病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
観賞用に導入され、各地で野生化し雑草に
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マツヨイグサ属(Oenothera )について

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写真1:オオマツヨイグサ

雑草には多くの帰化種が含まれていますが、その代表格の一つにマツヨイグサの仲間を挙げることができます。この仲間はアカバナ科マツヨイグサ属に分類され、いずれもアメリカ大陸原産で世界中に約200種が確認されています。日本国内では嘉永年間にマツヨイグサ(Oenothera odorata)が渡来したのが最初で、その後オオマツヨイグサ(Oenothera erythrosepala) が観賞用等として導入されました(写真1、写真2)。これらの仲間は環境適応能力が高く、各地で野生化し、その後帰化したメマツヨイグサ(Oenothera biennis)、コマツヨイグサ(Oenothera laciniata)等を加え、今日では鉄道線路や畑地などに一般的に生育する雑草となっています(写真3、写真4)。

  • 写真2:マツヨイグサ

  • 写真3:メマツヨイグサ
    牛久市久野畑周縁

  • 写真4:コマツヨイグサ

 マツヨイグサ類(以下オオマツヨイグサ、メマツヨイグサ、コマツヨイグサも含めた総称として使用)の特徴は、その花に関することを挙げることができます。国内に生育するマツヨイグサ属の仲間には、戦後帰化したユウゲショウやヒルザキツキミソウなどの例外もありますが、マツヨイグサ類が俗に"宵待草"と呼ばれるように、多くの種類は日暮れ時から鮮黄色の可憐な花を咲かせ、翌朝しぼむ、いわば夜行性の植物です。中秋の名月とススキはよく似合いますが、月明かりに映えるマツヨイグサと虫の声も風情があります。太宰治が富岳百景のなかで「富士には月見草がよく似合う」と書いていますが、ここでいう月見草とはマツヨイグサのことだったようです。

写真5:メマツヨイグサの花

 花が咲く時期は春から秋にかけてですが、最近は温暖化の影響もあるのでしょうか、関東周辺では11月でも花を見ることができます。この夜行性のマツヨイグサ類は、おもに他花受粉によって種子をつけて繁殖し、受粉はもっぱらスズメガ等の夜行性のポリネーター(受粉のために花粉を運ぶ生物:一般には昆虫類が多いがその他鳥類やコウモリなども含まれる)に頼っています。面白いのは形態的に良く似ているオオマツヨイグサとメマツヨイグサで、大型のスズメガの仲間はオオマツヨイグサしか訪れません。メマツヨイグサの花には一回り小型のヤガの仲間がよく来るそうです(写真5)。よく似た仲間でも昆虫達はきちんと見分けているのです。

 さてスズメガではないですが、マツヨイグサ類の見分け方のポイントは幾つかあります。最も大型のオオマツヨイグサは草高が150cm程になり、他のどの種よりも大きな花をつけます。マツヨイグサは川原や海岸沿いの砂地などに多く、草高は1m以下で葉が細いので見分けられます。またコマツヨイグサは茎がほふくする点と、花の黄色がほんの少し淡いのが他種と見分けるポイントです。メマツヨイグサはオオマツヨイグサによく似ていますがオオマツヨイグサに比べて花が小さく、可憐さに欠けます。葉や茎の形状も変化に富んでいて、茎の下の方から出ている葉が赤みがかっているものもしばしば見受けられます。またマツヨイグサやコマツヨイグサは花がしぼむと赤く変色するのに対して、オオマツヨイグサやメマツヨイグサは花がしぼんでも黄色いままで赤くはなりません。

写真6:メマツヨイグサの群落

かつてはそこらじゅうにオオマツヨイグサやマツヨイグサを見ることができましたが、近年都市近郊などで最もよく見かけるのはメマツヨイグサが多いようです(写真6)。このようなよく似た近縁種間での種の変遷には、生育環境の様々な変化が原因しています。その一つには除草剤の普及が関係していると思われます。特にグリホサート系の非選択性茎葉処理剤の普及拡大に伴い、相対的にこの除草剤に比較的強いメマツヨイグサなどは、多種との競合バランスの中で、除草剤散布というストレスにうまく適応し結果的に畑地などで勢力を拡大しているように見えます。現にグリホサート剤を数年間、連続的に使用することによって結果的にメマツヨイグサが増加するという実験結果も報告されています。このように同じ系統の除草剤を過度に使用することによって特定の雑草種が極端に増加していく傾向は海外でも報告されています。

 効率的な雑草管理には、場面に応じて使用する除草剤の種類を変えることは言うまでもありませんが、殺菌剤や殺虫剤を使う時と同じように、除草剤についてもローテーション散布や機械による刈取を組み合わせることで、上手な雑草管理ができます。圃場にメマツヨイグサが増えてきたと思ったら、除草方法を少し変えてみてはいかがでしょうか。

写真提供:写真1「鮫川の野草」西成典子 監修(2001)より

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 開発部
中谷 英夫

2003年12月19日掲載

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