病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
収量・品質低下、作業の妨害、家畜への影響など、雑草害は様々
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「雑草」の植物としての意味と雑草害

多くの人にとって「雑草」とは、どんなところにでも生えて、抜いても抜いてもまた出てくる厄介な植物のことを意味するものでしょう。そんなことから、「雑草のようにたくましい奴」というと、どんな環境・場所でも生きていけるほどの生命力を感じさせる強い人間を連想するものです。
ところが植物としての「雑草」の意味・定義、また雑草が人間活動に及ぼす害作用についてはあまり深く知られる機会は少ないものです。ここでは雑草という意味をやや詳しく紹介し、雑草の生き残り戦略やそれがもたらす雑草害について簡単にふれてみました。

雑草の意味

 雑草の意味を広辞苑で調べると、「自然に生えるいろいろな草。また、農耕地での目的の栽培植物以外に生える草」とあります。これを雑草学という専門の立場からさらに深く探ると、経済活動としての農業生産からみて、「作物に直接または間接的な害をもたらし、その生産を減少させる植物(荒井:1951)」、あるいは生態学的にみて、「人間活動で大きく撹乱された土地に自然に発生・生育する植物(ハーパー:1944)」として定義されています。すなわち前者は人間が農業を営む耕作地における「農耕地雑草」をさすものであり、後者は耕作地だけでなく人間活動の結果から撹乱された場所、例えば鉄道や道路・河川の土手・宅地や工業用地といった場所にも生える「非農耕地雑草」も含まれます。
 一方、雑草学の大家、笠原先生は、雑草を下図のように分類することで、植物としての意味付けをより明確に私達に教えてくれています。

 文字通り山や野に生える「山野草」は、前述の人間によって撹乱された場の外側で自然に生育し、肥料を与えたりするとかえって生育が悪くなったりする種類もあり、人の手に触れられない所を好む植物群を意味します。「人里植物」は人間の住む場所に生える草、すなわち人間の手がはいった場所に生える草のことで、ふだん眼にとまる多くの種類が含まれます。これらと作物の間にまたがるようにして「雑草」は存在しており、宅地のまわりで週末に草むしりの対象となったり、耕地で作物栽培の邪魔になるものが当てはまります。

雑草の生き残り戦略

 雑草は、長い年月の間に人間活動の場で生育するためのいろいろな戦略を身につけてきたと考えられています。そのいくつかを紹介しましょう。
 まず、その繁殖性の高さが挙げられます。雑草の種子の大きさは一般に小さいものが多く、かつ穂や莢から種子が落下しやすいため、風・水・鳥類などによって伝播されやすく、開花・結実までの期間が短いため作物の収穫時にはすでに発芽可能な種子ができており、かつ1株で50万粒以上もの種子を生産するものもあります。種子の寿命も数年〜数十年に及ぶものがあるほど長い場合があります。種子だけでなく塊茎などの栄養繁殖器官で増殖するものは、地上部だけ除去されても容易に再生して繁茂する能力があります。
 また、作物と形態的に似た格好をすることで、人間による除去作業の歴史の中で生き残ってきた「擬態」があります。例えば、イネの最大害草の一つにタイヌビエという同じイネ科の雑草がありますが、これは穂が出るまではちょっと見た目にはイネと姿かたちがそっくりで、慣れない人には区別がつき難いものです。また同じイネの仲間でありながら「脱粒性」が高い雑草イネ(実るとすぐに穂から籾が落ちてしまう性質)は、タイやベトナムなどの水田では目的とする栽培イネを圧倒して、穂に残っている籾は皆無になるほど大きな害がでる場合があります。
 あるいは、光合成能力の点で多くの穀物(イネ、ムギ類など)や野菜類がC3植物であるのに対して、強害雑草(ノビエ、メヒシバ、カヤツリグサなど)の多くは光合成効率が高く、水の要求量が低いC4植物であるため、夏の高温や水分不足条件下でも作物との競合に有利であることも挙げられます。

雑草がもたらす害

 さて雑草がもたらす人間活動に対する不都合、すなわち「雑草害」にはどのようなものがあるのでしょうか。主なものを実例を挙げて紹介します。

1) 作物収量低下

雑草が作物の養分・水分・日光を奪い、収量、すなわち単位面積あたりの作物収穫量を低下させるもので、雑草害として最も重大なものです。例えば水稲栽培では1m2あたり乾燥重量で700gのノビエがイネと共存すると、お米の収量は約半分になってしまいます(千坂:1966)。

2) 農作物の品質低下

作物の生育に必要な養分などが雑草によって奪われると、収穫された穀物や野菜などは貧弱で粗悪なものになったり、収穫物に雑草種子が夾雑物として混入すると、それだけで品質としての等級を落とし、農家の収入低下に直接影響したりします。例えば玄米の中には夾雑物が0.1%以上(すなわち1000粒中に1粒以上)入っただけで等級はがた落ちしてしまいますが、クサネムというマメ科の雑草種子は、玄米粒と形・大きさ・比重が良く似ているため混入しても選別が困難なため問題となっています。

3) 収穫作業の妨害

収穫時の殺草は時として収穫される作物にからまったり、収穫機械の進路の邪魔になったり、駆動タイヤやキャタピラにからまったり滑りやすくしたりすることで作業の大きな妨害になることがあります。機械で収穫されることが基本の近代農業の中にあって、これも大きな雑草害といえます。

4) 家畜に対する有毒雑草

草地に生える草が家畜にとって毒であった場合に当てはまる雑草害で、ワラビやスギナなどが乾燥飼料としてウシの餌に多量に混入すると、それを食べたウシは病気になってしまいます。また、イチビというアオイ科の帰化雑草は、多量に乳牛が摂食すると、それ自身がもつ独特の臭み成分が牛乳にうつり商品価値がなくなってしまうといった害をもたらします。

5) 花粉症の原因と空地の雑草

スギ花粉による花粉アレルギー(花粉症)は春の厄介な風物詩として定着してしまいましたが、空地などで普通にみられる雑草の中にも、花粉症の原因となる草種があります。春にはカモガヤ・スズメノテッポウなどのイネ科、秋にはブタクサやヨモギなどの花粉が原因となる場合が知られています。

「農業とは雑草とのたたかいである」という言葉にあるように、農業生産性の維持・向上にはこれらの雑草害の軽減、すなわち雑草防除が不可欠になるわけです。その最も有効な手段として除草剤の利用がありますが、その利用・開発の歴史については次の機会にふれてみたいと思います。

 

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部開発部
森島 靖雄

2002年10月29日掲載

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