はじめよう野菜の「耐性菌管理」

病害虫・雑草コラム

「今までよく効いていたのに、殺菌剤の効果が落ちてきた…」という話を最近よく耳にします。皆さまの圃場ではいかがでしょうか。その最も大きな原因は、同じ系統の薬剤を連用した結果、「耐性菌」が発達してしまうこと。では耐性菌を出さないようにするには、どうすればいいのでしょうか。耐性菌の豆知識についてご紹介します。

病原菌はどこからやってくるのか!?


作物の病原菌はどこからやってくるのでしょうか。病原菌は、様々な経路を通じて作物に侵入します。まず、雨・風や農業用水、虫などの自然要因、トラクターなどの農業機械、長靴、剪定ばさみなどの人的要因、種子や苗といった作物要因など、多様な経路から病原菌が運ばれて圃場に広がります。

【農業用水】

農業用水

【作業用の靴】

作業用の靴

【苗】

苗

まん延する速度が速い「疫病」「べと病」


一般的に、「疫病」や「べと病」など卵菌類による病害では、病気の拡大が極めて速く、2~3日で圃場全面にまん延することがあります。疫病やべと病を発生させないように、予防散布を徹底するようにしましょう。

病害は、同じ病斑そのものが広がって行くだけではなく、1つの病斑上に数日後には数万個ほどの胞子が形成されます。病斑をひとつ残すと数万の胞子が拡散し、それだけ耐性菌リスクが高まることになります。

耐性菌が発達するしくみとは?


同じ系統の薬剤を連用していると、その薬剤が効かない耐性菌が発達し、はびこってしまうことがあります。こうした耐性菌発達のしくみですが、同じ種類の病原菌でも遺伝的に異なる系統が存在し、同じ系統の薬剤の散布を重ねることで、その薬剤に弱い系統が死滅し、強い系統(耐性菌)が残り繁殖することが知られています。

薬剤の「系統」とは、有効成分を化学的に分けるグループのことで、例えば、殺菌剤では、「ストロビルリン系、有機塩素系、ベンゾイミダゾール系、フェニルアミド系」などがあり、製品名が違っても系統は同じという場合があるので注意が必要です。

【薬剤の系統】

薬剤の系統

耐性菌発達を回避するポイントは3つ


では、どのようにすれば耐性菌の発達を回避できるのでしょうか。そのポイントは大きく分けて3つあります。

1. 薬剤の使用回数を減らす

まず一つ目は、「薬剤の使用回数を減らす」こと。ハウスや圃場まわりの除草、罹病残渣の適切な処理、圃場やハウスの衛生管理などによって病気が発生しにくい環境づくりをすることが薬剤の使用回数を減らす第一歩です。

また、症状が出てからの対処防除だと病気が広がりやすいのですが、常に予防防除を心がけていれば、病気を未然に防ぎ、結果的に薬剤の散布回数を減らすことにつながります。

【発生前からの予防防除】

発生前からの予防防除

【病気が発生しにくい環境づくり】

病気が発生しにくい環境づくり

2. 系統の異なる薬剤でのローテーション防除

二つ目は、「系統の異なる薬剤でのローテーション防除」です。『よく効くから』といって同じ薬剤ばかり連用したり、名前が違う薬剤でローテーションしているつもりでも、薬剤の系統が同じなら耐性菌発達リスクが高まります。

系統名をよく確認して、異なる系統の薬剤でローテーションを組むことが大事です。

【系統の異なる薬剤でのローテーション防除】

系統の異なる薬剤でのローテーション防除

系統の異なる成分を組み合わせた混合剤の活用

そして三つ目は「系統の異なる成分を組み合わせた混合剤の活用」です。系統の異なる2つ以上の成分を組み合わせた混合剤を活用することで、耐性菌の発達を抑制することができます。

【系統の異なる成分を組み合わせた混合剤の活用】

系統の異なる成分を組み合わせた混合剤の活用

日頃から「耐性菌」を意識して、的確な情報を入手したり、上記のポイントを実践し、上手な「耐性菌管理」に努めましょう。

出典:シンジェンタジャパン(株)発行「漫画で知ろう『耐性菌管理』」「野菜殺菌剤の上手な使い方」