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1.明日を拓く農業経営のノウハウ 第1話
 節税のポイントをしっかり抑えて明日の農業経営をより有利に。
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もうすぐ確定申告のシーズンがやってきます。
今回は、知らないと損をする節税のポイントについて、農業における税務・会計の エキスパートである北海道札幌市「森下浩税理士事務所」の森下浩所長に お話を伺いました。

――確定申告における節税のコツを教えてください。

> まず最初に挙げられるのは「経費」についてです。「経費」として計上できる のに、申告せずに見落としている場合が多い項目がいくつかあります。 例えば、農家と消費者の交流会への参加費・交通費など、農業に関連する 会合・会食・セミナーでの出費は「交際費」「研修費」「旅費交通費」として 経費にできます。
それから、自宅を仕事で使っている場合の事務所費用も見落としがち。 出荷作業やパソコンでの情報収集など、たとえ一部のスペースでも自宅で農業に 関わる仕事をしていれば、そのスペース割合に応じて「減価償却費」 「固定資産税」(持家)や「支払家賃」(借家)などを経費にできるほか、 電気・水道代等は「水道光熱費」として、電話代は「通信費」として、 それぞれ農業関連で使用した分を経費扱いにできます。

このように「生活費」と認識しているものを、農業に関連付けることができないか、 今一度見直してみることをお勧めします。

農地等を取得する予定がある場合は、「農業経営基盤強化準備金制度」の活用が 欠かせません。農業経営改善計画の認定や農林水産大臣の証明などの手続きに 時間を要するので、早めの準備が肝要です。また、収入から経費等を引いた後、 さらにそこから差し引ける「控除」も節税面では見逃せないポイントです。

――見落としがちな「控除」には、どのような項目がありますか。

> 農業に必要な機械などを新たに購入した場合、所得税額から一定の金額が控除 できる「税額控除」が受けられます。購入対象は、1台160万円以上のトラクターや 籾摺機などの農業機械、1台120万円以上のパソコンやコピー・FAXといった事務機器 などで、原則として事業供用年に取得価額の7%相当額を所得税額から控除できます。 これは、購入した場合だけでなく、リース取引でも適用されるので、税理士等に ぜひ相談してみてください。

また、生計を一緒にしている親族の医療費を支払った場合の「医療費控除」、 同じく社会保険料を支払った場合の「社会保険料控除」といった盲点もあります。 例えば、別居している両親が年金だけでは生活費が足りずに、その子供が仕送りを している場合は、生計を一緒にしていることになるので、子供が両親の医療費や 社会保険料を支払った場合、それぞれ控除の対象となります。 この「所得控除」ではほかに、小規模企業の退職金制度である小規模企業共済を 活用する方法があります。
1年分の掛金を前納して最大84万円の「小規模企業共済等掛金控除」を受けること ができます。

また、白色申告をされている農家の方もいらっしゃいますが、青色申告のほうが 有利な面が多いので、この機会に見直してみるのもいいかもしれません。

――「青色申告」にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

> 「青色申告特別控除」という特典があり、簡易簿記による記帳の場合は 10万円控除が、複式簿記による記帳とそれに基づく貸借対照表を確定申告書に 添付した場合は、65万円控除が受けられます。
こうした控除面もさることながら、白色申告と比較した場合の大きなメリットは、 個人は3年間、法人は9年間、赤字の繰り越しができるという点です。
例えば、ある農家さんが去年500万円の赤字を出して、今年は300万円の黒字だった とすると、白色申告の場合、去年は赤字で所得税がかからなくても、 今年は黒字なので所得税がかかってしまいます。
しかし青色申告の場合、去年の赤字500万円を繰り越せるので、赤字500万円から 黒字300万円を差し引いても、今年は200万円の赤字が残ることになり、 去年も今年も所得税がかからないということになるのです。

青色申告で確定申告するためには、管轄する税務署へ「青色申告承認申請書」を、 個人はその年の3月15日まで(または開業後2ヵ月以内)に、 法人はその事業年度開始の前日まで(または設立後3ヵ月以内)に提出しなければ なりません。創業年は赤字になるケースが多く見られますが、この青色申告承認の 申請をしていなかったため、赤字が翌年に繰り越せなかったという実例も過去に ありました。就農したばかりの方や法人化して間もない方は、早めにチェックし てみてください。

次回は、法人化のメリット・デメリット、法人化する際のアドバイスなどついて、 引き続き森下浩所長にお話を伺います。お楽しみに。