病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
ほんの一個体から、数か月後には辺り一面を埋め尽くす繁殖力
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キレハイヌガラシ

 前回はイヌガラシ属雑草の代表的な在来種について述べましたが、今回は帰化種の中でも雑草性が強く各地で問題になっているキレハイヌガラシについて紹介します。国内に生育する帰化種には他にミミイヌガラシが報告されていますが、その生育地は限られ雑草としてほとんど問題となっていないので省略します。

 キレハイヌガラシはヨーロッパ原産の多年生草本で帰化は1950年代とされていますが、北海道内ではそれ以前からヤチイヌガラシと呼ばれ、1960年代にはすでに有害雑草とされていました。特に畑地、樹園地などでは一度侵入すると防除するのに厄介な雑草です。気候的な要因からか特に北海道内で問題とされていましたが、 近年本州のいたるところで生育が確認されています。主な生育場所は畑地、樹園地、水田畦畔、路傍などで、特徴はその名が示すように葉に深い切れ込みがあり、花は在来種のイヌガラシやスカシタゴボウよりも明らかに大きく、しばしば大群落を形成することもあります(写真1,2)。路傍などで一斉に黄色い花を咲かせている姿はことのほか美しく、防除するのが惜しくなってしまいます。 しかしながらその繁殖力は雑草として生きてゆくのに充分なものがあります。本種の繁殖方法で最も重要と思われるのが旺盛な栄養繁殖能力であると言えます。たとえば、ほんの数ミリの根の切れ端からでも萌芽して栄養繁殖体を形成し、その個体から出た根系からまた次々と新しい個体を形成するといった具合で、圃場に生育するほんの一個体から、数ヶ月後には辺り一面を覆い尽くしてしまうこともあります(写真3)。また、茎や葉柄からの発根能力も持ち合わせています。雑草は耕作や刈取り作業などによって、その植物体がバラバラに分断された結果、根や茎葉の断片は地表に散布されたり、土中にすきこまれることもしばしばあります。雑草にとってはこの人為的な生育環境の撹乱がむしろ栄養繁殖の機会を増やしている場合もあります。キレハイヌガラシの持ち合わせている特性はまさにこのような環境に適応しているといえるのではないでしょうか。また、近年いたるところで本種の生育が確認されていますが、生育地の拡大も別の場所から持込まれた土などに混入した根断片から個体が再生されたものと考えられます。というのも、北海道内に生育しているものを始め、国内に生育しているキレハイヌガラシの多くは種子をつけません。したがって多くの場合はこの種は栄養繁殖によってのみ繁殖をするからです。

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 ただ、本州の一部の地域では種子をつける系統も確認されています。この系統の特徴は有性繁殖をするということの他にも形態的な特徴において種子をつけない系統との間に、花の大きさ、葉の形態などの点において明らかな違いがあります。もちろん種子をつける系統も旺盛な栄養繁殖力をそなえていて、根系からの著しく旺盛な萌芽力によって栄養繁殖することによって畑地・樹園地・水田畦畔へ積極的に侵入し強害雑草となりますが、同時に少ないながらも種子繁殖によって遺伝的変異性を維持していると言えます。

 キレハイヌガラシは北海道内のみならず本州各地でも強害雑草になりつつありますが、その中には少なくても繁殖様式の分化した複数の系統が生育していることは大変興味深いことです。また、それぞれの雑草の繁殖様式を知ることは、より有効な防除手段を講じるためにも重要なポイントであります。

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部開発部
中谷 英夫

2002年12月19日掲載

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