病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
同一の景観を維持するには人間の努力が必要
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自然の植生

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 代表的な庭園である竜安寺の石庭は石と砂のみで自然の枯山水を表し、美の極致とも言われている。一方、あるがままの自然を尊び、人工的なものを排除した世界に美を見出す人もいる。同様に、身の周りの緑の管理方法ではさまざまな意見が交錯する。人間の都合の良いように管理する京都西芳寺(苔寺)の苔やゴルフ場の芝草のように、単一植物種で覆った景観を美しいと感じる人もいるし、あるがままの自然を美しいと感じる人もいる。

  • 写真1:芝草

    写真1:芝草

  • 写真2:苔

    写真2:苔

写真3:ススキ

写真3:ススキ

一面のススキの原野が実は年一回の火入れ作業などで維持されている場合もある。人間が活動(action)すると、自然のバランスが変化してreaction(環境形成作用)が起こる。Reactionにより、植物群落の種構成が変化し、このため特定の種が絶滅することもある。また、貴重種があるので、「特定の植生を残そう!」としても、人間が手を加えないで放置しておくと「遷移」がおこり、自然は特定の草種が滅亡する方向へ変化するのである。「遷移」とは、裸地化したところにいつとはなく一年生の草本植物が繁茂し、しだいに多年生草本から木本種へ種の構成が変化し、極相にまで至ることであり、一定の場所に生存している草種が年々めまぐるしく変化しているのである。したがって、人間が身近に生活している場所で、いつまでも同一の景観を維持するには膨大な人間の努力が必要となる。数十年前に優占化していた草種の維持をはかるのも、現存の植生の維持を図るのも管理手法は異なるが、同様に膨大なエネルギーが必要であり、有限なエネルギーをどのような植生や景観を維持するために消費していくかについて、国民的合意形成が必要である。自分好みの「理想的植生」を維持するために、簡便な植生管理方法を開発することもこれからの人類の重要なテーマである。

 

茨城大学農学部附属農場
佐合隆一

2006年6月13日掲載

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