな中、たまたまシンジェンタの広報誌で見かけたのが、ミネクトブラスターの記事。「これは箱処理が省力化できる!」と思い立ち、2022年の“新之助”の田植え前日に、散水ポンプを使ってミネクトブラスターを育苗箱に灌注処理。
「箱粒剤の時に苦労していたハウスの端側の苗箱も、水まき感覚でラクに処理できた。1日に4ha分の苗箱400枚を灌注処理しましたが、箱粒剤の時は30分以上かかっていたのが、10分弱で終了。作業時間は3分の1になりました」。


【イネドロオイムシ】

イネドロオイムシ

 

|濃いように感じた処理液も、その効果に納得

「ミネクトブラスターを200倍に希釈して処理しましたが、200倍ってかなり濃くて、ドロッとした印象で、はじめは薬害を心配しましたが、問題ありませんでした」と当初の印象を語る小林さん。防除効果も期待どおりで、イネミズゾウムシ、イネドロオイムシといった初期害虫や、いもち病についてもしっかり防除してくれた、と評価してくださいました。

小林 勝さん

|灌注処理により省力化を実現、その時間を他の作業に使えて効率的

ミネクトブラスターによる省力効果は、小林さんの家族経営にも大きな好影響を及ぼしたようです。それは、9棟のハウスで手がける花き栽培。金魚草、アルストロメリアといった切り花の出荷時期が、田植え前と重なるのだとか。「その時期は、水田の方も代かきや田植えを並行して作業するので忙しい。ミネクトブラスターで省力化できた時間や労力を、切り花にまわせるので助かりますね
と農業経営面での魅力も感じていらっしゃいました。
2023年は“新之助”に加えて、コシヒカリ7haにもミネクトブラスターを使用する予定なのだとか。作業省力化に積極的な小林さんなら、「近い将来は法人化して規模拡大し、次世代の若い農業者を雇用していきたい」という目標の実現も、そう遠いことではないのかもしれません。

 

 

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