病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
夏に自家受粉し種子をつけ、確実に次世代を残す
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スミレの仲間

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写真(春の花壇を彩る三色すみれ)

写真1:春の花壇を彩る三色すみれ

スミレはすみれ科スミレ属の春を代表する草花です。スミレは世界中に約16属800種が生育していて、日本にも多くの野生種が自生しています。主なものだけでも30種以上で、亜種などを含めるとさらに多くなります。最近は品種改良と栽培方法などの工夫で、関東以西では真冬でも色とりどりのパンジーの花を楽しめるようになりました。

写真(畔に生育するタチツボスミレ)

写真2:畔に生育するタチツボスミレ

パンジーは園芸品種ですが、野生のスミレもなかなか趣があり古来より親しまれてきました。在来の野生種は多くが山地や林床などの比較的湿潤な場所を好み、可愛いらしい野草というイメージですが、中には雑草性の強いものもあります。その中で最も一般的なのはスミレ(Viola mandshurica )、タチツボスミレ(Viola grypoceras )、ツボスミレ(Viola verecunda )などで、北海道から九州・沖縄の樹園地、道端、空地、耕地周辺などで見ることができます。

写真(入水前の水田のスミレ)

写真3:入水前の水田のスミレ

ほとんどのスミレの仲間は宿根性の多年生で、花は典型的な虫媒花の構造をもっています。花は3〜5月ごろに根もとから花茎をだして咲き、広卵型の葉も愛嬌があります。また特徴的なのは、愛くるしい花とは別に夏になると蕾のうちに自家受粉して種子をつける閉鎖花というもう一つの花をつけることです。虫が花粉を運んでくれなくても確実に次世代を残すことができるわけで、雑草として生きるのにはより都合がいいのかもしれません。

写真(帰化種のニオイスミレ)

写真4:帰化種のニオイスミレ

ただ近年樹園地などではこのスミレやタチツボスミレの数が減ってきたように感じられます。かつて雑草学の神様、笠原先生が1940年代に調べたときにはスミレの仲間は立派な雑草だったのですが、近年の調査ではその出現頻度は減っています。その原因は定かではありませんが、一つは除草管理方法の変化が起因しているのではないでしょうか。1940年代の除草方法は主に刈取りで、除草剤は殆ど使われていませんでした。一概には言えませんが刈取りは植物の地際から下の部分は残すのでスミレのような小型の多年生にとっては生き残るのに比較的有利であると考えられます。同じように近年その発生が少なくなった樹園地の雑草種には小型の多年生が少なくありません。

写真(半自生状態の園芸種ビオラ)

写真5:半自生状態の園芸種ビオラ

一方で近年の雑草防除はいわゆる非選択性の茎葉処理剤の利用が普及し、特に移行性を有して植物の地下部まで枯らすことができるグリホサート系除草剤の利用が極端に増加してきています。一つの薬剤を極端に頼って防除を続けると、その結果薬剤に比較的効き易い小型多年生が姿を消し、特定の難防除雑草が優先してくるといった事例も報告されています。このような樹園地では、かつて我々が愛した美しい景観は見ることができず、何か寂しい気がします。逆に除草剤をあまり使用しない都会の緑道などに元気なスミレの姿を見ることができるのはなんとも皮肉ではないでしょうか。雑草を一網打尽に防除するという今日の雑草防除は私たちの心の奥底にある原風景をなくしていっているのではないでしょうか。

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 除草剤開発部
中谷 英夫

2005年4月20日掲載

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