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殺虫剤の効果的な散布方法-キャベツにおける総合的病害虫管理(IPM)-

病害虫・雑草コラム

野菜は水稲、果樹と比較すると、品目・作型とも様々な種類があり、発生する病害虫も地域・年次・栽培時期により大きく異なるため、総合的病害虫管理(IPM)の手法も環境条件、栽培条件、品目に合わせた手法が求められます。高冷地の露地栽培キャベツを例にして、害虫管理を中心とした主なIPM実践技術について解説します。

健全苗の育成には、物理的防除手段で、施設やほ場での害虫の発生を抑制する


健全なキャベツを育成するには、まずは、育苗の際に施設やほ場を物理的防除手段によって、害虫密度の上昇を遅らせ、苗に発生する害虫の密度を少なくすることから始めます。害虫が発生している苗を本圃に定植してしまうと、必然的にほ場の害虫密度は上昇してしまうのです。

施設育苗の場合は、施設開口部の防除ネット被覆、アルミ蒸着テープなどの光反射資材の設備、黄色または青色粘着テープの展張、黄色光などの利用が効果的です。露地育苗では防虫ネットによるトンネルがけ、光反射資材の利用などで対応をすると良いでしょう。これらを単独あるいは複数利用することにより、育苗施設内への害虫侵入や、苗での害虫発生を抑制できます。

地域全体で性フェロモン剤を使用し、交信かく乱による害虫の発生密度抑制を図る


ほ場が広範囲に広がっている場合は、地域全体でフェロモン剤を使用し、交信かく乱によって害虫の発生密度抑制を図ることができます。コナガを対象として交信かく乱を行う場合は3ha以上、オオタバコガ、ヨトウガ、タマナギンウワバなどの大型チョウ目害虫を対象とした交信かく乱を行う場合は10ha以上の場所に、性フェロモン剤を処理すると、地域全体の対象害虫の交尾が抑制されます。その結果、受精卵は産卵されなくなるため次世代の密度が抑制されるのです。

【畦間に設置された性フェロモン剤】

畦間に設置された性フェロモン剤

 

狭い範囲でのフェロモン剤の処理は、エリア内での交尾は抑制されますが、エリア外で交尾した雌成虫が飛来して産卵するため、次世代の密度抑制には結びつきません。また、交信かく乱による密度抑制は、害虫の発生密度が上昇してから実施しても効果が得にくいので、例年対象害虫が発生し始める時期を考慮して、低密度の時期から性フェロモン剤の処理を始める必要があります。

定植期に農薬を施用し、少量の薬剤でその後の病害虫の発生を有効に抑制する


定植期を前に、セル成型育苗期後半の粒剤の株元処理あるいは液剤のセルトレイ灌注処理、定植時の粒剤の植穴土壌混和のいずれかを実施します。これによって、定植から1ヶ月前後の害虫発生密度を抑制でき、殺虫剤の成育期散布を削減できます。

小規模での栽培なら、べたがけ資材を利用し、害虫による産卵を回避することも可能です。ただし、べたがけを行うと、内部の温度が上昇して加湿になりやすく、病害発生が助長されるので、気温が高い季節には温度や湿度が上昇しにくい資材を使用する必要があります。

【はくさい畑でのべたがけ資材活用】

はくさい畑でのべたがけ資材活用

 

病害虫発生予察情報を有効に活用


病害虫防除所が発表する発生予察情報を積極的に利用していきましょう。害虫防除には、いまどんな種類の害虫がどのくらい発生しているかの発生予察が重要となります。フェロモントラップなどを用いて地域で予察を行っている場合には、その情報を入手することが必須です。ただし、性フェロモン剤による交信かく乱を行っていると、地域全体に性フェロモン成分が充満しているため、フェロモントラップによる発生予察はできません。

キャベツ栽培では、結球始期頃になると、外葉が大きく繁茂します。その時期にはほ場内部に入ることが不可能となりますので、圃場を見守り、病害虫の発生や被害を把握すると共に、気象予報などを考慮して防除の要否を判断することも重要です。

すべての害虫を確認することは困難ですが、たとえばダイコンアブラムシがキャベツに発生した場合、小さな段階から葉の奇形と脱色を引き起こします。こういった症状は圃場外からでも確認可能なので、症状が観察され始めたら、ただちに殺虫剤を散布することで的確な防除ができます。 また、収穫が終わった外葉などの残渣の片付けは後回しになりがちで、害虫も発育・増殖が進み、発生源となる場合があります。収穫作業終了後のほ場の片付けも速やかに行いましょう。