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第53話 お茶の炭疽病
今年も新茶のシーズンの到来です。文部省唱歌の「茶摘み」のフレーズに「あれに見えるは 茶摘みじゃないか あかねだすきに 菅(すげ)の笠(かさ)」とあります。新芽が萌ゆる茶畑で、一芽一芽丁寧に手で茶を摘み取る風景が目に浮かびますが、現在ではこのような風景を見ることは少なくなりました。茶摘みは機械化が進み、可搬型摘採機と呼ばれる二人用の茶摘み機や、大規模な茶園では人が乗って操作する乗用型摘採機が茶畑で活躍しています。ちなみに乗用型摘採機の色はなぜか赤色が多いのですが、茶娘の'あかねだすき'にちなんでいるのかもしれません。さて、今回は全国で発生し、茶の最重要病害に位置づけられている炭疽病について解説します。
茶の炭疽病はDiscula theae-sinensis(ディスキュラ テアエシネンシス)と言うカビ一種による病害です。本菌は以前まで一般的な炭疽病菌として知られるColletotrichum(コレトトリクム)属に含まれていましたが、遺伝子に基づいた系統解析から、Colletotrichum属のグループとはかなり遠縁で、むしろDiscula属のグループに包括されることが明らかとなり、最近Colletotrichum属からDiscula属に移されました。
茶の炭疽病は葉にのみ発生します。まず、一本の毛茸(もうじ:茶葉の裏に生えている毛のような組織)基部を中心に最初0.2〜0.5mm程度の淡褐色小斑点を形成します。その後小斑点を起点に周囲の葉脈の褐変が進すむと次第に葉身が壊死し、円形または不整形の赤褐色の大型病斑となり、病斑上には褐色〜暗褐色の小粒点(分生子層)を多数生じます。病原菌は前茶期の病斑上に形成された分生子が雨滴の飛沫で分散し、当期新芽の新葉裏面の毛茸から感染します。感染から大型病斑を形成するまでに20日前後を要するため、収穫期までに明瞭な病斑を生じることは少なく、収穫される新芽に対し直接的な被害はほとんどありません。しかし、摘採残葉や最終摘採後に生育する新梢に多発すると、甚だしい落葉により樹勢が衰弱し、以後の新芽生育が不良となります。防除は主な感染期である萌芽期〜3葉期頃までに有効薬剤を1〜2回散布しますが、生育中の茶芽は3〜4日で展葉するため保護効果主体の殺菌剤の残効は4〜5日程です。一方、治療効果のあるDMI剤(EBI剤とも言われる)の多くは、感染から初期症状である小斑点が生じる前まで有効です。萌芽期頃に保護殺菌剤を使用し、その7〜10日後にDMI剤を使用すれば、ほぼ完全に発生を抑制することができます。
2006年5月18日掲載
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