実践しよう野菜の「殺虫剤抵抗性管理」
害虫の防除にあたって同系統の殺虫剤を運用し続けることによって、害虫が殺虫剤に対する抵抗性を持ち、殺虫剤の効果が低下することを「殺虫剤抵抗性」と呼びます。ここでは実際の殺虫剤抵抗性管理に関するポイントについて詳しくご紹介します。
殺虫剤抵抗性管理のポイントは3つ
上手な殺虫剤の抵抗性管理には、3つのポイントがあります。一つめは「ローテーション散布の実践」、二つめは「天敵に影響の少ない殺虫剤の使用」、三つめは「多様な防除を組み合わせた、総合的病害虫管理」です。ひとつずつ解説していきましょう。
- 「ローテーション散布の実践」
有効成分の系統名をしっかりと確認して、系統の異なる殺虫剤のローテーション散布を実践することです。 - 「天敵に影響の少ない殺虫剤の使用」
殺虫剤の中には、天敵への影響が大きい製品もあるので、購入店や製品パンフレットなどでよく確認して、天敵が活動している時期には、天敵への影響が少ない殺虫剤を選ぶようにしましょう。 - 「多様な防除を組み合わせた、総合的病害虫管理」
化学農薬以外にも色々な防除法を組み合わせることで、害虫が発生しにくい環境をつくることが大切です。
【ローテーション散布の実践】
【天敵に影響の少ない殺虫剤の使用】
害虫が発生しにくい環境をつくる極意とは!?
「物理的防除」「耕種的防除」「生物的防除」「化学的防除」といった、多様な防除法を組み合わせた総合的病害虫管理のことをIPM(IntegratedPestManagement)と呼んでいます。
「物理的防除」
ハウス育苗では、ハウス開口部のネット被覆、アルミ蒸着テープなど光反射資材の設置、黄色や青色の粘着トラップ設置などがあり、露地育苗では、防虫ネットによるトンネルがけ、光反射資材の利用などがあります。
また、小規模栽培では、生育期に畝面を不織布またはネットでトンネルがけすると害虫の侵入を防ぐことができます。
【物理的防除 黄色または青色粘着トラップ設置防虫ネットによるトンネルがけ】
「耕種的防除」
キャベツの外葉など作物の収穫残渣を放置したままだと害虫の増殖が進み、周辺圃場への発生源になることがあるので、残渣は耕転を行うなどして、なるべく速やかに処理しておきましょう。
【耕種的防除 収獲残渣の耕転】
「生物的防除」
捕食性昆虫、寄生性昆虫、捕食性ダニ類、天敵微生物などパッケージ化された生物農薬を導入したり、合成性フェロモン剤で特定の害虫の交尾行動を阻害して害虫密度を抑制することができます。
【生物的防除 寄生性昆虫 合成性フェロモン剤】
害虫の生態にあわせたムダのない「化学的防除」
「化学的防除」
害虫の生態にあわせて防除を行うことが大事です。例えば、生育初期のキャベツの場合、コナガやオオタバコガは、卵からふ化した若齢幼虫が食害の中心なので、若齢幼虫対象の殺虫剤で十分に防除できます。しかし、生育期後半や収穫期は、歩行能力が高いハスモンヨトウやヨトウガの中・老齢幼虫が圃場周辺から侵入することで、幼虫の齢期がバラつくので、齢期が進んだ幼虫にも効果が高い殺虫剤での防除が有効です。
また、キャベツで言うと、タマナギンウワバというチョウ目害虫は、結球葉よりも外葉を好んで食害するので、生育のための光合成に必要な外葉形成期の防除さえきちんと行えば、出荷する結球部自体には被害は及びません。しかし、コナガの場合は、結球葉も食害するので生育期全般を通じた防除が必要になります。
【化学的防除 害虫の生態にあわせた防除 外葉が好きなタマナギンウワバ】
以上のように、「ローテーション散布の実践」、「天敵に影響の少ない殺虫剤の使用」、「多様な防除を組み合わせた、総合的病害虫管理」といった3つのポイントを実践することで、上手な殺虫剤抵抗性管理に心がけましょう。
出典:シンジェンタジャパン(株)発行「漫画で知ろう『殺虫剤抵抗性管理』」「野菜殺虫剤の上手な使い方」