トップコースとともにNO.31 ご存知ですか?ピシウム属菌のヒ・ミ・ツ

●コースとともに

ご存知ですか?ピシウム菌のヒ・ミ・ツ

発病する前にタイミングを見極めて防除する


岐阜大学 流域圏科学研究センター センター長
教授・農学博士 景山幸二氏

芝管理において重大な病害の一つと言えるピシウム病。
ひとくちにピシウム病といっても、その原因菌には非常に多くの種類が存在し、それらは同じ環境で発生するとは限りません。したがって、ピシウム病も夏だけの病気とはいえず、年間を通して発生するリスクがあります。
効果的な病害管理のためには、病原菌の性質についての理解を深めておくことも必要です。
そこで、ピシウム属菌研究の第一人者である景山幸二・岐阜大学教授にお話をうかがいました。


ピシウム属菌は種類が多く、どこにでも存在するそうですね

ピシウム属菌は140〜150種あり、病原菌として登録されているものは30〜40種です。
最近の検体を見ると新種と思われるものもあります。
ピシウム属菌はどこにでも恒常的に存在しています。
ゴルフ場の芝に限っても、別表のように多様なピシウム病が見られます。

ピシウム属菌


芝に感染したときのピシウム属菌は、どのように病原性を発揮するのですか?

植物病理学では、病気は主因、誘因、素因によって起こるとされます。
ピシウム病の場合、主因はピシウム属菌、誘因は水や温度条件、素因は芝の状態ということになるでしょう。
ピシウム属菌は水分を好み、遊走子という器官を作り水の中で旺盛に活動します。
また、多くのピシウム属菌は生育の最適温度が25℃くらいとされ、環境条件に応じて様々な形態をとり、発病に適した条件が整うのを待っています。
つまり、ピシウム病は水分量の多い環境で芝がストレスなどで弱った状態になると発病します。
夏場にピシウム病が多発するのは、芝が高温によるストレスで弱りがちな時期のためと言えます。

ピシウム属菌

ピシウム病は高温時に発生するものなのでしょうか?

低温時でも病害が発生するリスクはあります。
ピシウムの場合、遊走子を形成する適温は生育の最適温度よりも低い20℃位であるため、比較的温度の低い時期であっても警戒が必要であると言えます。

芝はストレスの大きな環境に置かれていますが…

ですから発病のリスクは高いと思います。
ゴルフ場の場合は一年を通して芝が存在しており、菌が住みやすい環境にあります。
しかも芝の場合、刈り込みをするため、いつでも芝に傷口をつくっていることになります。
菌はここから芝に侵入できるのです。いわば、病害発生リスクが常に管理作業について回る訳です。

それでは、いつ防除すればいいでしょうか?

やはり予防散布が重要となります。
感染が起きていても、条件が合わないために発病しないケースはありますが、実際には病害のリスクがないのではなく、病原菌が病気を起こさない状態のままで増殖しているのです。
条件が整い発病が確認された頃には菌の密度が高まってしまっているため、それだけ防除が難しくなります。

顕微鏡観察で卵胞子が見られるときは、かなり病気が進行しているということですか?

ピシウム属菌は盛んに活動しているときは菌糸や遊走子を形成することが多く、卵胞子は主に栄養条件が低下し生殖を行う時期に形成されます。
つまり卵胞子の増加は芝の栄養が食べつくされ、手遅れの状態になってしまったことを意味します。
卵胞子は耐久性が高く、この状況では薬剤の効果も十分に発揮されません。
症状が進行してしまったときは、芝の中で生き延びた卵胞子を次の発生時期に持ち越さないことが重要となります。
つまり感染に適した条件が再び整う時期を見極め、ピシウム属菌が卵胞子から発芽したときに薬剤を散布することで、病害の拡大に先手を打つことができます。
こうした対処は、毎年同じ箇所にピシウム病が発生するといったコースでは特に重要です。
病気が発生してからでは後手に回ることになります。

予防が大切ということですね

農耕地で『圃場衛生』という言葉がありますが、たとえば、サッチを蓄積してしまうことも菌の温床化を招き、ピシウム属菌の感染リスクを高めます。
タイムリーな薬剤散布は勿論重要ですが、病害を効果的に予防するためには芝の環境を整えてあげることも重要です。
水分が停滞しすぎないように注意したり、サンドグリーンの砂の深度を適切に保つことや芝の品種を変えることなども有効です。
ゴルフ場の『圃場衛生』に留意し、常に総合的な管理を心がけることが大切と言えるでしょう。

資料出典:「芝草のピシウム病を引き起こす病原菌の同定」
岐阜大学流域圏科学研究センター 景山幸二氏

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