病害虫・雑草防除ガイド - 害虫と病気の話
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アブラムシ防除と抵抗性対策

生態的特性

写真(モモアカアブラムシ)

モモアカアブラムシ

写真(ワタアブラムシ)

ワタアブラムシ

 アブラムシは各種作物に寄生し、植物からの吸汁加害による収量低下、排泄物の甘露に発生するすす病による品質の低下などの被害をもたらすほか、吸汁加害する際に各種の重要なウィルスを媒介する重要な害虫です。
 生態面で特徴的なことは、環境に対する適応性の高いことです。アブラムシは増殖のための適応として、両性生殖から単性生殖、卵生から胎生、有翅形から無翅形へと生息環境の変化に対応して変化することができます。1年間の生活史も不完全生活環(単性世代で胎生雌の世代のみで経過する)と完全生活環(両性、単性世代を経過する)とがあり、これもアブラムシの環境適応の高いことを示しています。
 アブラムシの防除は薬剤防除に頼っていますが、野菜や花卉の寄生加害するモモアカアブラムシやワタアブラムシにこれまで使われていた有機りん剤やカーバメート剤、合成ピレスロイド剤抵抗性個体が出現するようになっています。

  • アブラムシライブラリー
  • 写真(ダイコンに寄生するモモアカアブラムシ)

    ダイコンに寄生する
    モモアカアブラムシ

  • 写真(イチゴに寄生するワタアブラムシ)

    イチゴに寄生するワタアブラムシ

  • 写真(キクに寄生するワタアブラムシ)

    キクに寄生するワタアブラムシ

  • 写真(ワタアブラムシとカゲロウの卵)

    ワタアブラムシとカゲロウの卵

  • 写真(ワタアブラムシと捕食するカゲロウ幼虫)

    ワタアブラムシと捕食する
    カゲロウ幼虫

  • 写真(ワタアブラムシとナミテントウムシの成虫・卵)

    ワタアブラムシと
    ナミテントウムシの成虫・卵

  • 写真(アブラムシを捕食するテントウムシの幼虫)

    アブラムシを捕食する
    テントウムシの幼虫

  • 写真(ダイコンに寄生するニセダイコンアブラムシ)

    ダイコンに寄生する
    ニセダイコンアブラムシ

農薬出現以前の防除

 大正5(1916)年に発行された「あぶらむしの研究」(名和昆虫研究所・工藤元平著)によれば、アブラムシの名称は、「あぶらむし」、「ありまき」が一般的ですが、江戸時代には「シラミ」「タケジラミ」「ダニ」「葉ジラミ」などとも呼ばれ、地方の方言では、「こごめ」「あまこ」「あぶらこ」などとも呼ばれていたようです。江戸時代の古書にも害虫としての記載がありますが、その当時の農作物の害虫といえば、ウンカや二化螟虫などの稲作害虫が農家にとっての重要害虫でした。しかし、アブラムシの記載が江戸時代にあることや大正時代でも大根に発生したアブラムシのために2割以上の減収となり、大きな損害の発生したことが述べられているので、害虫としての重要性は現在と同じだったようです。

 有機合成農薬が無い時代のアブラムシの防除は前述の著書「あぶらむしの研究」で各県における農家一般の防除が記載されていますが、草木灰散布が最も多く、石油乳剤や石鹸水、除虫菊などもつかわれていました。面白いのでは、福岡県の「尿を散布し、またはほうきをもってはたき落とす」などがあります。静岡県の項では「従来木灰を散布するも同県農事試験場にて洗濯石鹸溶液の有効なるを唱道の結果現今盛んに同液を使用するに至れり」と記載されています。農薬以外では、「害虫防除用手袋」や「あぶらむし潰殺器」などが販売され、その防除法は現在の有機農法をほうふつとさせるものがあります。しかし、大きな面積の防除については薬剤防除が推奨されていました。

防除薬剤の出現と薬剤抵抗性

 第二次世界大戦後の1940年代以降、多くの殺虫剤が開発されました。開発の初期には、人畜に毒性の高い、環境に対して負荷の大きな薬剤も使われていましたが、1960年代以降になると人畜に対する毒性や環境負荷への配慮から、より安全性の高い薬剤に変わってきています。

しかし、これらの薬剤をアブラムシ防除薬剤として使用した結果、これまで使われていた有機リン剤、カーバメート剤、合成ピレスロイド剤に相次いで抵抗性個体が出現し、問題となっています。1960年に農水省が実施した、アンケート調査では、すでに1950年代にアブラムシの有機リン剤に対する効力減退の事例が報告されており、その後、開発されたカーバメート剤や合成ピレスロイド剤にも抵抗性アブラムシが出現しています。
野菜や花での代表的なアブラムシはモモアカアブラムシ、ワタアブラムシですが1980年代になるとモモアカアブラシの有機リン剤やカーバメート剤、合成ピレスロイド剤に対する抵抗性個体の出現が全国各地で確認されるようになりました。
ワタアブラムシについても、有機リン剤やカーバメート剤に対する抵抗性が1980年代になると確認され、1989年には合成ピレスロイド剤に対する高度の抵抗性が確認されるようになり、その防除は年々困難となっているのが現状です。

ネオニコチノイド剤の出現とアクタラによる防除

 ポスト合成ピレスロイド剤として開発された殺虫剤がネオニコチノイド剤です。アドマイヤーが最初に開発され、これまで既に4剤が販売されていますが、これらの剤は化学構造上からクロロニコチル系と呼ぶのに対し、アクタラは化学構造式の上からチアニコチル系と呼び、第二世代のネオニコチノイドと位置づけられています。

 アクタラは粒剤(0.5%)と顆粒水溶剤(10%)とがありますがこれまでの薬剤抵抗性アブラムシにも優れた防除効果を示します。アザミウアやコナジラミ、カメムシなどの吸収性害虫の他、ハモグリバエ、甲虫類などの害虫にも優れた防除効果を発揮します。
 アクタラの特性は植物への優れた浸透性です。粒剤を株元に施用すると、根から吸収されたアクタラは植物の成長点まで移行し、吸収性害虫に対し、経口毒性として作用することになります。また、顆粒水和剤の散布では、薬液の虫体直接接触と植物へ浸透移行した薬剤の経口摂取による作用が働くことになり、少ない薬量でよりすぐれた防除効果が期待できます。

(写真提供:静岡県農業試験場 西東 力)

 

シンジェンタ ジャパン株式会社
開発本部 技術顧問
古橋 嘉一

2002年6月25日掲載

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