てんさいの主要害虫の特徴と防除ポイント-北海道の事例

病害虫・雑草コラム

畑作害虫の防除では、「被害予測して密度管理、農薬の適期・適部使用」が“上手な防除”と言えます。ここではてんさいに発生する主要害虫の特長と防除ポイントを解説します。

てんさいに発生するヨトウムシ


特徴と生態:てんさいのヨトウムシ

年2回の発生で、北海道での幼虫期は6月下旬〜7月中旬、9月上旬〜9月下旬。若齢幼虫は緑色で、老齢になると黒化して体長は30mmほど。中位葉裏の卵塊から孵化した幼虫は、体長5mmくらいまでは集団ですが、食痕が小さいため見つけるのが困難です。3齢以降には、付近の株にほぼ均等に分散して葉を食べるので、食害株率によって被害の少なさを予測できます。幼虫の生育中期の被害株率が50%以下では実害につながりません。

 

ヨトウムシによるてんさいの被害

実害は、株あたりの葉の損失率が30%以下では軽微。1回目幼虫の被害は根重に影響を及ぼし、2回目幼虫の被害は再生葉の出現により根中糖分に影響します。

【ヨトウムシ】

ヨトウムシ

 

防除のポイント:残効性の長い薬剤であれば、軽微な食痕を見てからの散布でOK!

中齢以降の幼虫は移動しつつ食害するので、高濃度少水量散布のように薬剤散布のムラがあっても、防除効果は低下しません。食害を見てから残効性が長めの薬剤を散布すると、1回の防除で済むので、資材の節減につながります。

てんさいに発生するテンサイトビハムシ


特徴と生態:テンサイトビハムシ

テンサイトビハムシの成虫は3mm程度の黒い甲虫で、葉の表面を点状に食害し、とび跳ねるのが特徴。5月上旬ごろから圃場外の越冬成虫が飛来し始め、5月下旬に虫数・食害程度が最大に。幼虫はてんさい圃場では生育できません。

 

テンサイトビハムシによるてんさいの被害

5月中に、成虫の食害による葉面積率が大きいと生育が遅れます。移植てんさいでは、このような事例はまれで、一般に被害は軽微。直播の場合には、発芽直後の子葉が欠失することも多く、欠株となりやすいので注意が必要です。

【テンサイトビハムシ】

テンサイトビハムシ

 

防除のポイント:移植栽培では予防は不要。直播栽培では種子処理が効率的

移植の場合は、常発地での多発時以外では予防措置は不要。食害の経過を見ながら、薬剤散布による防除を検討しましょう。直播では、発芽直後からの食害防止が必要なので、常発地では薬剤の種子処理が確実で効率的と言えます。

※記事監修:鳥倉英徳(元・北海道病害虫防除所長)

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