ハダニ類の被害と生態、防除対策
数種類あるハダニ類(英名:Spider Mite)の中でもハダニ科のハダニ類は作物に加害する重要害虫です。ここではハダニ類の被害、発生形態、防除対策について、それぞれ解説していきます。
ハダニ科のハダニ類は農作物の重要害虫
植物寄生性のダニにはハダニ科、フシダニ科、ホコリダニ科、コナダニ科などがありますが、ハダニ科のハダニ類が最も農作物の重要害虫として知られています。 ハダニはクモの仲間で、成虫は8本の足をもっているので、6本の足を持つ昆虫とは容易に区別できます。
寄生する主なハダニ類は作物によって決まっており、りんごではナミハダニとリンゴハダニ、かんきつではミカンハダニ、お茶ではカンザワハダニ、野菜ではナミハダニとカンザワハダニが重要なハダニとなっています。しかし、他のハダニが加害して問題になることもあります。
なお、1960年代頃まで、ハダニ類はその体色で呼ばれていました。体色の赤いリンゴハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、赤色系のナミハダニはいずれもアカダニと呼ばれ、緑色系のナミハダニはアオダニあるいはシロダニともよばれていました。
【カンザワハダニ成虫】

【ミカンハダニ成虫】

【ナミハダニ(赤色系)】

【ナミハダニ(緑色系)】

ハダニ類の被害
ハダニ類が植物の葉に寄生して加害すると、葉緑粒が吸収され、加害された部分は白っぽい「カスリ状」となります。さらに被害が葉全体に進むと落葉果樹のなしやりんごでは「葉焼け」、柑橘類では「葉肉崩壊症」となり、落葉を誘発することがあります。
野菜などの一年作物では、葉の表面がカスリ状に抜けて白くなり、さらに被害が進むとクモが巣を張ったように株全体が白くなり、新葉の展開も止まり、衰弱して最後には枯れてしまいます。かんきつ類の果実が加害された場合には着色期では本来の鮮やかな橙色とならず、黄色で光沢のない果実となり商品価値がなくなります。
【ミカンハダニによるみかん果実の被害】

ハダニ類の発生生態
ハダニの発育経過は卵→幼虫→第1若虫→第2若虫と3回の脱皮をし、成虫になります。雌が第2若虫の時期になると雄が寄り添うようになり、脱皮を始めると直ちに交尾が始まります。雌成虫は交尾をしても、しなくても産卵しますが、無精卵は雄となるので、交尾をしない雌が産む卵はすべて雄となります。交尾をした雌はすべて雌を産むわけではなく、受精卵は雌となり、無精卵は雄となります。卵から成虫に発育するまでの発育期間は、温度によって左右されますが12(30℃)〜17日間(25℃)で年間の発生回数は10回-13回となります。
休眠しないナミハダニやミカンハダニでは気温が高ければ、1年中増殖することができます。
【ミカンハダニ静止期】

ハダニ類の防除対策
ハダニ類は体の大きさが約0.5mmと小さいため、その発生に気付くのは被害の症状が現れてからのことが多いようです。果樹園では道路沿いの樹から発生密度が高くなることが多く、ハウス栽培の作物では、入り口のドア付近や換気扇付近から発生が始まることが多く見られます。ハウス内や園地内の作物を良く見回り、カスリ状や白っぽくなった葉がみられたら、それらの葉の表裏をよく観察し、ハダニが寄生しているかどうかを確かめることが大切です。そして、寄生しているハダニの種類を確かめ、殺ダニ剤の種類を決めるようにしてください。
殺ダニ剤はその使用できる作物、ハダニの種類、使用濃度、安全使用基準や使用上の注意事項が容器や袋に書かれているので、その選択に当たってはハダニに対する防除効果とともに、天敵に対する影響なども考えて選択し、ダニ剤の特性を生かした使用方法で防除したいものです。
【ケナガカブリダニ】

【ハダニアザミウマ】

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シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問
古橋 嘉一