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害虫と病気の話

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第56話 イネの穂いもち

写真1 穂いもち多発生で変色した圃場
写真1
穂いもち多発生で変色した圃場

動物とは違って植物の場合には一旦病気に侵されてしまうと、その罹病した部位が治癒することはありません。次々と新葉が開いてくる葉などでは新しい葉での感染を防ぐことで、また、樹木では罹病した部分を切除することによって、植物体全体の健全性を保つことができますが、果実や穂のような部位では病気の感染が商品価値の低下や収量減など直接的な被害に結びつきます。イネの穂いもちはそのような病害の一つであり、過去に何度も大きな被害を経験しています(写真1)、長期間降雨が続いた今年は例年以上に穂いもちの防除に万全を尽くすことが必要になっています。

 

写真2 止葉の葉いもち病斑と穂くびいもち
写真2
止葉の葉いもち病斑と
穂くびいもち

穂いもちの第一次伝染源は葉いもちです。葉いもち病斑の上で作られた胞子が空気中に飛散し、穂に付着して感染を引き起こします。穂は出穂〜一週間後がもっとも感染しやすく、また、上位葉に病斑が多いほど、出穂期前後に降雨が続くほど穂いもち多発生の危険性が高まります(写真2)。穂ばらみ期〜穂揃期の降雨日数が一週間増すと穂いもち発病株率が3倍にまで高まると推定する研究報告もあります。最近では箱施用剤などの長期残効性の葉いもち予防粒剤の普及が進み、葉いもちの発生は比較的少なくなりました。岩手県の調査では、葉いもち予防粒剤の普及率が高く葉いもちが見られなかった地域では、発生を助長する低温・多雨・寡照の気象条件下でも穂いもちが少なかったことが報告されています。しかし、予防粒剤を施用した圃場でも田植え後70日を過ぎる頃になると薬剤の効果が切れてきて、近所の葉いもちが発生している圃場から飛散した胞子によって葉いもちの感染が始まります。また、土壌窒素が多いダイズ後作の圃場では被害が甚大となることも報告されています。圃場の葉いもち発生状況の観察を続け、病斑が見られたら直ちに薬剤散布を行うことで、胞子形成や新たな感染を防ぐことが穂いもち防除のためにも必要です。

 

写真3 籾いもちの多発生
写真3
籾いもちの多発生

薬剤による穂いもち防除は適期に実施することが大切です。防除剤には粒剤と散布剤とがあり、粒剤では出穂20日から10〜5日前、散布剤では穂ばらみ期と穂揃期の散布が適期となっています。感染から発病までの潜伏期間は穂くび部では12日程度ですが、籾いもちでは6〜7日で病徴が現れます。したがって、籾いもちの発生状況を観察することで穂いもち多発の可能性をある程度知ることができます。また、籾いもちから健全な籾への二次伝染や枯れ下がりによる被害拡大も起こるので、籾の一部や全体が白変している籾が多く見られた場合には追加防除を行う必要があります(写真3)。穂いもち防除の基本は予防です。田圃や天候をみながら早めの対応をすることが肝要です。


吉野嶺

2006年8月4日掲載

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