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鉄コーティング種子による湛水直播水稲の除草技術:「表面播種」における除草の2大ポイント

病害虫・雑草コラム

直播栽培の7割近くを占める湛水直播栽培。その中でも主流である鉄コーティング種子を使用した『表面播種』における除草の2大ポイントについてご紹介します。公益財団法人 日本植物調節剤研究協会 研究所 千葉支所の濱村支所長にお話をお聞きしました。

まず一つ目のポイント「除草剤の選び方」について具体的に教えていただけますか。


湛水直播の雑草要防除期間は、計算上播種後65~90日にもなり、移植栽培の40~50日に比べとても長いです。そのため、除草剤2~3剤を組み合わせた体系防除が基本となります。


地域や品種などの条件によっても異なりますが、一般的には、播種後の湛水期に前処理として初期剤を、稲1葉期以降の湛水期に後処理として初期一発処理剤や初・中期一発処理剤などを散布します。

その後、雑草の取りこぼしや発生が長引く場合には、中期剤や後期剤で後始末することになります。前処理での初期剤は抑草期間が長いものを選ぶと、後処理の除草剤選択に幅ができるので、地域や雑草発生状況にあわせて前処理剤と後処理剤の組合せを考えるようにしましょう。

「表面播種」は稲の芽や根と除草剤の接触頻度が高くなり薬害が生じやすくなるので、必ず除草剤の「使用時期」を厳守するようにします。

【表面播種での水管理と除草剤処理時期】

表面播種での水管理と除草剤処理時期

 

二つ目のポイント「除草剤の使用時期」について詳しく教えてください。


湛水直播の表面播種では、除草剤の使用時期が重要なポイントになります。

除草剤のラベルを見ると、「使用時期」という欄がありますが、この使用時期にある「処理早限」と「処理晩限」を守ることが大切で、「早限」は薬害に影響し、「晩限」は除草効果に影響します。

例えば、除草剤ラベルの使用時期が「稲1葉期~ノビエ2.5葉期」だとすると、処理の早限は"稲の1葉期"、晩限は"ノビエの2.5葉期"になり、端的に言うと『稲が1葉期になる以前に処理すると薬害が生じ、ノビエの葉齢が2.5葉期を超えると十分に抑草できない』ということになります。

湛水直播では、雑草と稲が一斉に出芽・生育を競うため、稲よりも先にヒエなどの雑草が生長することが多く、稲の生長とノビエの葉齢を観察しながら、使用時期の範囲に収まるタイミングを見極めて処理する必要があるわけです。

【農薬ラベルの読み方(使用時期について)】

農薬ラベルの読み方(使用時期について)

 

『除草剤の処理早限はすべて、稲1葉期』だと誤解している生産者の方が多いそうですね。


稲1葉期を処理早限とする除草剤が最も多いのは確かですが、それ以外にも、「播種直後」「稲出芽始」「稲出芽揃」などを早限とする、"稲1葉期以前に処理できる除草剤"もあるので、そういった意味では選択肢が広がるのではないでしょうか。

「処理早限」も「処理晩限」も、葉齢の数え方がポイントだとお聞きしましたが、具体的に教えていただけますか。


"処理早限の稲葉齢は平均"で数え、"処理晩限のノビエ葉齢は最大"で数えます。早限の場合、例えば「稲1葉期」だとすると、目標とする苗立ち数が確保できた時点で葉齢を数え、その平均が1葉となった時期を指します。つまり、発生している稲には2葉に達したものも、1葉未満のものも含まれます。関東の普通期栽培で数年間試した事例では、2葉目が出ている稲が半分あれば、平均は概ね1葉期になりました。地域、作期や稲品種によっても異なると思いますので、数年経験しながら感覚をつかむ必要があるかもしれませんね。

また、目標苗立ち数に対する割合が、20%のときは「稲出芽始期」、50%のときは「稲出芽期」、90%のときは「稲出芽揃期」とそれぞれ判断します。晩限の場合は、ノビエの葉齢が最大葉齢のものを指標とするので、例えば晩限が「ノビエ2.5葉期」だとすると、その圃場の中でいちばん大きいノビエの葉齢が2.5葉期であれば、そのタイミングを除草剤の晩限とします。

葉齢を数える際の注意点ですが、「稲」は、不完全葉の次に展開する葉身を持つ葉を第1葉と数えますが、「ノビエ」は、不完全葉がないので鞘葉の次に展開する葉身を持つ葉を第1葉と数えるようにしてください。
前述しましたが、除草剤はこの「早限」より少しでも早く処理すると薬害が生じやすく、「晩限」を超えるノビエがあると取りこぼしが生じる可能性が高くなるので、十分な注意が必要です。

【稲葉齢、ノビエ葉齢の数え方】

稲葉齢、ノビエ葉齢の数え方

 

これから湛水直播栽培をはじめようという方にアドバイスをお願いいたします。


鉄コーティング種子の表面播種では、播種時の土壌がほどよい固さになるようにするのがポイントです。代かき後に水を落とすタイミングによって、土の固さが変わり、また、地域や圃場によっても異なるので、初めの2~3年はベストタイミングを模索する必要があります。

注意をしていただきたいのは「倒伏」です。湛水直播は、移植栽培と比べて倒伏しやすく、特に表面播種では倒伏リスクが高いので、稲1葉期までにしっかりとした水管理を行なって、根を十分に張らせておくようにしましょう。また、飼料稲や米粉用稲などの栽培面積が増え、それら品種に脱粒性や種子の休眠性があると、翌年の栽培品種に混じって、雑草イネ化することが考えられます。

一般的に「雑草イネ」は、野生化した赤米を指しますが、栽培を目的とした品種以外という点では同じ扱いかもしれませんね。水稲除草剤は、できるだけ稲には薬害がないようにつくられており、直播栽培での雑草イネ防除は現時点では有効な手段がないといえます。発生地域では移植栽培に切り替えるよう指導しているようです。

経営規模拡大を目指す方々で、興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

濱村謙史朗支所長

東京農業大学、千葉大学-大学院を卒業後、日本植物調節剤研究協会で水稲の雑草防除、除草剤の研究について従事。
現在は各地で直播栽培の雑草防除についての講演も行っている。

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