病害虫・雑草防除ガイド - 雑草の話
ミズキカシグサ、デンジソウなどは絶滅危惧種
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雑草と呼ばないで

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写真(ミズアオイ)

写真 ミズアオイ

「雑草」という言葉は良く知られているが、「どの植物が雑草でどの植物が雑草ではない」と言う定義は、実はあいまいである。なぜなら雑草は「雑多な草」という意味でも使用されているが、農学分野では「所を得ない植物または望まれないところに生える植物」(Blatchley 1912)と定義されているように、人間の都合で決めている分類である。人類が定住生活をして、農耕を始めて以来、身の回りにあると不都合であり、排除の対象としてきた植物が雑草であり、人類に排除されにくい形質をもって今日まで生きつづけてきた植物が雑草とも言える。したがって、人間の生活環境の違いによって雑草と呼ばれる植物も大きく変ることになる。例えば、30年前に雑草と定義されたミズキカシグサ、デンジソウ、アカウキクサ、スブタ、ミズアオイ、オオアブノメ、オオアカウキクサなどの植物(笠原1972)は、現在絶滅危惧種として環境省では保護すべき植物として取り上げている。また、かつて薬用植物として大事に栽培していた植物や食用として身の周りに栽培されていた植物が、生活環境が大きく変わった今日、人類に見放され細々と憎まれながら生存している雑草もたくさんある。とくに農耕地で「栽培作物などに害を与えるため、望まれない」植物は比較的定義しやすいが、農耕地から人里域周辺に生息する植物は「雑草」であるか、そうでないかは簡単に決められない。植物は景観形成にとっても重要な役割を果たしており、大気中の炭酸ガスを吸収して、酸素を供給してくれる植物を一律に「雑草」とするのではなく、小型で美観上も優れ、人類に直接危害を及ぼさない植物は排除の対象としないで生かすために、ほんとうの名前で呼んでほしい。

 

茨城大学農学部附属農場
佐合隆一

2006年5月15日掲載

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