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消費税インボイス制度導入による農業者への影響について

インボイス制度の概要

インボイスとはどのような制度なのでしょうか。また、課税事業者、免税事業者にとってどのような影響があるのでしょうか。前回に続き(一社)農業利益創造研究所理事長で、農学博士の平石武さんに解説していただきました。

消費税の計算や申告に必要なインボイス制度とは

2023年 10月1日から、請求書や領収書は「適格請求書(以下、インボイス)」にしなければなりません。
インボイスは今までの請求書と何が違うのでしょうか。
大きな違いはすべての取引時に、インボイス(領収書でも可)を発行しなければならない点です。先頭がTで13桁の数字、さらに税率を10%分と8%分を明確に分けて明示しなければならないことがルールです。

適格請求書

消費税の計算や申告には、取引先から交付されたインボイスが必ず必要となります。これがないと、課税仕入税額の控除を受けられなくなります。仮に税務調査の対象になると、このインボイスの突き合わせをし、もし不備があれば消費税の追徴課税をされることになるでしょう。

消費税課税業者は「適格請求書発行事業者の登録申請手続」を行ない、登録番号を発行されなければなりません。この申請は2023年3月31日までに行うこととされています。

インボイスを発行できない免税事業者にとってのデメリット

インボイスを発行できるのは、消費税課税事業者のみです。ここがポイントです。免税事業者はインボイスを発行できません。インボイス制度が導入されると、免税事業者が最も困るのは、原則課税事業者との取引ができなくなるかもしれない点です。

図のように原則課税事業者(販売元)のBさんは、免税事業者(仕入先)のAさんから税込み86円で仕入れた農産物をCさんに108円で販売したとします。Bさんはこれまでは8円ー6円=2円の消費税を納税してきました。しかし今後インボイスを発行していないAさんからは仕入れても仕入税額控除できませんので、Bさんは8円の消費税を納税しなければなりません。控除できない為、Aさんからは仕入れることに負担が生じ、今後は取引を見直す可能性があるのです。

インボイス制度の概要

農業者が買い手の場合のインボイス

農業者が課税事業者の販売店から農薬を買う場合、原則課税事業者の仕入れ税額控除は関係ありません。簡易課税事業者はみなし仕入れ率で計算するのでこちらも意識しなくても問題ありません。免税事業者は元々消費税の申告をしていませんので関係ありません。

■農業者が「買い手」の場合

農業者が「買い手」の場合

農業者が売り手の場合のインボイス

農業者が売り手の場合、原則課税事業者や簡易課税事業者は、インボイスを発行できるので、取引に問題はありません。しかし免税事業者は仕入税額控除ができないため、原則課税の会社にインボイスを発行できません。その分値下げを要求されたり、取引停止されたりすることも考えられます。その結果、免税事業者はインボイスが関係ない簡易課税事業者や免税事業者に販売するしかなくなります。

■農業者が「売り手」の場合

農業者が「売り手」の場合

農業におけるインボイスの例外や特例


インボイスには例外や農協特例、卸売市場特例、媒介者特例といった特例があります。その点について紹介しましょう。

交付義務の免除

インボイスの交付が困難な取引は、交付が免除されています。バスや電車移動による少額の交通費や自動販売機などでの販売が対象で、3万円未満ならインボイスがあるとみなして交付の義務がありません。ほかに下記の取引で交付義務が免除されます。

●農協特例

農協特例は、生産者の農産物を農協に委託販売した場合は、交付義務が免除されるというものです。これは農協が出荷された農産物を混ぜて販売しているため、農業者の特定が難しための特例です。たとえば、米。複数の農業者が米を農協が一括で買い取り、売った場合、その米が課税事業者や免税事業者かの区別をすることができません。そのためインボイスを発行しなくてもよいという特例になりました。

■農協特例

農協特例

●卸売市場特例

生産者の農産物が卸売市場を通した販売の場合も同様です。農業者が市場に出荷した段階では値段が決まっていないため、インボイスが発行できません。市場が代わりにインボイスを発行します。

■卸売市場特例

卸売市場特例

●媒介者特例方式

課税事業者である農業者が直売所に委託して販売した場合は、農業者が個別にお客様へインボイスを発行することはできません。直売所は、価格が後で決まるような無条件委託ではないためです。そのため直売所側が代わりに発行する「媒介者特例」があります。

しかしここで問題となるのが、課税事業者と免税事業者の両方の商品を直売所が販売する場合、領収書(レシート)に商品ごとにインボイスか否かを明記しなければならないことです。煩雑な処理になり、対応するかどうかは直売所次第であるものの、免税事業者の農産物を販売することを敬遠されるかもしれません。

インボイス制度によって免税事業者は、直売所や一般的な小売・卸売会社、飲食店との取引を敬遠され、JAや市場へ出荷、消費者への直接販売、または簡易課税事業者との取引しかできなくなする可能性があるのです。

■媒介者特例方式(農産物直売所での販売)

媒介者特例方式(農産物直売所での販売)

農作業受委託、機械等の借入

農作業受委託、機械の借入は、課税事業者と取引する場合はインボイスが発行できるので問題ありません。しかし、免税事業者はインボイスが発行できないので、原則課税事業者とは取引が難しくなります。

■農作業受委託・機械等の借入

農作業受委託・機械等の借入

任意組合との取引

任意組合との取引も、組合員全員が課税事業者であれば問題はありませんが、その中に1人でも免税事業者がいるとインボイスが発行できないので取引に支障が出てしまいます。

■任意組合との取引 (育苗センターから苗を購入)

任意組合との取引(育苗センターから苗を購入)

経過措置


23年10月からインボイス制度が始まりますが、急に対応できない事業者がいることも考慮され、猶予期間の特例として、買い手側に「一定期間の税額計算の特例」が措置されます。
課税事業者が免税事業者から540万円(消費税40万)の農産物を仕入れたとして今までは、40万円分 消費税を控除できていました。インボイス制度が導入されると、経過措置が適用され以下のような計算となります。

・最初の3年間はインボイスが無くても80%控除可能
→32万円分控除可能 (8万円の損)
・次の3年間はインボイスが無くても50%控除可能
→20万円分控除可能 (20万円の損)
・それ以降はインボイスがなければ控除できない
→控除ゼロ (40万円 損)

立場別(農業者)対応まとめ皆さんそれぞれの状況が異なり、必要な対応も異なります。下記に立場別の対応をまとめます。

立場別(農業者)対応まとめ

適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の申請


適格請求書発行事業者になるためには申請書を作成し、①所轄の税務署へ提出するもしくは②納税地を管轄する「インボイス登録センター」へ郵送、③e-Taxで提出のいずれかで申請を行います。申請すると登録番号が発行され、2023年10月1日以降は消費税課税業者となり、消費税の申告が必要です。

申請を行うと自動的に原則課税の課税事業者になりますが、もし課税売上が5,000万円以下なら、「簡易課税制度」を選択することができますますので、その場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を作成し税務署に提出しなければなりません。

詳細は国税庁ホームページを参照してください。

インボイス制度にも対応のソリマチの「みんなのインボイス」で申請書を簡単に作成できます。

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