ぶどうの病害について -晩腐病、灰色かび病、べと病-

病害虫・雑草コラム

ぶどうの病害である「晩腐病」、「灰色かび病」、「べと病」についてご紹介します。いずれの病害も5月~7月の降雨の多い時期に多く発生します。それぞれの発生原因、発生時期、防除方法を知り、効果的な防除に役立ててください。

ぶどうの晩腐病の特長と防除方法


ぶどうの晩腐病はほとんどの品種に発生し、ここ数年、多発して問題になっています。発病部位は主に果実ですが、花穂や葉に発病することもあります。花穂の発病は開花前に見られ、花蕾が褐変し、鮭肉色の分生子塊を生じます。葉には7月ごろから褐色不整形の病斑を形成し、分生子を生じます。果実では幼果に発病すると小黒点病斑を生じますが、これは着色期まで拡大しません。熟果での潜伏期間は3~4日で、腐敗型病斑を形成し、鮭肉色の分生子塊を生じます。病斑が果面全体に拡大すると果皮にしわが寄り、やがてミイラ果となります。

【成熟果の発病(果実が腐敗し、鮭肉色の小粒:胞子の塊を形成)】

成熟果の発病(果実が腐敗し、鮭肉色の小粒:胞子の塊を形成)

病原菌は結果母枝や巻きひげの組織内に菌糸の形で潜在して越冬しています。5月頃に分生子を形成して雨滴とともに分散し、ぶどう樹の各部位に達して侵入、感染します。6~7月に降雨が多いと一次感染量が多くなり、また、成熟期に降雨が多いと二次感染が助長され、激発します。病原菌の分生子の分散量は開花期から幼果期にかけて最も多く、また、幼果は非常に感染しやすいので、ここが防除の重点時期です。

本病はぶどう栽培の中でも、防除が困難な病気の一つですが、発生を抑えるには、発芽前の防除(休眠期)と開花前から落花後20日頃(果粒が小豆粒~大豆粒の大きさ)までの防除をタイミング良く実施することが大切です。

【花穂の発病(花蕾の褐変症状)】

花穂の発病(花蕾の褐変症状)

【葉の病斑(褐色、不整形の斑点を形成)】

葉の病斑(褐色、不整形の斑点を形成)

ぶどうの灰色かび病の特長と防除方法


ぶどうの灰色かび病は花穂、葉、幼果、熟果に発病し、病斑部に灰色のかびを生じます。開花前の花穂では小花穂が褐変し、花流れ症状を呈します。また穂軸に発病すると黒褐色に軟化腐敗します。幼果では花冠や花糸が付着した部位から褐変し、果粒全体が腐敗しますが、症状が軽い場合はサビ状になります。熟果では褐色に腐敗し、灰色のかびを密生します。特に裂果した場合に発病し易くなります。葉では褐色不整形の病斑を形成し、拡大するにつれ亀裂を生じて、脱落します。

病原菌は前年の被害残渣上で菌糸や菌核の形で越冬し、春に分生子を形成します。分生子は風や降雨によって分散し、若葉や花穂の傷口や組織の軟らかい部分から侵入し感染します。そこで、防除は、開花前から落花後10日頃までに重点的に行います。

【花穂(開花期)の発病(小花穂が褐変し、花流れ症状を示す)】

花穂(開花期)の発病(小花穂が褐変し、花流れ症状を示す)

【落花後7日頃の発病(幼果、穂軸、花冠が褐変)】

落花後7日頃の発病(幼果、穂軸、花冠が褐変)

【成熟果実の発病】

成熟果実の発病

ぶどうのべと病の特長と防除方法


ぶどうのべと病は欧州系品種やその交雑種が罹りやすく、これらの栽培面積が増加するにつれ、発生が多くなっています。葉や新梢、果実に発病します。葉では初め淡黄色で不整形の斑点が現われ(日光にすかすと、透き通って見える)、のちに褐変します。その4~5日後には葉裏に真っ白いかびを生じます。幼果では水浸状で褐色の病斑を形成し、やがて鉛色に乾固して脱粒します。

【葉の裏面に真っ白いカビを形成】

葉の裏面に真っ白いカビを形成

病原菌は地表面にある被害葉で越冬します。5月中~下旬に病原菌が降雨や水滴によって葉や幼果、新梢に伝搬し、ぶどうの各器官の気孔から侵入し、感染します。発病は6月初め頃から見られます。伝染は梅雨の頃が最も盛んであり、4~7日の潜伏期間で発病し、さらに風雨によって二次伝染が繰り返されます。

5~6月に降雨が多いと多発します。重点防除時期は5月から落花期で、この時期の防除がその後の発生を左右します。

秋田県果樹試験場
深谷 雅子

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