赤かび病を抑え、新しい施肥体系で小麦の反収・製品率を改善。「こんなきれいな麦稈は初めて見た」と畜産家も絶賛 -ミラビスフロアブル-

体験レポート
JA北ひびき管内での小麦の収穫

北海道で小麦、だいずなどをメインに家族4人で営農するJA北ひびき管内の宍戸 真さん。反収は管内の平均を上回り、また、新たな防除体系によって美しい黄金色の穂を実現するなど、高品質な小麦づくりを実践されています。寒波に見舞われた2023年1月、現地を訪れその秘訣を伺いました。


反収は管内平均を上回り、製品率は96%を達成


農業大学校を卒業し、後継者として19年前に就農された宍戸さん。秋播小麦は“きたほなみ”、春播小麦は“春よ恋”を栽培されていらっしゃいます。JA北ひびき管内の”きたほなみ”の平均反収はそれほど高くなく、製品率も60%程度とのことですが、宍戸さんは以前よりこの平均反収の向上を課題として捉え、改善に向けてチャレンジをされてきました。その結果、昨年2022年の反収は製品で7.8俵、製品率は96%をマーク。どのような取り組みが功を奏したのでしょうか。

「地元の農業改良普及センターと一緒に施肥コントロールによる、“きたほなみ”の反収向上に取り組んできました。以前の施肥体系は、播種前に反あたり基肥を6kg、追肥として起生期に4~5kg、幼穂形成期と止葉期に2kgずつ、合計4回の窒素を施肥していたのですが、起生期の追肥が多すぎることが分かったので、思い切って起生期はゼロにしたんです」と宍戸さん。

この思い切った起生期の追肥スキップが、反収や製品率を改善する大きな要因となったようです。

【宍戸 真さん(中央)、JA北ひびき 士別基幹支所 温根別営業所 生産資材係 及川優也さん(右)、弊社札幌支店 瀧澤莉紗(左)】

宍戸 真さん(中央)、JA北ひびき 士別基幹支所 温根別営業所 生産資材係 及川優也さん(右)、弊社札幌支店 瀧澤莉紗(左)

 

起生期の追肥をやめ、幼穂形成期の有効茎数を900本程度に抑えて、反収向上を実現


同JA管内では、干ばつや長雨の影響もあり、年によっては製品率が50%を切ってしまうこともあるのだとか。収穫した小麦を乾燥させる際の代金を差し引くと赤字になるケースもあるのだそうです。本来、“きたほなみ”は反収の多い品種なので、そのポテンシャルを最大限に引き出してあげる必要があるとかねがね思っていたそうです。

「今までは越冬前茎数が1㎡あたり1400本で、起生期追肥後の幼穂形成期には茎数が2000本ぐらいありました。これだと、人間で言えば子供がたくさんできても、皆がガリガリにやせ細った不健全な子供に育ってしまうのと同じこと。今回、起生期の追肥をゼロにし、越冬前茎数は700~800本程度に抑え、幼穂形成期には有効茎数として900本くらいに落ち着かせました。通常より茎数が少ないので、5月半ばごろまでは元気のない小麦に見えるのですが、それ以降は順調に生育し、最終的には製品率96%という結果だったので、この方法がピタッとハマったなと実感しました」。

麦の施肥管理において、生育状況や気象条件に応じた適正な肥培管理が重要であることを再確認されたようです。

【収穫される宍戸さんの小麦】

収穫される宍戸さんの小麦


当たり前にしたくない雑菌による穂の黒ずみ、放置できない耐性菌管理


反収や製品率とともに、もう一つの課題として宍戸さんが取り組んできたのが、雑菌による穂の黒ずみの問題。販売先によっては見かけを重視されるケースも多く、黒ずんだ小麦は取引金額がダウンしてしまうこともよくあるのだそうです。管内の一部の生産者の間では『この地区では小麦が黒いのが当たり前。黒いのは麦がしっかり仕上がっている証拠』とさえ言われていたこともあり、その考えに以前から疑問を抱いていたのだと、宍戸さんはおっしゃいます。

雑菌による穂の黒ずみ低減も考え、宍戸さんが取り組んできた越冬後の小麦の病害防除体系は、『5~6葉期(赤さび病対策)』『止葉期(葉枯症対策)』『開花始期(赤かび病、葉枯症対策)』『開花期(赤かび病・赤さび病対策)』『収穫前』の合計5回の殺菌剤散布でした。そのような中、葉枯症が管内で問題になり始めた5年前から、『止葉期』・『開花始期』・『収穫前』にそれぞれ1回ずつチルト乳剤25を活用されていたそうです。ただ、耐性菌管理の観点で、チルト乳剤25の連用が気にかかっていたそうです。

そんなときに登場したのが新しい系統のSDHI剤であるミラビスフロアブル。早速2021年に試験散布することになりました。

【黄金色に輝き、充実した宍戸さんの小麦の穂】

黄金色に輝き、充実した宍戸さんの小麦の穂

 

ミラビスフロアブルで赤かび病を抑えて黄金色の穂に。


2021年、宍戸さんは“きたほなみ”の開花始期に、今までの他剤とチルト乳剤25の混用に替えて、ミラビスフロアブルを約2haの圃場で試験散布。

「ミラビスフロアブルが赤かび病のもととなる病原菌をしっかり抑えてくれるので、とにかく小麦の穂の仕上がりがきれいなんです。麦稈を買い取りに来た畜産農家の人がミラビスフロアブルを使った圃場の麦稈を見て、『こんな黄金色した、きれいな麦稈は初めて見た! 何をしたらこうなるの?』って驚いていました。通常は10aで麦稈のロールが1つできるんですが、その圃場は10aあたり2つロールができるほど麦稈の量も多かった」と宍戸さん。

また、「いつもなら小麦を刈り取っていると、コンバインのヘッダー部分とかキャビンのガラスが、すすけて真っ黒になるんです」とのことで、刈り取りの際には雑菌が原因で小麦の穂についた黒いすすのようなものが舞い上がり、苦労されていたようです。しかし、「ミラビスフロアブルを使った圃場では、黒いすすが付くこともなくコンバインがきれいなままでしたね」とその美穂効果に大変満足されていました。

参考:北海道の他圃場で実施したミラビスフロアブルの社内試験 
【明るい黄金色が広がるミラビスフロアブル散布区(上)・黒さを感じさせる慣行防除区(下)】 

参考:北海道の他圃場で実施したミラビスフロアブルの社内試験 ミラビスフロアブル散布区(上)と慣行防除区(下)

 

雨に強く効果が安定、2剤混用の手間と時間も省略


美穂効果のほかに、その耐雨性についても高く評価されています。

「今までの剤は散布した後に雨が降っちゃうと、成分が流れてしまって、穂が黒くなりがちでした。でもミラビスフロアブルは、雨に強くて効果が安定するので、散布した後に雨が降ってきても安心なんです。ローテーションの中のチルト乳剤25との相乗効果もあるのでは」と感じられているそうです。

つづけて、「以前は開花始期の防除で2剤混用していたのが、ミラビスフロアブルだけで済むようになって、混用の手間と時間が省けるようになりました。この手間と時間をお金に換算すれば、かなり大きなメリットと言えるんじゃないかな」。

【JA北ひびき 士別基幹支所 温根別営業所の中井康丈所長(左)と宍戸さん】

JA北ひびき 士別基幹支所 温根別営業所の中井康丈所長と

少水量散布へのチャレンジで、薬剤調製時間の節約を


また、2023年はミラビスフロアブルで反あたり25ℓの少水量散布にもチャレンジしてみたい、と宍戸さんはおっしゃいます。

「ブームスプレイヤーのタンクに水を汲むのにも10分ぐらい時間がかかる。しかも、それを10回、20回と繰り返さなきゃいけないのですが、水を汲んでいる最中に雨が降ってきてしまうと、作業が中断されてしまい、全体の防除作業が遅れてしまう。ノズルを少水量散布用に換えれば、反あたり25ℓの少量散布も可能になるので、水を汲む時間の節約にもなりますね」と期待感をのぞかせていらっしゃいました。

そして2023年の防除体系は、止葉期にアミスター20フロアブル、その10日後にチルト乳剤25、開花始期にミラビスフロアブル、開花期に他剤、収穫前の7月上旬にチルト乳剤25というローテーション防除を予定されているそうです。

【ミラビスフロアブル・チルト乳剤25を使った秋播小麦の防除スケジュール】

ミラビスフロアブル・チルト乳剤25を使った秋播小麦の防除スケジュール


「産地の小麦生産力の底上げを図り、自分だけではなく、みんなで収量や製品率を向上できるようにしたい。製品での反収10俵をめざします」と宍戸さん。現状に甘んじることのない向上心と若い力で、これからも産地を支え続けていかれることでしょう。

 

宍戸 真さん

 

 

 

 

 

 

 

宍戸 真(まこと)さん
ご両親、奥様とともに秋播小麦18ha、春播小麦6ha、だいず21ha、
小豆4.7haのほか、生食用ばれいしょ、牧草、えんばくを作付。
2022年よりお父様から経営委譲され、大黒柱として活躍。

※掲載内容は取材当時のものです。

 

関連製品

ミラビスフロアブル

チルト乳剤25

アミスター20フロアブル