人工知能、AIを使ったキュウリの仕分け機を開発

2017/02/28(火)

  • 小池誠さん。

    小池誠さん。

人工知能、AI※1)という言葉が注目され、その活用事例も多岐にわたっています。
農業にも生かそうと、静岡県湖西市のキュウリ生産者小池誠さんは、AIを活用したキュウリの仕分け機を研究・開発しています。
まだ試作機の段階ですが、これまで人の手で行ってきた仕分けをAIがどのように行うのでしょうか?  その仕組みとAIの農業分野における可能性をお伺いしました。

AIを応用した機械のヒントは、囲碁

――人工知能(以下、AI)を使ったキュウリの仕分け機を開発されたきっかけを教えてください。

我が家は両親と40aのハウスでキュウリを作っています。
僕は大学で情報工学を学び、自動車部品メーカーのエンジニアをしていましたが、3年前に仕事を辞めたことを契機に、家業を継ぐ形で就農しました。
本格的に農業をして気づいたのは、農業には手作業が多いことでした。
中でも時間がかかるのが仕分けです。
午前中にキュウリを収穫、午後に仕分けし、出荷するのですが、1本、1本、経験と勘のみを頼りに仕分けしていきます。
キュウリの等級は9つもあるので、熟練した人でないとできない作業です。
しかも、繁忙期には1日400kg分くらいのキュウリを出荷しているので、とにかく時間がかかり、夜遅くにまで作業が及ぶこともあります。
ここを機械化して、その分、作物の栽培に労力を使い、品質のいいものを作りたい。
エンジニアの経験を生かして何か作れないかと考えたことがそもそものきっかけでした。

――AIを利用しようと思われたのはなぜですか?

昨年、囲碁の対戦でGoogleDeepMindが開発した「AlphaGO(アルファ碁)」に世界王者のプロ棋士が負けたというニュースがありました。
これには驚かされ、AIのすごさを改めて感じたんです。
囲碁の勝負でAIが人に勝つなんて信じられませんでした。
「AlphaGO」が画期的だったのは、囲碁の盤面を画像としてとらえていた点です。
盤面の白石と黒石の配置状況を、まるで絵画の構図のように捉え、「こんな感じで配置されている時に、人間のプロはこう打つ」というのを、比較的高い精度で学習してしまったのです。
これに刺激を受け、経験や勘に頼っていたキュウリの仕分けにAIを応用できないかと、2016年の2月くらいから研究を始めました。
同月に試作機の一号機、その後さらに研究を重ね、8月には試作機の二号機が完成し、現在は三号機の開発を始めています。

  • NTTドコモ第一法人営業部農業ICT推進プロジェクトチーム部長、上原宏さん

    小池さんが開発したキュウリの仕分け機。

  • スーパー店頭でポスターとともにきらぴ香をPR

    この台に仕分けするキュウリを置き、
    3台のカメラでとらえます。


■目指すのは小規模農家でも、手が届きやすい簡単で安価な機械

――具体的にはどんな仕組みなのでしょうか。

システムがデータの特徴を学習し、認識や分類をする「ディープラーニング」を使い、母が仕分けしたキュウリの写真を1枚ずつ撮影し、AIに学習させていきました。
そこに3台のカメラでとらえたキュウリの映像をつなげ、AIが学習した画像から大きさや、曲がり具合などの形、色などの特徴が一致するものを判断し、9つに仕分けしていくシステムです。
二号機を作る段階で、約7000本分のキュウリの画像を学習させました。

基本的には人間が目でキュウリを見て判断し、仕分けするのと同じことをAIができるのです。
人間と違って疲れもなく、24時間働けます。
さらに学習を重ねれば精度もあがります。
こと画像認識に関しては、AIは人間の目を超えているともいわれるのです。

――とても先進的で難しいシステムなのですね

いえいえ、難しくないんですよ。
元々、目指しているのが簡単に安く作れる仕分け機です。
AIのプログラムもインターネットで広く公開されているものを使用していますし、ある程度のプログラムの知識があれば誰でもできます。
個人経営の農家が高額の大きな機械を導入するのは現実的ではありません。
人の経験や勘に頼っていた部分を、安くて簡単に機械化できることが重要なんです。
大規模農家よりも、人手の少ない小規模の個人農家こそ、機械化が必要だと思うので、誰でも手に届くようなものを目指しています。

この仕分け機もオープンソースとして開発しており、自分のサイトで開発の経緯や仕組みをすべて公開しているんです。学習に使った7000枚のキュウリ画像も公開しています。

――実用化までの課題にはどのようなことがあげられますか?

一番大きな課題は、二号機ではキュウリの映像から表面の傷まではしっかり判断できない点です。
そのため、精度が低く、人の目で仕分けした場合を100とすると、二号機の精度は70くらいですね。

ほかにも、カメラ設置箇所を遮光していないため、外部からの光が入ってしまい、映像が乱れ仕分け精度が安定しないことや、等級判定後、等級別にキュウリを仕分けするベルトコンベアーの動きが遅いこと。
仕分けして箱に落とすときに、傷がついてしまう心配があることなど、いろいろ課題だらけです(笑)。

そういった課題を少しでも解決して、今年の夏頃までには試作機の三号機を完成させることが当面の目標です。

  • キュウリがベルトコンベアで流れ、等級ごとに箱に仕分けていきます。

    キュウリがベルトコンベアで流れ、
    等級ごとに箱に仕分けていきます。

  • 小池さんが作るキュウリ。

    小池さんが作るキュウリ。


■AIが新規就農者を支援する未来

――就農されて、農業のどのような点に魅力を感じていますか?

農業は自分の裁量で仕事ができる点など、会社員と違った楽しさがあります。
今の時期は1日50kgのキュウリを出荷していますが、どれだけの人が食べているのだろう、年間で考えると..と想像するだけでワクワクしてきますよ。
栽培技術についてはまだまだ勉強中で、ていねいに株の状態を確認しながら手入れをし、学んでいく毎日です。

そのような日々の中でも悩ましいのは害虫ですね。
特にやっかいなのはミナミキイロアザミウマ。
どこからともなくやってきてあっという間に増えます。
対策としては、アファームを早め早めに防除しています。
安定した効果と、使いやすさが魅力ですね。
あとはコナジラミかな。
これは以前からチェスを使っています。

――農作業に携わる中で、AIは農業をどのように進化させる可能性があると思われますか?

多様な可能性があると思います。
1つが自動化です。
人間のノウハウの蓄積をさせ、ハウスの管理などをAIに学ばせ、任せることができると思います。
現在のシステムでも温度などの管理はできますが、AIの大きな違いは確率的に未来を予測できる点。
経験を重ねていけばさらに精度が上がっていくことができるのもAIの強みです。

現在開発している仕分け以外、病害虫防除にもAIは期待できると思います。
天候や湿度、気温などあらゆる外的要因をパターン化し、どんなシーンではどの病害虫が発生するかを学習させると、適切な防除タイミングを知らせてくれる、または防除自体も24時間人間に代わって行ってくれるといったことも可能なのではないでしょうか。

また、今まではあらゆるパターンでの病害虫防除の対処方法を、経験または経験者から学ぶ必要があり私を含め新規就農者には大変な苦労もあるかと思いますが、AIは新規就農者支援にも活用できるのではないでしょうか。

――最後に、読者である全国の生産者にメッセージをお願いします。

AIはこれまでは研究者や大企業のものと思われてきましたが、実はそうじゃない。
僕はAIをキュウリの仕分け機などに応用することは「AIの民主化」だと思うんです。
今回の試作機もAIをどう応用していくかの新しい事例として多くの人が注目してくれたと思っています。
農業は高齢化や後継者不足で従事する人が少なくなっていくことが懸念されていますが、それを補うような技術を開発していきたいのです。
そして、新しいことにどんどんチャレンジしていき、農業を盛り上げていきたいと思うので、一緒に頑張っていきましょう。

※1)人工知能(artificial intelligence、略してAI)とは、 学習、推論、問題解決、判断、知識表現など人間の能力に近い機能を持ったコンピュータによる情報処理システムのこと。



★小池誠さんのサイトはこちらから。
キュウリの仕分け機の開発の過程も詳しく紹介されています。
http://workpiles.com/category/tensorflow/


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2017年2月28日掲載