 | 写真1:カミキリムシの 加害により衰弱した樹 | カミキリムシは漢字で「髪切り虫」と書きますので、あのするどい口はヒトの髪を切ることもできるようです。天牛やテッポウムシとも呼ばれていますが、天牛は中国語での呼び名です。わが国には約800種のカミキリムシが知られており、蝶についで愛好者の多い昆虫となっています。
ゴマダラカミキリムシは柑橘類の害虫として知られている害虫で、クワやイチジク、リンゴ、ナシ、バラ、ヤナギ等多くの植物に寄生し加害します。一匹のカミキリムシが若いミカン樹に食い込んだだけで樹が枯死したり、衰弱する(写真1)こともありますので、一匹の虫が与える被害としては最大級の害虫と言えるでしょう。 ここでは、柑橘類での生態と防除について、述べることにします。
形態と生態
 | | 写真2:ゴマダラカミキリ成虫 |  | | 写真3:幼虫 | 成虫の体長は25-35mmで、全体に光沢のある黒色をしており、ハネには白色の不規則な斑紋があるので、「ホシカミキリ」とも呼ばれています(写真2)。雌は雄に比べて大きい場合が普通ですがそうでない場合もあります。雌と雄の区別はアンテナの長さが体長に対し、雄は1.7-2倍に対し、雌の場合1.2倍ほどですので、体長に対するアンテナの長さでおおよその区別ができます。
古い参考書によると、産卵数は約30個となっている場合が多いようですが、最近の農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所の足立礎さん達の研究では、平均200卵で最大400卵を産んだ個体もあったそうです。卵は約3mmの楕円形で乳白色です。その年に産卵された卵は ≪卵⇒幼虫(写真3)⇒蛹⇒成虫≫ と経過し、次の年の5月下旬頃から成虫になり、樹幹に脱出孔(写真4)を開けて出てきます。しかし、遅く生まれた卵はもう一年経過してから成虫になります。つまり、暦年で産卵されてから成虫になるまでに1年と2年を費やすものがあることになります。
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| 写真4:成虫の脱出孔 |
写真5:成虫による葉の後食 |
写真6:成虫による枝の後食 |
成虫が羽化してくるのは5月下旬から6月頃で、羽化してから葉や枝を食べます(写真5、写真6)。これを後食とよんでいます。後食をしながら交尾をし、10日前後経過すると産卵を始めます。産卵期間は6月から10月頃までですが、その最盛期は6-7月頃です。
卵は地際部の樹幹の形成層部分に産み付けられ、その部分からはヤニが出ていたり、樹皮の変色が見られます。 卵期間は約7日間で、孵化した幼虫は形成層から木質部へと食入し、木質部へ食入するようになると木屑が出てくるようになるので(写真7、写真8)、カミキリムシの加害を受けているかどうかが良くわかります。幼虫は木質部に食入したまま越冬することになります。
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| 写真7:幼虫の食入した個所の木屑 |
写真8:幼虫の食入した個所の木屑 |
防除法
最も簡単な方法は捕殺でしょう。有効な薬剤がすくなかった時代はもっぱらこの方法でした。個人でも捕殺を行いましたが、地域ぐるみの捕殺方法がありました。地域ぐるみの方法とは、各地域の農協が捕殺したカミキリを買い上げることでした。移動性の大きなこの害虫の地域内密度を少なくするために農協が買い上げるのに何ら矛盾がなかったから、最近まで続いていたのでしょう。もしかしたら、まだ実施しているところがあるかもしれません。一匹全部ですと腐った時の悪臭がひどいので、頭部やハネを一対持ってくると一匹分を何円かで買い上げる方法です。老人の晩酌代や子供の夏休みの小遣い稼ぎとして結構評判が良かったようです。
薬剤による防除としては、撒布による成虫の防除と産卵された卵の薬剤による防除があります。当社のゴマダラカミキリムシの登録薬剤にはアクタラ顆粒水溶剤やスプラサイド乳剤等があります。詳しいことは、ホームページをご覧下さい。
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シンジェンタ ジャパン株式会社 開発本部 技術顧問 古橋 嘉一 2004年8月16日掲載
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