初年度のアビオスリーの効果は、100点満点中80点と高評価。莢付きの良さと、収量に確かな手応え。
3葉期の抜き取り調査で初期生育の違いを実感
「バイオスティミュラントの知識はありましたし、使った人の話を聞いたこともありました。でも、正直、本当に効果があるの?と、信用していませんでしたね(笑)」
宍戸真さんはそう豪快に笑います。良い結果を得られると耳にしても、「土地や気象条件によっても生育状況は異なるし、偶然なのでは?」と懐疑的だったそう。
疑問を持ちながらも、アビオスリーの試験に協力いただいた理由には、他の産地でビートによる試験で成果を上げたという報告を聞いたことがありました。
「しっかりとしたデータを見せてもらえた事で、これなら、だいずに使ってみてもいいかなと、思いました」と話します。
種子処理時や茎葉散布時に同時使用できる手軽さも、背中を押しました。試験に当たって欲しかったのは「目に見える結果」だったといいます。違いがよりわかるようにと、試験区を3つに分けて生育状況を比較しながら、試験栽培を行いました。
試験区1は種子処理(クルーザー処理)時、次に7/4に除草剤との混用の茎葉散布、さらに8/1には殺菌剤との混用の茎葉散布と合計3回アビオスリーを使用しました。試験区2は7/4の除草剤と8/1の殺菌剤との混用での茎葉散布2回、試験区3は8/1の殺菌剤との混用での茎葉散布1回のみです。圃場は皆に見てもらおうと地元の方もよく使う道路沿いに作りました。
「6月16日に行った3葉期の抜き取り調査で比べてみると、草丈や根の張り方に違いがありました。アビオスリー試験区は草丈が高く、細かい根がいっぱい出ていました。圃場で遠目で見ているときは生育状況にそれほど違いはないように思えましたが、抜いた株を比較すると『あ、確かに違うんだな』と思いましたね」
アビオスリーは種子の塗抹処理することで、初期生育が旺盛になることが期待できます。実際に株を抜き取って比較することで、その効果を実感いただけたようです。
莢付きがよく、3粒莢が圧倒的に多かった事に驚き!
違いがより明確だったのは、10月4日の収量調査のときでした。莢付きが試験区1と、試験区2、3ではあきらかな違いが見られました。さらに試験区1では3粒莢が圧倒的に多かったのも驚きだったと話します。
「以前の栽培方法は株間15cm、もしくは21cmでしたので、3粒莢が多く収穫できました。でも現在は株間7cmと密植が基本です。密植し播種量を多くして収穫量を増やすぶん、3粒莢はほとんど見られません。密植を選びながらかつ3粒莢を増やすことを目指していましたが、なかなか叶いませんでした。それがアビオスリー試験区でこれだけの差が出た事に驚かされました」
また収穫時にも「これは違う」と手応えを感じたそうです。収穫はコンバインで一気に刈り取りますが、これまでの経験でだいずがタンクに入る音を聞けば、収穫量や水分量まで推測できるといいます。アビオスリー試験区ではタンクにたくさんのだいずが入っていく大きな音が聞こえ「あ、これは、たくさん取れている」とすぐにわかったそうです。最終的な収量はまだ出ていませんが、アビオスリー試験区では確実に収量が多いという実感も得ました。
次年度は除草剤の薬害症状の軽減や早期回復などの試験も計画
「自然由来の資材は効果が出にくいという印象を持っていましたが、2023年の夏は稀に見る高温であったなか、これだけの成果が得られたのは良かったと思います。半信半疑で使ってみましたが、信じて良かったなという気持ちです(笑)。点数を付けると100点満点中、80点くらいの効果がありました」
宍戸さんはそう評価してくださいました。残りの20点は、除草剤の試験ができなかったのが課題として残ったためです。
「例年、広葉雑草対策に使用する薬剤の、だいずに対するダメージが大きいため、アビオスリーによって薬害症状の軽減や、回復がどこまでできるかを試しかったのです。しかし今年は広葉雑草が見られなかったので、除草剤そのものを使う必要がありませんでした。来年以降、ぜひこれを試験してみたいと思います。また、ばれいしょにも使ってみたいです」
温根別町では離農が増え、生産者の規模拡大が進んでいます。それに伴う機械投資のコストをできるだけおさえ、そのぶん個々の収益を上げようと、宍戸さんは有志による機械の共同利用組合を立ち上げました。将来的には会社組織にすることも念頭に置いています。宍戸さんは地域のリーダーとして新しい試みを取り入れながら、地域全体の効率化や省力化に取り組んでいます。
【宍戸真さん アビオスリー試験時のだいずの栽培暦】
- 5月18日 種子にアビオスリー塗布。種子処理(クルーザー処理)
- 5月20日播種、土壌処理(除草剤)
- 7月4日 除草剤、アビオスリー、殺菌剤を茎葉散布
- 8月1日 殺菌剤(レーバスフロアブル)とアビオスリーを茎葉散布
- 8月17日 殺虫剤
- 10月26日 収穫
宍戸真さん(北海道士別市温根別町)とJA北ひびき士別基幹支所 温根別支所生産資材係及川優也さん
農業大学校を卒業後、実家の後継者として就農。家族4人で経営し、2023年はだいず19ha、秋まき小麦18ha、春まき小麦6ha、小豆6ha、種子ばれいしょ1ha、生食用ばれいしょ3haのほか牧草を作付。
※掲載内容は取材当日のものです
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