農薬の安全性は、毒性の強弱と暴露量(どのくらいの濃度のものにどのくらいの時間接触するか)をもとに評価されます。毒性の強いものでも低濃度で短時間接触する場合、危険性が低減され、逆に毒性が弱いものでも、高濃度で長時間接触する場合、危険性が高くなります。また農薬に暴露される経路は、一般消費者のように食生活をとおしての場合と、生産者らのように農薬の散布をとおしての場合があります。前者の場合、微量の農薬を長期にわたって摂取することによる慢性毒性が、後者の場合、短時間に比較的多量の農薬に接触し、主に吸入あるいは経皮的に取り込まれる急性毒性が、重要になります。
 

毒性試験で無毒性量を求める

動物を用いた亜急性毒性試験、慢性毒性試験、発がん性試験、繁殖試験、催奇形性試験など様々な毒性試験が行われ、毒性の強さが検査されます。これらのデータをもとに、一生涯にわたって毎日摂取しても何の毒性影響も認められない量である、無毒性量(NOAEL: No Observed Adverse Effect Level)を確認します。

安全係数をかける

この無毒性量は実験動物に対するものなので、ヒトに適用するために、無毒性量に通常100倍の安全係数を用いて算出します。これは、実験動物とヒトの間で感受性の違いによる安全性を10倍、ヒトの性別、年令、健康状態などの違いによる安全性を10倍と見込み、かけ合わせて100倍としたものです。長年の経験的・実証的な知見により、一般に100倍の安全係数を用いることによって安全性を確保できるとされていますが、試験データが不足している場合などは、200倍~500倍の安全係数が採用されることもあります。
 

ADIを決める

無毒性量を安全係数100で除して算出されたものが、ヒトが一生涯にわたって毎日食べ続けたとしても、なんらの毒性も認めないとされる量である「一日摂取許容量(mg/kg体重/日)」(ADI: Acceptable Daily Intake)です。
 残留農薬基準は、このように科学的に決められたADIをもとにして設定されます。

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