病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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いもち病の実態と効果的な防除対策

  • 岩手県農業研究センター 環境部 病理昆虫研究室 主査専門研究員 岩舘康哉さん(右)、同研究室 佐々木陽菜さん(左)

    岩手県農業研究センター 環境部
    病理昆虫研究室 主査専門研究員
    岩舘康哉さん(右)、
    同研究室 佐々木陽菜さん(左)

「一度発生すると周囲2kmは危険にさらされる」というほど感染力が強く、発病すると生育不良や枯死を招くばかりか、新たな感染源にもなる「いもち病」。
岩手県では明治初期から問題視されており、長年にわたり水稲生産者を悩ませてきました。あらためて知っておきたい、いもち病のトレンドと防除対策について、岩手県農業研究センターの岩舘康哉さん、佐々木陽菜さんに伺いました。


岩手県でのいもち病における発生の歴史、発生量の推移などについてお聞かせください。

いもち病は明治初期から冷害年に多発する病害として注目され、第二次世界大戦後の増収対策により早期多肥栽培が励行されたことで多発生。
その後、異常気象や冷害に見舞われるたび多発生を繰り返してきました。
とくに、記録的な低温と日照不足となった昭和63年や平成15年、全県で葉いもちが早期に多発した平成3年、“百年に一度”といわれる大冷害に見舞われ、タイ米を輸入する事態となった平成5年は穂いもちが大発生し、岩手県の稲作も大きな打撃を受けています。
しかし、平成に入り残効性に優れた箱施用剤が登場したことや効果的な防除方法の確立とその広域展開などにより発生が次第に減少し、箱施用剤の施用率が60%を超えた平成11年以降は概ね以前のような大発生を抑えられている状態です。

  • 平成28年いもち病防除面積 年次推移 葉いもち防除

    平成28年いもち病防除面積 年次推移
    葉いもち防除

  • 平成28年いもち病防除面積 年次推移 穂いもち防除

    平成28年いもち病防除面積 年次推移
    穂いもち防除



いもち病は、どのような環境・条件下で発生しやすいのでしょう。

日照不足と低温が重なると、いもち病に対する抵抗力が弱まってしまいます。
とくに10葉期から止葉期に低温下にあったイネは穂いもちにかかりやすくなり、さらには新しく出た穂も感染しやすくなります。
また、窒素施肥量が多いとイネの抵抗力が弱まるとともに、過繁茂により多湿状態になることから発生が助長されます。
雨の降り方にも影響され、土砂降りの雨であれば葉についた胞子を洗い流してくれるのですが、長く続く弱い雨は発病の好適環境になります。

  • 葉いもち、いもち病病斑、穂いもち(首いもち)、穂いもち多発圃場

いもち病の伝染源や感染経路について教えてください。

被害にあった藁や保菌種子、胞子の長距離飛散が主な伝染源です。
さらに、羅病苗の持ち込みや取り置き苗の放置も、葉いもちを発生させる原因になります。
また、菌の変異によりそれまで抵抗性を持っていた品種が羅病化する場合があるため、抵抗性品種を栽培していても注意が必要です。

  • いもち病の病斑

    いもち病の病斑

  • 病斑上に胞子(分生子)を多数つくる

    病斑上に胞子(分生子)を
    多数つくる

防除対策としては、どのような点に留意すべきでしょう。

葉いもちの発生が多いと穂いもちも多くなりますので、葉いもちを出さないための対策が最も重要となります。
そのために求められるのが、健全種子生産と種子消毒の徹底です。
岩手県ではJAの徹底した指導により、平成28年度の種子更新率は97.6%*、種子消毒の実施率は99.6%*という高水準を維持しています。
*平成28年度「植物防疫事業年報」(岩手県病害虫防除所発行)より

  • 葉いもちによる被害(ずりこみ症状)

    葉いもちによる被害
    (ずりこみ症状)

  • 葉いもちによる被害(ずりこみ症状)

    葉いもちによる被害
    (ずりこみ症状)

箱施用剤や本田防除剤の効果的な使い方について教えてください。

いずれの農薬においても、使用基準通りに使うことが何よりも大切です。
そのうえで箱施用剤を使用する際は後作物への残留リスクを回避するため「ハウス外で施用する」「苗床に浸透性のないシートを敷き、苗箱を苗床から遮断する」「苗出し後にシートを搬出する際、シート状の農薬や水、育苗土をこぼさない」ことを徹底し、土壌に流出しないよう注意する必要があります。

いもち病の防除におけるピロキロン剤の優位性についてどのようにお考えですか?

カスガマイシン剤、MB1−D剤、QoI剤といった薬剤に耐性菌が確認されているなか、ピロキロン剤はこれまでにいもち病の耐性菌発生報告はなく、現在も安心して使用できる薬剤のひとつです。
さらに、出穂5日前まで使える処理適期幅の広さも作業上の大きなメリットといえるでしょう。
岩手県としても、ピロキロン剤であるコラトップシリーズは長年にわたり生産者へ推奨しています。

最後に、いもち病対策に関するアドバイスをお願いします。

取り置き苗や育苗ハウス周辺に置かれた籾殻などの伝染源により伝染環が形成され、広域的に被害が拡大する事例もあります。
いもち病対策は防除の基本である「いかにして伝染環を断つか」が非常に重要です。
取り置き苗や籾殻の放置が習慣化している方は、ぜひこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

  • 取り置き苗

    取り置き苗

  • 育苗ハウス周辺に放置された籾殻

    育苗ハウス周辺に放置された籾殻

 

(グラフ)出典:岩手県病害虫防除所、平成28年度植物防疫事業年報(平成29年3月発行)
(掲載写真)提供:岩手県農業研究センター
2017年6月30日掲載

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