トップ病害ポケットブック炭疽病 その2

●病害ポケットブックオンライン版

▼ 問題解決のソリューションシートはこちら
・ 病害ソリューションシート
炭疽病に関与するピシウム菌について

● 病原菌

Colletotrichum graminicola,Pythium torulosum

● 芝種

ベントグラス

● 病徴

2002〜2003年にかけて炭疽病に効果のある薬剤を散布しても治療・回復を見せない炭疽病類似症状が発生しました。葉は赤〜退緑色に変わり、芽数が落ちて不定形なパッチを形成することが特徴です。この病害に対して炭疽病菌とピシウム病菌に効果のある薬剤を散布することで発病の停止・回復が観察されています。

写真(病徴)
病徴
写真(病徴)
病徴

● 病原菌の生態

本症状の観察されたベントグラスの地際部からは炭疽病菌の分生子層・分生子・付着器が、根からはピシウム菌の卵胞子がそれぞれ多数観察されました。
炭疽病菌は寄生と腐生をする能力に優れた菌です。これは長期間サッチや土壌で生息することが可能で、植物へ感染するチャンスが多いことを意味します。冬期間はサッチや植物体で過ごし、暖かくなると分生子が風や水によって広がり新たに感染します。発病させる力は弱く、ストレスで弱った植物のみを侵します。
またピシウム属菌は200を超える種から成っており、ベントグラスに対して病原性の高いものから低いものまで様々存在します。病原性の高いものは赤焼病菌(Pythium aphanidermatum )やピシウム病菌(Pythium graminicola )などです。今回、炭疽病との関連性が指摘された菌はPythium torulosum という菌です。この菌はベントグラスに対して日本は勿論、世界的に生息が多く確認されている菌で、病原性は無〜弱とされています。普段は枯死植物に感染したりする腐生菌としての性格が強い菌ですが、この菌が多量に根に感染していることにより、ベントグラスがストレスを受けて炭疽病にかかりやすく、また回復しにくい状況になっていることが考えられました。

写真(病原菌の生態)

● 発生環境

7月から9月の夏場は中〜高温域を好むピシウム菌にとって生育に適した時期です。床土が過湿気味で、高窒素管理であった時代には猛威を振るっていた赤焼病・ピシウム病ですが、近年過湿になりにくいサンドグリーンで窒素量を少なくした管理が主流となってきたために、症状が明確な被害が少なくなってきました。そのためピシウム菌に効果のある薬剤を散布しなくなったゴルフ場が増えてきています。一見すると赤焼病・ピシウム病は克服された病気のようにみえますが、明確なピシウム病徴が現れにくいだけで、ピシウム菌自体がいなくなったわけではありません。炭疽病の発生は、少施肥な上に低刈りや踏圧などの高ストレス下で起こりやすくなります。近年防除されにくくなったピシウム菌がベントグラスの根に感染することがストレス要因の一つとなっており、炭疽病が発生しやすく治療・回復も遅れる傾向があります。

● 管理のコツ

以下に挙げる炭疽病の発生につながるストレス要因を出来る限り緩和させます。
  • 芝草害虫によるダメージ
  • 他病原菌によるダメージ
  • 過度の施肥
  • 低窒素
  • 土壌の嫌気的な状態
  • 土壌の過湿・乾燥
  • 土壌硬度が高すぎること
  • 土壌温度が高すぎること
  • 冷害
ピシウム菌と炭疽病菌の密度を定期的に下げてやることを心がけます。

● 発生時期

図(発生時期)

発生時期の表記について
:多発生 :発生

● シンジェンタからのお奨め防除法

  • 炭疽病はいったん発生すると回復が難しい病気です。殺菌剤は炭疽病菌の勢いを止めるだけで、芝の治療・回復は見込めません。病勢が治まった時に適切な肥培管理で治療・回復を図ります。
  • 炭疽病で困っているコースは窒素量が低い場合が多く、そのコースに加わるストレスを吟味して窒素が少なくならないようにすることが必要になります。
  • サンドグリーン、少肥傾向のグリーン条件でピシウム病にも炭疽病にも見える場合は、ピシウムと炭疽の両方に効果のある薬剤で早めの対処をお薦めします。
  • 炭疽病と判断して薬剤を散布しても病徴の進行が止まらない時は、今回紹介したピシウム菌との関連性が疑われます。ピシウム菌に効果のある薬剤処理をお薦めします。

トップへ戻る このページのトップへ戻る

Copyright Syngenta. All rights reserved.