植え付け時のアビオスリーの使用で、萌芽の早さに明確な違い 大きく粒玉の揃ったばれいしょも収穫でき、効果を実感
町の中心を一級河川、常呂川が流れる訓子府町。上杉隆博さんは常呂川の南に位置する地域で、約50haの圃場を経営しています。ばれいしょの栽培は、約10ha。2023年はそのうち1haをアビオスリー試験区に、1.8haを慣行区として、試験栽培に協力していただきました。
栽培しているばれいしょは、すべて種いもです。種いもはウイルス病や細菌病に感染していたり、生育不良があったりすると価値が失われるため、栽培期間中に国による抜き取り検査圃場検疫が2回、さらに地元JAと生産者組織 による自主検査が35回行なわれるなど、厳しい基準があります。栽培中はウイルスや細菌を媒介するアブラムシがついていないか、株に異変はないかなどを見つけるため、広い圃場を歩いて回り1株1株をていねいに確認しているそうです。
「目指しているのは無病均質。病気がなく、質がいいや異形株がなく生育の揃ったものを作ることです。種イモ種いもの生産者は、これを合い言葉のようにしており、暇さえあれば圃場を見に行きます。病気に感染している株は葉の色が違うのです。色が薄く、太陽にかざすと透けて見えます。それを見つけるのが種イモ種いも栽培の大切な作業です」
そうはいっても、10haもの圃場で1株1株を確認しながら何度も歩いて見回るのは、大変な作業なのでは?とたずねると、
「きっと大変なのだろうと思いますが、就農以来、普通にやっていること。なので、大変かどうかはわかりません(笑)」
そんな風に飄々と話されるところに、真摯に栽培に取り組んできた上杉さんのお人柄がにじみます。
初期の使用でアビオスリー処理区では、無処理区より約3日早く萌芽
アビオスリーの試験栽培にご協力いただいたのも、少しでも品質の良いばれいしょを生産したいという思いからでした。使用は2回。1回目の処理は植え付け時のインファロー処理の際に、アクタラ顆粒水溶剤、アミスター20フロアブルとの3種混用で、2回目は7月5日の茎葉散布時に殺虫剤との混用で使用しました。
「アビオスリーは、さらっとしていて使いやすいのがいいですね。混用もでき、使い終ったボトルの処理も簡単で、手間がかからない。それが本当に助かります」
上杉さんはこれまでも別のバイオスティミュラント製品を、いくつか使ってきました。どんな使い方が最も効果があるのかを、試行錯誤をしてきたそうです。
「まだまだ勉強中なのですが、いくつかの製品を使用して感じるのは、バイオスティミュラントはタイミングが大切で、早い段階で処理した方が良い結果が得られるのではないかという点です」
アビオスリーも播種時のインファロー処理の際に使用したことで、初期段階で無処理区との生育の違いが確認できたといいます。
「萌芽期の萌芽の早さに違いがありました。体感としてはアビオスリー処理区は、無処理区と比べ、3日くらい早かったです。萌芽が早いということは、地下茎も生育していますから、ストロンというわき芽匍匐茎の出芽も早くなります。本数もおそらく増えているでしょう。ストロンの先にばれいしょがつくられますので、ストロンが増えればばれいしょの玉数も増えますし、それによって収量が増えるだろうと予想できました」
平均重量と平均個数も、アビオスリー処理区が上回る
実際に7月28日に抜き取り調査では、慣行区の1株当たりのいも数が平均9.2個、合計重量が708.8gであったのに対し、アビオスリー処理区は1株あたりのいも数が15.2個、合計重量816gと、処理区の方が優れていたという結果が得られました。
「重さやばれいしょの数だけではなく、アビオスリー処理区の方が玉揃いで品質も高いものが育っていることも実感できました。最終的な収量は出ていませんが、今後も使っていきたいと思える良い結果が得られました」上杉さんはそう評価してくださいました。
種いもは栽培に手間がかかり、基準が厳しいこともあり、生産者は年々減っているといいます。種いもの生産者がもっと増えてほしいが、なかなか難しいと上杉さんは話します。
「種いもは誰でもできる栽培ではないけれど、私は絶対にやめません。誰でもできることでないから、自分がやる!と思っています。やめるのは農家をたたむとき。これからも質の高い種いもを作り続けます」
静かに、しかし熱く、上杉さんは語ってくれました。
【上杉隆博さん アビオスリー試験時のばれいしょ栽培暦】
- 3月下旬~4月下旬 浴光催芽(育芽処理)
- 4月下旬~5月5日頃 植え付け インファロー処理。アクタラ顆粒水溶剤、アミスター20フロアブル、アビオスリーの3種混用。
- 播種後、早期培土、土壌処理。その後、定期的な防除を通算で10回程度行う。
- 6月20日~着花
- 7月5日 茎葉散布時にアビオスリーを混用
- 8月25日~9月下旬 収穫
上杉隆博さん(北海道常呂郡訓子府町)
20歳で就農。ご両親と奥様の4人での家族経営。種いも栽培はご両親の代からの“家業”とのこと。2023年は、ばれいしょ10ha、秋まき小麦8ha、春まき小麦11ha、だいず16haを栽培。