病害虫・雑草コラム

農業試験場インタビュー ~高密度播種苗栽培と箱処理剤の上手な選び方

宮城県古川農業試験場 作物環境部病害チーム 上席主任研究員の宮野法近さん

慣行の移植栽培と比べて使用育苗箱数を減らすことができ、育苗時の作業省力化やコスト削減につながる「高密度播種苗栽培」。すでに導入されている生産者様もいらっしゃることと思います。今回は「高密度播種苗栽培」における箱処理剤の上手な選び方について、宮城県古川農業試験場 作物環境部病害チーム 上席主任研究員の宮野法近さんにオンライン取材でお話を伺いました。

目次

規模拡大の処方箋 ~「高密度播種苗栽培」のメリットとは?
専用機材が必要? ~1箱当たり播種量と専用機材の関係性
「慣行栽培とおなじ」で良い? ~箱処理剤の適切な量は?
薬剤選びがとりわけ重要、農薬の成分数が限られる特別栽培米
【試験レポート】ミネクトブラスターの効果とは? ~高密度播種苗栽培におけるいもち病(葉)の防除
「水まき」と同じお手軽さで安定した効果 ~一般的な粒剤と『灌注処理』の違い
【まとめ】ニーズに合わせた箱処理剤選択 ~灌注処理剤の可能性
 

 

 

規模拡大の処方箋 ~「高密度播種苗栽培」のメリットとは?


「高密度播種苗栽培」は宮城県でも一部の大規模生産者の方々で導入が進みつつあります。一番大きなメリットは、慣行栽培と比べて10aあたりの使用育苗箱数が削減でき、育苗期間も短くなることから、作業省力化やコストダウンが図れ、それにより規模拡大に貢献することです。宮城県の場合、慣行栽培では稚苗で10aあたり16~18箱の育苗箱が必要なところ、高密度播種苗では栽植密度にもよりますが概ね8~10箱程度に、育苗期間は慣行よりも1週間ほど短くなります。

高密度播種苗栽培は、慣行栽培の苗と比べて徒長しやすく苗質が劣る、浮苗になりやすい、初期生育が遅いといったデメリットもありますが、播種、水管理や雑草管理などにコツが必要な直播栽培よりも比較的取り組みやすい技術であり、疎植栽培を組み合わせればさらに使用育苗箱数の削減が可能です。

すでに直播栽培を導入されている生産者の方でも、高密度播種苗を規模拡大や省力化のための選択肢のひとつとして取り入れることで、より効率的な稲作経営につなげることができるのではないでしょうか。

 

 

専用機材が必要? ~1箱当たり播種量と専用機材の関係性


慣行栽培での育苗箱における乾籾換算の播種量は、宮城県の場合、稚苗で1箱あたり160g程度ですが、高密度播種苗栽培の場合、1箱あたり250~300g程度になります。1箱250g程度の播種量であれば、現在お使いの田植え機のかき取り量・送り量の設定を調整するだけで対応できますが、250g以上の播種量の場合は、専用の播種機・田植え機が必要になります。

田植えの速度は慣行栽培と変わりませんが、播種量が多いので育苗の際に蒸れが生じないように温度管理に注意が必要です。

【慣行栽培(一般的な播種量〈乾籾〉・移植枚数)と高密度播種苗栽培の播種量比較】

慣行栽培(一般的な播種量〈乾籾〉・移植枚数)と高密度播種苗栽培の播種量比較
慣行栽培(一般的な播種量〈乾籾〉・移植枚数)と高密度播種苗栽培の播種量比較

 

 

「慣行栽培とおなじ」で良い? ~箱処理剤の適切な量は?


高密度播種苗栽培の苗に対する箱処理剤施用は、一般的な粒剤タイプの場合、1箱あたり50gの施用量だと、条件によっては慣行栽培と同じ効果が発揮できずに防除効果不足や残効期間の短縮などが生じます。特に、宮城県の場合は7月中旬に吹く風「やませ」の影響で、冷害によるいもち病発生のリスクが高まり、防除効果が低くなる可能性があります。

また、疎植栽培と高密度播種苗栽培を組み合わせた場合、10aあたりの使用育苗箱数は6箱程度にまで削減することができますが、10aあたりの薬剤投入量も減ることになり、薬効を最大限発揮する上での課題が残りますので注意が必要です。

【いもち病(葉いもち)】

いもち病(葉いもち)

 

 

薬剤選びがとりわけ重要、農薬の成分数が限られる特別栽培米


宮城県内では、「環境保全米」に代表される特別栽培米の作付けが主流となっています。化学農薬の使用量は慣行の半分以下の8成分なので、移植水稲の場合、田植え前または田植え時の箱処理剤1回、本田での水稲用除草剤1回、カメムシ防除の殺虫剤1~2回の散布が基本。いもち病の発生時には1~2回の防除が追加されます。

使用農薬の成分数が限られた特別栽培米などでは、発生する病害虫に合った薬剤の選定が重要と考えています。

【オンラインでの取材風景】

オンラインでの取材風景

 

 

【試験レポート】ミネクトブラスターの効果とは? ~高密度播種苗栽培におけるいもち病(葉)の防除


昨年2021年の春に、育苗箱用灌注処理剤ミネクトブラスター顆粒水和剤(以下、ミネクトブラスター)のいもち病に対する防除効果について試験を実施しました。高密度播種苗栽培において、ミネクトブラスター区、対照剤区、無処理区を設定し、ミネクトブラスターは薬剤を水で100倍に希釈し移植3日前にジョウロで灌注する方法で処理し、対照の箱処理剤は移植当日に施用しました。

2021年、宮城県ではいもち病の発生は例年に比べ多い年でしたが、ミネクトブラスターはいもち病をよく抑えており、特に葉いもちに対しては高い防除効果が得られました。

 

ミネクトブラスター顆粒水和剤 高密度播種苗におけるいもち病(葉)に対する効果
ミネクトブラスター顆粒水和剤 高密度播種苗におけるいもち病(葉)に対する効果

ミネクトブラスターは一般的な粒剤とは異なり、「灌注処理」という方法で田植え前の苗に事前に処理をしておくことができるのが特徴で、特に専用の機材を購入することなく、動力噴霧器や頭上灌水装置、ジョウロなど手持ちの散布器具を利用することで、育苗箱への潅水と同じ感覚で処理することができます。

 

 

「水まき」と同じお手軽さで安定した効果 ~一般的な粒剤と『灌注処理』の違い


試験を実施した感想は、一般的な粒剤と比較してミネクトブラスターは、効果の安定度が非常に高いと感じました。なぜなら、粒剤の場合、田植え機のツメで苗をかき取る際にせっかく施用した粒剤が一部こぼれ落ちてしまうことがあります。また、田植え同時散布機で粒剤を処理していると「最後に粒剤が余ってしまった」または「途中で粒剤が切れてしまったが気が付かなかった」という話を生産者の方からよく聞きます。このように規定量をきちんと処理できていない場合、効果にムラが生じてしまう原因になります。しかし、ミネクトブラスター等の灌注処理剤では、希釈した薬液を水まきの要領で育苗箱に処理するため、まんべんなく苗に施用できることが、防除効果が安定する要因と考えられます。

【お持ちの道具で簡単に処理が可能な灌注処理剤の灌注処理例】

お持ちの道具で簡単に処理が可能な灌注処理剤の灌注処理例

 

 

【まとめ】ニーズに合わせた箱処理剤選択 ~灌注処理剤の可能性


ミネクトブラスターによる灌注処理の場合、一般的な粒剤と比較して10aあたりのコストが下がるという試算があり、経済性に優れているという話をシンジェンタさんから伺いました。移植時に箱処理剤というメニューの他に、ミネクトブラスター等の灌注処理剤という選択肢が登場したということは、経済性・省力性も含めて、生産者のニーズに合わせた新たな選択肢が増えたということ。生産者の方々は、ご自分の栽培計画などにあわせて薬剤を選んでいただければと思います。

ミネクトブラスターによる灌注処理で効率アップ

 

 

 

 

 

 

 

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