春夏期の樹勢を落とさずワンランク上のトマトを収穫。 強樹勢台木で収量が10%向上。春夏期の樹勢を落とさずワンランク上のトマトを収穫。JA豊橋トマト部会の彦坂幸志さん 年間に、大玉トマト8千トン、ミニトマト4千300トンを産出する、水耕栽培トマトの先進地JA豊橋。管内の生産者の6割近くが水耕栽培を導入しています。同JA営農部営農指導課の伊藤政之課長補佐、同JAトマト部会の彦坂幸志さんと小林信さんにお聞きしました。 JA豊橋トマト部会の彦坂幸志さん(写真前列左)とスタッフの皆さん まずJA豊橋のトマト生産の概要について教えてください 伊藤課長補佐トマト部会は部会員165名、作付52ha、品種は「りんか409」がメインで、ミニトマト部会は135名、40ha、「CF小鈴」「小鈴SP」が中心です。大玉トマトもミニトマトも、8月上旬から下旬まで定植、10月上旬から翌年7月上旬まで収穫が続きます。 ミニトマト「小鈴SP」 シンジェンタの台木品種「アーノルド」を採用した経緯についてはいかがですか。 樋口課長まず2年前の夏に、4名の生産者で試験栽培を開始。りんか409や調理用トマトの台木として定植しました。一般の台木は定植翌年の4月から7月にかけて、樹勢が落ちて小玉傾向になるのですが、アーノルドを使用したトマトは4月から7月の樹勢が落ちず、年間収量も従来の台木より10%ほど向上が見られました。とても良好な結果が得られたので、このタイミングをチャンスととらえ、昨年はミニトマトと調理用トマトにおいて36名の生産者、合計8haの圃場で本格的に導入しました。まだ、収量の集計が出ていませんが、10%増の期待をしているところです。今年の夏からは、さらに導入面積を増やし、おおむね10haほどで使用される予定です。 大玉トマト「りんか409」 「アーノルド」を使用したトマトの栽培ポイントは何ですか。 伊藤課長補佐アーノルドは、今まで日本になかった強樹勢台木なので、定植後45~60日間、8月から10月中旬ぐらいまでの初期生育コントロールが大事です。トマトの状況を観察しながら、液肥や水分は控えめに調整しないと秋に過繁茂を起こしやすいので、生産者の腕の見せ所なんです。5、6月になると収穫ピッチが早くなり、通常の台木では小玉傾向になりますが、アーノルドはこの時期も玉伸びがいいので作業効率がいい。その時期、トマトの価格は低めに推移する傾向にあるので、品質の高いワンランク上の大玉トマトを出荷するために、アーノルドを役立てようと思います。 ヤシ殻培地に植えられたアーノルド子 実際に「アーノルド」を使用してみて、どのようなメリットを感じましたか。 彦坂さんうちは去年から、自根栽培だったりんか409と従来台木だった調理用トマトにそれぞれアーノルドを使ってます。6~7月は小玉傾向になり、生理障害の尻腐れの発生も多かったのですが、アーノルドはトマトの木が太く、春夏時期も小玉にならず尻腐れもあまり発生しませんでした。今年は全量アーノルドに切り替えるつもりです。小林さん去年からミニトマトの小鈴SPにアーノルドを使っています。従来の台木と比較して、葉が大きく、芽先が太い。木の生育が旺盛です。去年の定植後の初期生育で肥料濃度調整を抑えすぎた影響で、今年は小玉傾向でしたが、今年8月に定植する分は上手に調整したいと思います。 JA豊橋ミニトマト部会の小林 信さん ─今後は、トマトづくりでどのようなことに取り組まれる予定ですか。 伊藤課長補佐付加価値の高いトマトづくりに取り組んでいきます。現在、当JA出荷のトマトは糖度別に低い順から「通常品」「愛(めぐみ)」「美」「麗」の4段階に分けており、特に最高級品の「麗」は糖度が9度以上のトマトを厳選。野菜ソムリエサミット2014で大賞を受賞するなど高い評価をいただいています。今後は、通常品以上の割合をもっと増やし、産地ブランド向上に貢献していきたいと思います。 野菜ソムリエサミット2014で大賞を受賞した「麗」 製品体験レポート一覧