━【1】食糧自給率向上への取り組み 第7話◆◇◆━━━━━━━━━━
生産者が農業を続けられる価格でおコメを販売し、地域農業を再生。

今回は、宮城県大崎市鳴子地区の地域活性化への取り組み『鳴子の米プロ ジェクト』にスポットを当てます。地域の住民を中心としてスタートした おコメづくりプロジェクトは、廃れつつあった観光地域にどのような変化 をもたらしたのでしょうか。宮城県大崎市鳴子総合支所 観光建設課の安 部祐輝さんにお話を伺いました。

――『鳴子の米プロジェクト』は、どのような経緯ではじまったのでしょ
うか。

>鳴子地区では近年、400万人を数えていた観光客が半減したり、米価の低 下により離農が進むなど、地域の衰退が問題化しつつありました。そこで 、「自分たちで動かないとダメになる」と危機感を抱いた住民が立ち上が り、4年前にスタートしたのがこのプロジェクトです。最初にはじめたの は、ブランド米にこだわらない山間地向けの品種探し。試行錯誤の結果、 東北181号という品種にたどり着き、鳴子地区でも一番条件が厳しい山の ふもとで試験栽培をはじめました。当初は3人で10aずつの試験栽培でし たが、今では生産農家35戸・10haで作付けされ、「ゆきむすび」という名 前で品種登録されました。

――1俵2万4千円という価格で販売されているそうですが、その価格の背 景について教えてください。

>食べる人を最初に決めて、その分だけお米をつくるというのがプロジェ クトの発想です。「ゆきむすび」は、冷めてもおいしいお米であること、 2週間天日干しにしていること、農村や観光地域を守るための活動である ことなどをPRし、賛同していただいた地域住民や他県の方々に予約販売し ています。生産農家さんには、翌年も生産が続けられる価格1俵1万8千円 を保証し、それに事務経費などの6千円をプラスした2万4千円で消費者に 販売。この6千円の部分は、農業に興味のある若手への賃金などに充てて いますが、「ぜひ作業を手伝わせてほしい」という若い人たちがかなり増 えてきました。地域を支えていく、こうした若者たちの熱意を大切にして いきたいと思います。

――「ゆきむすび」の美味しさは、単なる食味値※だけでは測れないそう ですね。

>私たちが大事にしたのは、つくり手と食べ手の交流です。お米をつくる 人と、食べる人が交流することで、お米の美味しさは全然違ってくるんで すね。例えば、「ゆきむすび」に最適な水加減について勉強会を開いたり 、他の土地に植えると独特の辛味が失われてしまう鬼首菜(おにこうべな )など地元の伝統野菜を活かしたおむすびを試作したり、生産農家と地元 主婦が集まって勉強会を開いてきました。また、食べ方ひとつとっても、 美味しさって変わってくるんですよ。例えば、地元の桶職人や漆職人の方 におむすび用の器を創作してもらったり、ゆきむすびのくず米を米粉にし てケーキに利用するなど、食味値だけでは測れない、お米を美味しく食べ るための工夫を重ねています。今後は、鳴子はもちろん、他地域の機運も 盛り上げて行けるような産地になりたいですね。

※食味値:タンパク質、アミロースなどお米に含まれる4つの成分を分析 し、100点満点で評価するおいしさの基準。

取材前日に、鳴子温泉街のホテルで「ゆきむすび」を試食。炊き方を試行 錯誤した結果、土鍋炊きに行き着いたのだとか。粘りがあって、ほんのり とした甘みに、地域の皆さんの愛情を感じるような気がしました。次回も 、食料自給率向上への取り組みをご紹介します。お楽しみに。